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処分禁止の仮処分の執行と効力しょぶんきんしのかりしょぶんのしっこうとこうりょく

民事保全法 第3章 保全執行と仮差押え・仮処分の効力

不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行し(53条1項)、その登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記と抵触する限度で債権者に対抗することができません(58条1項)。

処分禁止の仮処分は、土地を買ったのに売主が登記を移してくれないときなどに、訴訟の間に売主が第三者へ登記を移してしまうのを防ぐ仮処分です。処分禁止の登記をしておけば、その後に誰が登記を得ても、債権者は勝訴後に自分の登記をしてその登記を消すことができます。

登記記録で処分禁止の登記の後に入ったCの所有権移転の行に取消線、困った顔のC
優劣は第三者の売買の時期ではなく、第三者の登記が処分禁止の登記より後かどうかで決まります
登記の先後で決まる売買の時期ではない後れる登記は対抗不可
民事保全法 第53条第1項

不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行し、登記は裁判所書記官が嘱託します

53条1項は、不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行うとしています。47条2項・3項が準用されるので、仮処分命令を発した裁判所が保全執行裁判所となり、処分禁止の登記は裁判所書記官が嘱託します(53条3項)。所有権以外の権利の保存・設定・変更の登記請求権を保全するときは、処分禁止の登記とともに保全仮登記をします(53条2項)。

優劣は、第三者の売買の時期ではなく、第三者の登記が処分禁止の登記より後かどうかで決まります

58条1項は、処分禁止の登記の「後にされた登記に係る権利の取得」を債権者に対抗できないとしています。第三者が仮処分の前に債務者から土地を買っていても、所有権の移転の登記が処分禁止の登記より後であれば、債権者が保全した登記をする限度で債権者に対抗できません。仮処分の前に売買がされていれば登記が後でも第三者が所有権の取得を対抗できるとした肢(H28 午後 問6 オ)は誤りでした。後にされた差押えや仮差押えの登記(処分の制限)も同じ扱いです。

民事保全法 第58条第1項

第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。

債権者は後れる登記を抹消できますが、あらかじめその登記の権利者に通知しなければなりません

58条2項は、保全仮登記を伴わない処分禁止の仮処分の債権者は、処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができるとしています。抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければなりません(59条1項)。通知は、通知を発する時の権利者の登記簿上の住所又は事務所に宛てて発することができ、遅くとも発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなされます(59条2項)。

司法書士役の先生がC宛ての通知書の封筒を債権者に見せ、机に抹消登記申請書
債権者は処分禁止の登記に後れる登記を抹消できますが、あらかじめその登記の権利者に通知しなければなりません
抹消の前に通知登記簿上の住所でよい1週間で到達とみなす単独で抹消申請
民事保全法 第59条第1項

仮処分の債権者が前条第二項又は第四項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。

売買が無効でも、同じ土地の時効取得に基づく登記請求権を保全するものとして仮処分の効力を主張できる場合があります

売買に基づく所有権移転登記請求権を保全するために処分禁止の仮処分を得た債権者が、売買が無効でも、その売買で占有を始めて仮処分後に土地を時効取得したときは、時効完成後に債務者から土地を取得した第三者に対し、その仮処分が時効取得に基づく登記請求権を保全するものとして効力を主張できるとした肢(H28 午後 問6 イ)は、正しい記述とされました。判例も、この場合に仮処分の効力を主張できるとしています(最判昭和59年9月20日)。仮処分の効力が、申立ての時に掲げた登記原因だけに縛られないことを示しています。

試験ではこう問われる

  1. 処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行し、登記は裁判所書記官が嘱託する(53条1項・3項・47条3項)
  2. 仮処分前の売買でも、所有権の移転の登記が処分禁止の登記より後なら、第三者は債権者に対抗できない(58条1項。H28 午後 問6 オ ×・出題当時)
  3. 債権者が後れる登記を抹消するには、あらかじめその登記の権利者に通知しなければならない(59条1項)
  4. 通知は登記簿上の住所に宛てて発すればよく、発した日から1週間で到達したものとみなされる(59条2項)
  5. 後れる登記の抹消は債権者が単独で申請し、通知をしたことを証する情報を提供する(不動産登記法111条1項、不動産登記令別表71項)
  6. 後れる登記を抹消するときは、登記官が職権で処分禁止の登記も抹消する(不動産登記法111条3項)

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