建物収去土地明渡請求権を保全する建物の処分禁止の仮処分たてものしゅうきょとちあけわたしせいきゅうけんをほぜんするたてもののしょぶんきんしのかりしょぶん
建物収去土地明渡請求権を保全する建物の処分禁止の仮処分とは、土地の所有者が建物の収去と敷地の明渡しを求める権利を保全するために、その建物の処分を禁止する仮処分で、処分禁止の登記をする方法で執行し(55条1項)、登記の後に建物を譲り受けた者に対しても本案の債務名義で建物の収去と敷地の明渡しの強制執行ができます(64条)。
建物の処分禁止の仮処分は、土地を使う権原のない者の建物について、建物の取壊しと土地の明渡しを求める土地所有者のための仮処分です。訴訟の途中で建物が第三者に売られると、建物の所有者に対する判決では取壊しができなくなるので、建物の処分を禁じて相手を固定します。

民事保全法 第55条第1項建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。
被保全権利は土地の明渡請求権で、建物について処分禁止の登記をして執行します
55条1項は、建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は処分禁止の登記をする方法により行うとしています。53条の処分禁止の仮処分が建物そのものについての登記請求権を保全するのに対し、55条の仮処分は、土地の明渡請求権を保全するために建物の処分を禁じる点で違います。執行は、仮処分命令を発した裁判所が保全執行裁判所となり、処分禁止の登記は裁判所書記官が嘱託します(55条2項・47条2項・3項)。
処分禁止の登記の後に建物を譲り受けた者に対しても、本案の債務名義で収去と明渡しの強制執行ができます
64条は、55条1項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができるとしています。訴訟の途中で建物が譲渡されても、債権者は訴訟の相手を変えずに判決を得て、譲受人に執行できます。
民事保全法 第64条第1項第五十五条第一項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。
64条が挙げるのは建物の譲受人なので、占有者の入れ替わりには占有移転禁止の仮処分で備えます
64条が執行の相手として挙げているのは「建物を譲り受けた者」で、建物の占有者は挙がっていません。占有者が入れ替わるおそれに備えるには、建物の占有移転禁止の仮処分(25条の2・62条)を使います。登記請求権を保全する処分禁止の仮処分と違い、55条の仮処分には後れる登記を抹消する58条2項の規定はありません。

処分禁止の登記の嘱託と抹消には、仮差押えの登記と同じ規定が準用されます
55条2項は、47条2項・3項と民事執行法48条2項・53条・54条を準用しています。仮処分命令を発した裁判所が保全執行裁判所となり、処分禁止の登記は裁判所書記官が嘱託し、登記官は登記をしたときに登記事項証明書を保全執行裁判所に送付します。保全執行の申立てが取り下げられたときや執行の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官が処分禁止の登記の抹消を嘱託します(55条2項・民事執行法54条1項)。
占有移転禁止の仮処分の効力(62条1項)は、執行を知って占有した者と、知らないで債務者の占有を承継した者に及び、執行後の占有者は知っていたと推定されるにとどまります(62条2項)。これに対し、64条は、処分禁止の登記の後に建物を譲り受けた者であれば、知っていたかどうかを問わずに執行できるとしています。登記で公示されているので、譲受人の知・不知を問題にする必要がないからです。
試験ではこう問われる
- 建物収去土地明渡請求権を保全する建物の処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行する(55条1項)
- 処分禁止の登記の後に建物を譲り受けた者に対し、本案の債務名義で建物収去・土地明渡しの執行ができる(64条)
- 53条の仮処分が建物の登記請求権を保全するのに対し、55条の仮処分は土地の明渡請求権を保全する(53条1項・55条1項)
- 建物の占有者に備えるには、占有移転禁止の仮処分を使う(25条の2・62条)
- 建物の処分禁止の登記に後れる所有権の移転の登記を、債権者が単独で抹消することはできない(不動産登記法111条1項・民事保全法55条1項。R2 午後 問22 オ ○)

