仮処分解放金かりしょぶんかいほうきん
仮処分解放金とは、仮処分の執行の停止又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額で、保全すべき権利が金銭の支払を受けることでその行使の目的を達することができるものであるときに限り、裁判所が債権者の意見を聴いて仮処分命令で定めることができます(25条1項)。
仮処分解放金は、仮処分を外してもらうために債務者が供託するお金です。仮処分は特定の物についての権利を守るものなので、お金で代えられる場合は限られます。そこで、守る権利が金銭の支払を受けることで目的を達することができるものであるときに限り、裁判所が定めることができるとされています。

民事保全法 第25条第1項裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。
仮処分解放金を定めるかどうかは裁判所の裁量で、定めなければならないのではありません
25条1項は、仮処分解放金の額を仮処分命令において「定めることができる」としています。仮差押解放金のように定めることが義務ではないので、「裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときは、仮処分命令において仮処分解放金の額を定めなければならない」という肢(R5 午後 問6 イ)は誤りです。定めるときは、債権者の意見を聴かなければなりません(25条1項)。
保全すべき権利が金銭の支払で目的を達せられるものなら、仮処分解放金を定めることができます
25条1項の要件を満たせば、仮処分命令においても解放金の額を定めることができます。「仮処分命令においては、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものである場合であっても、仮処分の執行の停止を得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることはできない」という肢(R8 午後 問6 イ)は誤りです。係争物に関する仮処分命令では定めることができないとした肢(H28 午後 問6 ア)も誤りでした。
仮の地位を定める仮処分では、仮処分解放金を定めることはできません
25条1項は「保全すべき権利」が金銭の支払で目的を達せられるものであることを要件にしています。仮の地位を定める仮処分が守るのは争いがある権利関係(23条2項)で、債権者が今受けている著しい損害や急迫の危険を避けることが目的なので、お金の供託で代えることになじみません。仮の地位を定める仮処分命令において仮処分解放金を定めることができるとした肢(H26 午後 問6 エ)は誤りでした。

解放金が供託されると仮処分の執行が取り消され、詐害行為取消権の仮処分では債務者が還付請求権を取得します
債務者が仮処分解放金の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は仮処分の執行を取り消さなければなりません(57条1項)。詐害行為取消権を保全するための仮処分で解放金が供託されたときは、民法424条1項の債務者(詐害行為をした者)が供託金の還付請求権を取得します(民事保全法65条前段)。仮処分の債権者は、本案の判決が確定した後に、その債務者に対する債務名義でこの還付請求権に強制執行をするときに限り、これを行使できます(65条後段)。
民事保全法 第65条第1項民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百二十四条第一項の規定による詐害行為取消権を保全するための仮処分命令において定められた第二十五条第一項の金銭の額に相当する金銭が供託されたときは、同法第四百二十四条第一項の債務者は、供託金の還付を請求する権利(以下「還付請求権」という。)を取得する。この場合において、その還付請求権は、その仮処分の執行が第五十七条第一項の規定により取り消され、かつ、保全すべき権利についての本案の判決が確定した後に、その仮処分の債権者が同法第四百二十四条第一項の債務者に対する債務名義によりその還付請求権に対し強制執行をするときに限り、これを行使することができる。
仮差押解放金と仮処分解放金は、定める義務、要件、意見聴取で違います
- 仮差押解放金(22条)仮差押命令で定めなければならない。被保全権利についての要件はない。債権者の意見を聴く規定はない
- 仮処分解放金(25条)定めることができる。保全すべき権利が金銭の支払で目的を達せられるものに限る。債権者の意見を聴く
どちらも、供託は仮差押命令又は仮処分命令を発した裁判所か保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にします(22条2項・25条2項)。供託の証明があれば、保全執行裁判所が執行を取り消し、その決定は即時に効力を生じます(51条・57条)。
試験ではこう問われる
- 仮処分解放金は、裁判所が定めることができるにとどまり、定めなければならないのではない(25条1項。R5 午後 問6 イ ×)
- 保全すべき権利が金銭の支払で目的を達せられるものなら、仮処分命令で解放金を定めることができる(25条1項。R8 午後 問6 イ ×)
- 解放金を定めるときは、債権者の意見を聴く(25条1項)
- 仮の地位を定める仮処分では、仮処分解放金を定めることはできない(25条1項・23条2項。H26 午後 問6 エ ×・出題当時)
- 解放金が供託されたことが証明されると、保全執行裁判所は仮処分の執行を取り消す(57条1項)
この用語が問われた肢
裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときは、仮処分命令において仮処分解放金の額を定めなければならない。
仮処分命令においては、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものである場合であっても、仮処分の執行の停止を得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることはできない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

