自白の効力と撤回の要件(審判排除効・不可撤回効)じはくのこうりょくとてっかいのようけん
自白の効力とは、主要事実について裁判上の自白が成立したときに、その事実が証明不要となり(不要証効)、裁判所がそのまま判決の基礎にしなければならず(審判排除効)、自白した当事者も撤回できなくなる(不可撤回効)ことです。撤回は、相手方の同意がある場合、刑事上罰すべき他人の行為による場合、真実に反しかつ錯誤による場合に限って認められます。
被告が貸付けの事実を認めたので、原告は借用書を探すのをやめ、証人も呼ばなかったとします。その後で被告が「やはり借りていない」と言い出せば、原告は立証の準備を失ったまま不意打ちを受けます。そこで裁判上の自白が成立すると、裁判所はその事実を前提に判断しなければならず、自白した当事者も原則として撤回できなくなります。ただし、相手方が同意した場合など、相手方の信頼を裏切らない場面や自白者を責められない場面では撤回が認められます。

主要事実の自白は、証明を不要にし、裁判所を拘束し、自白した当事者も原則として撤回できなくします
主要事実について裁判上の自白が成立すると、三つの効果が生じます。第一に、その事実は証明することを要しません(179条・不要証効)。第二に、弁論主義の第2テーゼにより、裁判所はその事実をそのまま判決の基礎にしなければならず、証拠調べの結果から反対の事実を認定することはできません(審判排除効)。第三に、自白した当事者は撤回できなくなります(不可撤回効)。不可撤回効の根拠は、立証を要しないと考えた相手方の信頼を保護する禁反言に求めるのが一般的です。これらの効果は主要事実の自白についてのもので、「間接事実についての自白は、裁判所を拘束しません」という肢(R7 午後 問2 ア。対話形式の問の解答)は正しいです。間接事実・補助事実の自白の扱いは別の語で扱います。
- 不要証効自白された事実は証明することを要しません(179条)
- 審判排除効(裁判所拘束力)裁判所は自白された主要事実をそのまま判決の基礎にしなければなりません
- 不可撤回効(当事者拘束力)自白した当事者は、例外の場合を除き撤回できません
自白は、相手方の同意がある場合、刑事上罰すべき他人の行為による場合、真実に反しかつ錯誤による場合には撤回できます
自白を撤回できるのは、一般に三つの場合です。①相手方が撤回に同意した場合は、保護すべき相手方の信頼がないので撤回できます。「被告が自白した主要事実について,被告において当該事実が真実に合致しないことを証明することができない場合であっても,原告の同意があるときは,被告はその自白を撤回することができる」という肢(R2 午後 問2 ウ)は正しいです。②刑事上罰すべき他人の行為によって自白した場合は、338条1項5号がそれを再審事由としているので、確定前の手続でも自白の効力は認められません(最判昭和33年3月7日)。再審の訴えと違い、有罪判決の確定など同条2項の要件は要らないと解されています(最判昭和36年10月5日)。ここでいう他人は相手方に限らず、第三者でもかまいません。原告が相手方の詐欺によって占有権原の抗弁の主要事実を認めた場合も、否認に陳述を変更できます。③自白した事実が真実に反し、かつ自白が錯誤によるものであることを証明した場合も撤回できます(大判大正4年9月29日)。判例は、真実に反することが証明されれば錯誤は事実上推定されるとしています(最判昭和25年7月11日)。「当事者は、相手方の同意がない場合であっても、自白した事実が真実に適合しないこと及び自白が錯誤によることを証明したときは、自白を撤回することができます」という肢(R7 午後 問2 オ。対話形式の問の解答)は正しいです。これに対し、真実に反すると知りながら主要事実を認めた場合は、錯誤がないので撤回できません。

撤回が許される場合でも、時機に後れた撤回は却下されることがあります
自白の撤回は、いったん認めた事実を改めて争うもので、実質は否認という攻撃防御方法の提出です。そのため、撤回の要件を満たしていても、故意又は重大な過失により時機に後れて撤回し、訴訟の完結を遅延させることになるときは、157条1項により却下されることがあります。裁判例にもその旨を述べたもの(東京高判平成元年3月27日)があります。時機に後れた攻撃防御方法の却下の要件は、その語で扱います。
相手方が援用する前の不利益陳述は、まだ自白ではないので撤回できます
自分から先に不利益な事実を述べても、相手方がこれを援用して主張が一致するまでは裁判上の自白は成立していません。自白が成立していなければ不可撤回効もないので、援用される前であれば撤回できます。援用された後は先行自白として自白が成立し、上の三つの場合に当たらなければ撤回できません。援用されない不利益陳述が判決の基礎になるかは、主張共通の原則の語で扱います。
民事訴訟法 第179条(証明することを要しない事実)
裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。
民事訴訟法 第338条第1項第5号刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
試験ではこう問われる
- 主要事実の自白は裁判所を拘束し、証拠調べの結果から反対の事実を認定して請求を棄却することはできない。間接事実の自白は裁判所を拘束しない(R7 午後 問2 ア ○)
- 相手方の同意があれば、反真実を証明できなくても自白を撤回できる(R2 午後 問2 ウ ○)
- 刑事上罰すべき他人の行為(相手方の詐欺を含み、第三者の行為でもよい)による自白は撤回でき、有罪判決の確定は要らない(最判昭和33年3月7日・最判昭和36年10月5日)
- 真実に反しかつ錯誤による自白は、相手方の同意がなくても撤回できる(大判大正4年9月29日、R7 午後 問2 オ ○)。反真実の証明で錯誤は事実上推定される(最判昭和25年7月11日)
- 自白の撤回も時機に後れたものとして却下されることがある(157条1項)
- 相手方が援用する前の不利益陳述は撤回できる

