仮処分の執行かりしょぶんのしっこう
仮処分の執行は、民事保全法に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例により(52条1項)、物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令が債務名義とみなされます(同条2項)。
仮処分の執行は、仮処分の内容がさまざまなので、内容ごとに方法が違います。仮処分命令が債務者に物の引渡しや一定の行為を命じているときは、強制執行と同じ方法で実現します。処分の禁止や占有の移転の禁止を命じているときは、登記や執行官の公示でその状態を作ります。

民事保全法 第52条(仮処分の執行)
仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。
物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。
物の給付や作為・不作為を命ずる仮処分の執行では、仮処分命令が債務名義とみなされます
52条2項は、物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなすとしています。「物の給付を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令が債務名義とみなされる」という肢(R6 午後 問6 エ)は正しい記述です。建物の明渡しを命ずる仮処分であれば、執行官が民事執行法の明渡しの強制執行の例により債務者の占有を解きます(52条1項)。作為を命ずる仮処分なら代替執行や間接強制の例によります。仮処分命令が債務名義とみなされても、執行できるのは債権者への送達から2週間以内です(43条2項)。
処分禁止の仮処分は登記で、占有移転禁止の仮処分は執行官の保管と公示で執行します
不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行います(53条1項)。建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分も、処分禁止の登記をする方法で執行します(55条1項)。占有移転禁止の仮処分は、債務者に占有の移転を禁じ、占有を解いて執行官に引き渡させ、執行官に保管と公示をさせる内容のもので(25条の2第1項)、登記で執行するのではありません。執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(66条)。

仮処分解放金が供託されたときは、保全執行裁判所が仮処分の執行を取り消します
仮処分命令で仮処分解放金が定められ、債務者がその額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は仮処分の執行を取り消さなければなりません(57条1項)。この決定は即時に効力を生じます(57条2項・51条2項)。法人の役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分は、登記すべき事項であれば裁判所書記官が登記を嘱託します(56条)。
執行官は公示書をはく離しにくい方法で掲示し、執行官の質問に虚偽の陳述をすると罰則があります
占有移転禁止の仮処分命令の執行では、執行官は、はく離しにくい方法により公示書を掲示する方法その他相当の方法により公示をしなければなりません(民事保全規則44条1項)。仮処分の執行の際の執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、債務者又は不動産等を占有する第三者が、正当な理由なく陳述をせず、又は虚偽の陳述をするなどしたときは、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられます(67条)。登記や登録を対抗要件又は効力発生要件とする不動産以外の権利についても、処分禁止の仮処分は登記又は登録の方法で執行します(54条)。
試験ではこう問われる
- 物の給付を命ずる仮処分の執行では、仮処分命令が債務名義とみなされる(52条2項。R6 午後 問6 エ ○)
- 仮処分の執行は、民事保全法に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による(52条1項)
- 処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行する(53条1項・55条1項)
- 占有移転禁止の仮処分は、登記ではなく執行官の保管と公示で執行する(25条の2第1項。R6 午後 問6 オ ×)
- 執行官の公示書を損壊した者は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられる(66条)
この用語が問われた肢
物の給付を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令が債務名義とみなされる。
不動産の占有移転禁止の仮処分命令の執行は、債務者に対してその不動産の占有の移転を禁止することを命ずるとともに、その旨の登記をする方法により行う。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

