職務執行停止・職務代行者選任の仮処分しょくむしっこうていし・しょくむだいこうしゃせんにんのかりしょぶん
職務執行停止・職務代行者選任の仮処分とは、法人を代表する者その他の役員について、その職務の執行を停止し、又はその職務を代行する者を選任する仮の地位を定める仮処分で、命令やその変更・取消しの決定がされたときは、裁判所書記官が法人の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所にその登記を嘱託します(56条)。
職務執行停止・職務代行者選任の仮処分は、取締役を選任した株主総会決議の効力が争われているときなどに、本案の判決までその取締役の職務を止め、代わりの者に職務を行わせる仮処分です。争いのある権利関係について仮の状態を定めるものなので、仮の地位を定める仮処分(23条2項)に当たります。

民事保全法 第56条第1項法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。
命令や変更・取消しの決定がされると、裁判所書記官が法人の登記を嘱託します
56条本文は、法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならないとしています。これらの事項が登記すべきものでないときは嘱託しません(56条ただし書)。嘱託書には、仮処分命令又はこれを変更し若しくは取り消す決定の決定書又はこれに代わる調書の謄本を添付します(民事保全規則43条)。
仮の地位を定める仮処分なので、原則として債務者が立ち会える期日を経て発します
この仮処分は仮の地位を定める仮処分なので、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ発することができません。期日を経ると申立ての目的を達することができない事情があるときは例外です(23条4項)。
職務代行者は、仮処分命令に別段の定めがない限り、常務に属しない行為に裁判所の許可が要ります
民事保全法56条の仮処分命令により選任された取締役又は代表取締役の職務を代行する者は、仮処分命令に別段の定めがある場合を除き、株式会社の常務に属しない行為をするには裁判所の許可を得なければならず(会社法352条1項)、これに違反した行為は無効ですが、善意の第三者には対抗できません(同条2項)。判例は、取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集は常務に属しない行為で、少数株主の招集請求に基づく場合でも同じであるとしました(最判昭和50年6月27日)。

本案は、取締役を選任した株主総会決議の効力を争う訴えになるのが一般的です
取締役の選任決議に瑕疵があるときは、決議の不存在又は無効の確認の訴え(会社法830条)や決議の取消しの訴え(会社法831条)で争います。これらの訴えの判決が確定するまでの間に、選任された取締役が会社を運営し続けると、会社や株主に回復しがたい損害が生じることがあります。職務執行停止・職務代行者選任の仮処分は、こうした訴えを本案として、判決までの会社の運営を仮に定めるものです。
試験ではこう問われる
- 職務執行停止・職務代行者選任の仮処分は、仮の地位を定める仮処分である(23条2項)
- 命令や変更・取消しの決定がされると、裁判所書記官が本店の所在地の登記所に登記を嘱託する(56条)
- 登記すべき事項でないときは、嘱託しない(56条ただし書)
- 職務代行者は、別段の定めがない限り、常務に属しない行為に裁判所の許可が要る(会社法352条1項)
- 取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集は常務に属しない(最判昭和50年6月27日)

