差押債権者の取立てと取立訴訟さしおさえさいけんしゃのとりたて
差押債権者の取立てとは、金銭債権を差し押さえた債権者が、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときに、差押債権者の債権及び執行費用の額の範囲で、第三債務者からその債権を取り立てることです(155条1項)。第三債務者が任意に支払わないときは、差押債権者は取立訴訟を提起します(157条)。
差押債権者の取立ては、差し押さえた債権を、差押債権者が自ら第三債務者から回収する方法です。転付命令(159条)のように債権そのものを移すのではなく、差押債権者に取り立てる権限が与えられます。

民事執行法 第155条第1項金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
取立ては、債務者への送達の日から1週間を経過した後にできます
金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができます(155条1項本文)。起算点は、差押えの効力が生じる第三債務者への送達(145条5項)ではなく、債務者への送達です。「債務者の預金債権を差し押さえた債権者は、第三債務者に対して差押命令が送達された日から法定の期間が経過したときは、その預金債権を取り立てることができる」という肢(R7 午後 問7 エ)は誤りです。差し押さえられた債権が給料などである場合は、期間は4週間になります(155条2項)。取り立てることができるのは差押債権者の債権及び執行費用の額までです(同条1項ただし書)。第三債務者から支払を受けたときは、その額の限度で弁済されたものとみなされ(同条3項)、差押債権者は直ちに執行裁判所に届け出なければなりません(同条4項)。
他の債権者が同じ債権を差し押さえても、取立訴訟は提起できます
差押債権者が第三債務者に対し、差し押さえた債権に係る給付を求める訴えを取立訴訟といいます(157条1項)。差押えが競合しても、差押債権者の取立権は失われません。受訴裁判所は、第三債務者の申立てにより、訴状の送達の時までにその債権を差し押さえた他の債権者に対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずることができ(同項)、取立訴訟の判決の効力は、参加を命じられたのに参加しなかった差押債権者にも及びます(同条3項)。差押えの競合などで第三債務者が供託の義務を負うときは、請求を認容する判決の主文で、支払は供託の方法によるべき旨が示されます(同条4項)。「金銭債権を差し押さえた債権者は,他の債権者が当該金銭債権を差し押さえた場合には,第三債務者に対して取立訴訟を提起することができない」という肢(R3 午後 問7 ウ)は誤りです。

民事執行法 第157条第1項差押債権者が第三債務者に対し差し押さえた債権に係る給付を求める訴え(以下「取立訴訟」という。)を提起したときは、受訴裁判所は、第三債務者の申立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差し押さえたものに対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずることができる。
第三債務者は供託することができ、差押えが競合したときは供託しなければなりません
第三債務者は、差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を、債務の履行地の供託所に供託することができます(156条1項)。取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに、差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令などの送達を受けたときは債権の全額に相当する金銭を、配当要求があった旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を供託しなければなりません(同条2項)。供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければなりません(同条4項)。
民事執行法 第156条第2項第三債務者は、次条第一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
配当を受ける債権者は、供託の時や取立訴訟の訴状送達の時までに差し押さえた者などに限られます
配当等を受けるべき債権者は、第三債務者が供託をした時、取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時などまでに、差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者です(165条)。取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された後に差押えをした債権者は、配当等を受けるべき債権者になりません。
民事執行法 第165条第1項配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。
一 第三債務者が第百五十六条第一項から第三項までの規定による供託をした時
二 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時
三 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時
四 動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時
試験ではこう問われる
- 取立ては、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過した後にできる(155条1項。R7 午後 問7 エ ×)
- 他の債権者が同じ債権を差し押さえても、差押債権者は取立訴訟を提起できる(157条1項。R3 午後 問7 ウ ×)
- 給料などを差し押さえたときは、取立てができるのは債務者への送達の日から4週間を経過した後である(155条2項)
- 差押えが競合したときは、第三債務者は債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない(156条2項)
- 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された後に差し押さえた債権者は、配当等を受けるべき債権者にならない(165条2号)
この用語が問われた肢
債務者の預金債権を差し押さえた債権者は、第三債務者に対して差押命令が送達された日から法定の期間が経過したときは、その預金債権を取り立てることができる。
金銭債権を差し押さえた債権者は,他の債権者が当該金銭債権を差し押さえた場合には,第三債務者に対して取立訴訟を提起することができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

