裁判上の自白の成立要件(口頭弁論等での陳述・相手方の主張と一致・不利益・主要事実)さいばんじょうのじはくのせいりつようけん
裁判上の自白とは、口頭弁論又は弁論準備手続において、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述のことです。不利益とは相手方が証明責任を負う事実を認めることをいうとするのが判例の一般論で、自白の対象は原則として主要事実です。
貸金返還の訴訟で被告が「お金を借りたことは認めます」と言えば、原告は貸付けを証明しなくてよくなり、裁判所もその事実を前提に判断します。争いのない事実まで証拠で確かめるのは無駄ですし、当事者が自分に不利なことを認めた以上、その責任を負わせてよいからです。ただし、どんな発言でも自白になるわけではありません。弁論の場で、相手方の主張と一致する、自分に不利益な主要事実を認めたときに限って、裁判上の自白が成立します。

裁判上の自白は、口頭弁論又は弁論準備手続で、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述です
裁判所において当事者が自白した事実は、証明することを要しません(179条)。ここでいう自白(裁判上の自白)が成立するには、①口頭弁論又は弁論準備手続における弁論としての陳述であること、②相手方の主張する事実と一致すること、③自己に不利益な事実であること、④原則として主要事実であること、が必要です。②について、自分から先に不利益な事実を述べた場合は、相手方がそれを援用して主張が一致したときに自白が成立します。①のとおり弁論準備手続の期日でも自白は成立し、「主要事実に関する陳述がされた場合であっても、弁論準備手続の期日においては、裁判上の自白は、成立しません」という肢(R7 午後 問2 ウ。対話形式の問の解答)は誤りです。援用されない不利益陳述の扱いは、主張共通の原則の語で扱います。④の主要事実に限るかという点は、間接事実・補助事実の自白の語で扱います。
- 場口頭弁論又は弁論準備手続における弁論としての陳述です。当事者尋問での供述や訴訟外の発言は当たりません
- 一致相手方の主張する事実と一致することが必要です。先に述べた不利益陳述は相手方の援用で一致します
- 不利益相手方が証明責任を負う事実を認めることです(判例の一般論)
- 対象主要事実です。間接事実・補助事実・法的評価の自白は裁判所を拘束しません
当事者尋問の中で不利な事実を認める供述をしても、裁判上の自白にはなりません
自白は、当事者が訴訟資料を提出する弁論としての陳述です。当事者尋問での供述は、当事者を証拠方法として調べた結果である証拠資料で、弁論ではありません。そのため、当事者が尋問の中で相手方の主張を認める供述をしても、裁判所はそれを証拠の一つとして評価するにとどまり、自白は成立しません。本人尋問について、「当事者の供述が相手方の主張する自己に不利益な事実を認めるものである場合には、裁判上の自白が成立します」という肢(R7 午後 問2 エ。対話形式の問の解答)は誤りです。

不利益とは相手方が証明責任を負う事実を認めることなので、抗弁事実を原告が認めれば原告の自白が成立します
「自己に不利益な」の意味について、判例の一般論は、相手方が証明責任を負う事実を認めることだとする証明責任説に立つと説明されています(最判昭和54年7月31日など)。これに対し、その事実に基づいて判決されると自分が全部又は一部敗訴することになる場合をいうとする敗訴可能性説もあります。証明責任説によれば、自白は請求原因事実についての被告の自白に限られず、被告が証明責任を負う抗弁事実を原告が認めれば原告の自白が成立します。所有権に基づく建物明渡請求で、被告の抗弁である賃貸借契約の締結を原告が認めれば、原告の自白が成立し、裁判所はその事実を判決の基礎としなければなりません。10年の取得時効の請求原因に対し、被告が主張した原告の占有開始時の悪意(民法186条1項で善意が推定されるので被告が証明責任を負う抗弁事実)を原告が認めた場合も、原告の自白が成立します。反訴で時効取得を主張する被告が、原告の主張する賃貸借に基づく占有開始を認めた場合も、他主占有であることは原告が証明責任を負う事実なので、反訴の関係で被告の自白が成立します。反対に、自分が証明責任を負う事実を自分で主張しても自白にはならず、相手方がそれを援用しても主張した者は拘束されません。被告が占有権原として使用貸借を主張し、原告がそれを援用して使用貸借の終了を主張した場合でも、被告は使用貸借の主張を撤回して、賃貸借に基づく占有だと主張できます。
相手方の主張と一致していても、契約の要件事実の一部だけを認めたにすぎないときや、人事訴訟では、自白は成立しません
自白は、相手方が主張する主要事実と同じ事実を認めるものでなければなりません。消費貸借契約の締結は、金銭の返還の合意と金銭の交付からなるので(民法587条)、被告が金銭の受領を認めただけでは返還の合意を認めたことにならず、消費貸借契約締結の自白は成立しません。また、人事訴訟では、身分関係を当事者の意思で決めることは公益に反するので、裁判上の自白の規定が適用されません(人事訴訟法19条1項)。共同訴訟では、「通常共同訴訟において、共同被告の一人が原告の主張する請求原因事実を認める旨の陳述をしたとしても、他の共同被告に対する請求との関係では、当該事実につき自白の効果は生じない」という肢(R5 午後 問2 ア)は正しく、必要的共同訴訟では一人が認め他が否認すれば認めた者との関係でも自白は成立しないので、「必要的共同訴訟において、請求原因事実について、共同被告の一人がこれを認める旨の陳述をし、他の共同被告がこれを否認しているときは、当該請求原因事実についての自白は、これを認める旨の陳述をした共同被告との関係においても、成立しない」という肢(R8 午後 問1 ウ)も正しいです。補助参加人がいる場合などは、後半の共同訴訟・補助参加・独立当事者参加の語で扱います。
民事訴訟法 第179条(証明することを要しない事実)
裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。
民法186条1項占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
試験ではこう問われる
- 裁判上の自白は、口頭弁論又は弁論準備手続で相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述で、弁論準備手続の期日でも成立する(R7 午後 問2 ウ ×)
- 当事者尋問(本人尋問)の中で不利な事実を認めても、裁判上の自白は成立しない(R7 午後 問2 エ ×)
- 被告の抗弁事実(賃貸借の締結・占有開始時の悪意)を原告が認めれば、原告の裁判上の自白が成立する
- 自ら進んでした不利益陳述は、相手方が援用すれば自白が成立し、援用しなければ成立しない。自分が証明責任を負う事実を主張しても、相手方の援用で自白にはならない
- 金銭の受領を認めただけでは消費貸借契約締結の自白は成立しない。人事訴訟では裁判上の自白は成立しない(人事訴訟法19条1項)
- 通常共同訴訟の共同被告の一人が請求原因事実を認めても、他の共同被告に対する請求との関係では自白の効果は生じない(R5 午後 問2 ア ○)
- 必要的共同訴訟で共同被告の一人が認め他が否認すれば、認めた者との関係でも自白は成立しない(R8 午後 問1 ウ ○)

