当事者尋問とうじしゃじんもん
当事者尋問とは、当事者本人を証拠方法として尋問し、その見聞きした事実についての陳述を証拠資料とする証拠調べです。申立てのほか職権でもでき、宣誓は裁判所の裁量で、不出頭などには真実擬制で対処する点が証人尋問と異なります。
事故の様子を一番よく知っているのが当事者本人だということはよくあります。そこで民事訴訟では、当事者本人も証拠として尋問できるようにしています。ただし本人は勝ち負けに直接の利害を持つので、第三者である証人と全く同じには扱いません。宣誓させるかどうかは裁判所が決め、出頭しなくても無理に連れて来ることはせず、その代わりに相手方の言い分を真実と認めることができるという形で協力を促します。

裁判所は、申立てにより又は職権で当事者本人を尋問でき、相手方本人の尋問を申し立てることもできます
裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができます(207条1項前段)。証人尋問は職権ではできないので、この点が大きな違いです。申立ては自分の本人尋問に限られず、相手方本人の尋問を申し立てることもできます。本人の陳述は主張ではなく証拠資料なので、訴訟能力がなくても尋問できます。「当事者が訴訟能力を欠く場合には、その当事者本人を尋問することはできない」という肢(R7 午後 問1 エ)は誤りです。同じ理由で、本人尋問の中で相手方の主張する不利益な事実を認める供述をしても、弁論としての陳述ではないので裁判上の自白にはなりません。「当事者の供述が相手方の主張する自己に不利益な事実を認めるものである場合には、裁判上の自白が成立します」という肢(R7 午後 問2 エ)は誤りです。自白の成立要件は前半の自白の語で扱います。
証人と当事者本人の両方を尋問するときは証人が先で、適当と認めるときは当事者の意見を聴いて本人を先にできます
証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をします(207条2項本文)。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができます(同項ただし書)。かつては当事者尋問は他の証拠で心証が得られないときに限って補充的に行うものとされていましたが、平成8年改正で、順序の原則を残したうえで本人を先に尋問できるように緩められました。原則は証人が先で、本人が先になるのは例外です。
当事者に宣誓をさせるかどうかは裁判所の裁量で、不出頭や宣誓・陳述の拒絶には真実擬制、宣誓後の虚偽陳述には過料が科されます
当事者本人を尋問するときは、その当事者に宣誓をさせることができます(207条1項後段)。宣誓が義務である証人と違い、宣誓させるかどうかは裁判所の裁量で、宣誓をさせずに尋問することもできます。当事者が正当な理由なく出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができます(208条)。真実と認めるかどうかは裁判所の裁量なので、「当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく出頭しなかったときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めなければならない」という肢(R6 午後 問3 ウ)は誤りです。自分が敗訴するおそれがあることは、陳述を拒む正当な理由になりません。証人の不出頭に対する過料・罰金・勾引の規定(192条〜194条)は当事者尋問に準用されていないので(210条)、当事者を勾引することはできず、陳述を拒んでも罰金や過料は科されません。「裁判所は、当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく出頭しないときは、その当事者の勾引を命ずることができる」という肢(R4 午後 問4 ウ)は誤りです。他方、宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は決定で10万円以下の過料に処し(209条1項)、この決定には即時抗告ができます(同条2項)。虚偽の陳述への制裁は過料であって、真実擬制ではありません。証拠調べに協力しない者への効果は、横断の一覧の語にまとめてあります。

法定代理人と法人の代表者は当事者尋問の手続で尋問し、訴訟代理人は証人として尋問します
当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用され、当事者本人を尋問することも妨げられません(211条)。法人の代表者も法定代理人に準じて扱われるので(37条)、当事者本人の尋問の手続によります。株式会社を代表する代表取締役も、証人として出頭・宣誓する義務は負いません。これに対し、訴訟代理人は当事者でも法定代理人でもないので、証人として尋問します(190条)。
証人尋問の規定のうち順序・書類に基づく陳述・映像等による尋問は準用されますが、地方裁判所では本人尋問を書面に代えられません
当事者本人の尋問には、受命裁判官等による裁判所外の尋問(195条)、16歳未満の者等に宣誓させない規定(201条2項)、尋問の順序(202条)、書類に基づく陳述の禁止と裁判長の許可(203条)、映像等の送受信による尋問(204条)、受命裁判官等の権限(206条)が準用されます(210条)。そのため、本人も裁判長の許可を受ければ書類に基づいて陳述でき、映像と音声の送受信による方法でも尋問できます。反対に、許可がなければ書類に基づいて陳述できないので、「当事者本人を尋問する場合において、その当事者は、裁判長の許可を受けなくとも、書類に基づいて陳述することができる」という肢(R5 午後 問4 イ)は誤りです。他方、尋問に代わる書面の提出(205条)は準用されていないので、地方裁判所では当事者本人の尋問を書面に代えることはできません。簡易裁判所では、相当と認めるときは当事者本人の尋問に代えて書面を提出させることができます(278条1項)。「簡易裁判所の訴訟手続において、裁判所は、相当と認めるときは、当事者本人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる」という肢(R5 午後 問4 ウ)は正しいです。
- 準用される(210条)195条(裁判所外の尋問)・201条2項(宣誓させない者)・202条(順序)・203条(書類に基づく陳述)・204条(映像等による尋問)・206条(受命裁判官等の権限)
- 準用されない192条〜194条(過料・罰金・勾引)・205条(尋問に代わる書面の提出)・196条と197条(証言拒絶権)
- 当事者尋問だけの規定207条(職権でもできる・宣誓は裁量・証人が先)・208条(真実擬制)・209条(虚偽陳述の過料)・211条(法定代理人)
民事訴訟法 第207条第1項裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。
民事訴訟法 第207条第2項証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする。ただし、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず当事者本人の尋問をすることができる。
民事訴訟法 第208条(不出頭等の効果)
当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。
民事訴訟法 第209条第1項宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
民事訴訟法 第211条(法定代理人の尋問)
この法律中当事者本人の尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人について準用する。ただし、当事者本人を尋問することを妨げない。
試験ではこう問われる
- 当事者本人は勾引できず、陳述を拒んでも罰金・過料はない(210条は194条を準用しない。R4 午後 問4 ウ ×)
- 不出頭・宣誓拒絶・陳述拒絶の効果は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることが「できる」である(208条。R6 午後 問3 ウ ×)
- 訴訟能力を欠く当事者も尋問でき、本人尋問での不利益な供述は裁判上の自白にならない(R7 午後 問1 エ ×、R7 午後 問2 エ ×)
- 当事者尋問の申出も、証明すべき事実を特定してする(180条1項。R5 午後 問4 ア ×)
- 本人も裁判長の許可がなければ書類に基づいて陳述できない(203条・210条。R5 午後 問4 イ ×)
- 簡易裁判所では本人尋問に代えて書面を出させられるが、地方裁判所ではできない(278条1項。R5 午後 問4 ウ ○)
- 裁判所は職権でも当事者本人を尋問でき、宣誓させるかは裁量で、宣誓後の虚偽陳述は10万円以下の過料である(207条・209条)

