司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

係争物に関する仮処分けいそうぶつにかんするかりしょぶん

民事保全法 第1章 保全命令の申立てと審理 過去問で2肢

係争物に関する仮処分とは、特定の物についての給付請求権を保全するため、その現状の変更により債権者が権利を実行することができなくなるおそれ又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発する仮処分命令です(23条1項)。

係争物に関する仮処分は、土地の登記を移してもらう権利や建物を明け渡してもらう権利のように、特定の物について給付を求める権利を守る仮処分です。判決までに目的物が他人に売られたり、占有が他人に移されたりすると権利の実行ができなくなるので、目的物の現状を固定します。

係争物に関する仮処分の下に処分禁止と占有移転禁止の二つの箱を並べた黒板
係争物に関する仮処分は特定の物の給付を求める権利を守り、処分禁止と占有移転禁止の仮処分がこれに当たります
特定の物の給付請求権処分禁止の仮処分占有移転禁止の仮処分
民事保全法 第23条第1項

係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

係争物に関する仮処分は、目的物の現状の変更で権利の実行ができなくなるおそれがあるときに発します

23条1項は、係争物に関する仮処分命令の要件を、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときとしています。仮差押えが金銭債権の執行を守るのに対し、係争物に関する仮処分は物の引渡し・明渡しや登記を求める権利を守ります。代表的なものは、登記請求権を守る処分禁止の仮処分(53条)と、引渡し・明渡しの請求権を守る占有移転禁止の仮処分(25条の2・62条)です。

被保全権利が条件付・期限付でも、仮処分命令を発することができます

23条3項は、仮差押命令についての20条2項を仮処分命令に準用しています。「仮処分命令は、保全すべき債権が条件付又は期限付である場合においても、発することができる」という肢(R7 午後 問6 ウ)は正しい記述です。

民事保全法 第23条第3項

第二十条第二項の規定は、仮処分命令について準用する。

仮処分の内容は、申立ての目的を達するため必要な処分を裁判所が定めます

裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができます(24条)。仮差押えが財産の処分を止めることに限られるのに対し、仮処分は内容を事案に合わせて定めることができます。

抵当権の実行を禁止する仮処分は、係争物に関する仮処分ではありません

抵当権の実行の禁止を求める者は、目的物の給付を求めているのではなく、抵当権の存否などの争いがある権利関係について、競売による損害を避けようとしています。このような仮処分は仮の地位を定める仮処分(23条2項)として扱われ、抵当権の実行を禁止する仮処分命令を係争物に関する仮処分命令とした肢(H29 午後 問6 ウ)は誤りでした。

抵当権の実行禁止のカードを左の箱に入れかけた学生に、先生が右の箱を指す場面
抵当権の実行を禁止する仮処分は、係争物に関する仮処分ではなく仮の地位を定める仮処分として扱われます
実行禁止は仮の地位物の給付を求めていない

仮の地位を定める仮処分と違い、債務者が立ち会うことができる期日は要件ではありません

23条4項の期日の要件は、仮の地位を定める仮処分命令(23条2項)だけに課されています。係争物に関する仮処分は、目的物の処分や占有の移転を債務者に知られる前に止める必要があるので、債務者の審尋を経ないで発することができます。占有移転禁止の仮処分命令について期日を要するとした肢(R4 午後 問6 イ)が誤りとされたのは、このためです。

係争物に関する仮処分は、執行の方法によって効力の及ぶ相手が条文で決まっています

処分禁止の仮処分は処分禁止の登記で執行し、その登記に後れる登記に係る権利の取得は、債権者が保全した登記をする限度で債権者に対抗できません(53条1項・58条1項)。占有移転禁止の仮処分は執行官の保管と公示で執行し、執行後の占有者のうち一定の者に本案の債務名義で明渡しの執行ができます(62条1項)。建物収去土地明渡請求権を保全する建物の処分禁止の仮処分では、登記の後の建物の譲受人に執行できます(64条)。保全すべき権利が金銭の支払で目的を達せられるものなら、仮処分解放金を定めることもできます(25条1項)。

試験ではこう問われる

  1. 係争物に関する仮処分は、現状の変更で権利の実行ができなくなるおそれ又は著しい困難を生ずるおそれがあるときに発する(23条1項)
  2. 仮処分命令は、保全すべき権利が条件付・期限付でも発することができる(23条3項・20条2項。R7 午後 問6 ウ ○)
  3. 処分禁止の仮処分と占有移転禁止の仮処分は、係争物に関する仮処分である(23条1項・53条・25条の2)
  4. 抵当権の実行を禁止する仮処分は、係争物に関する仮処分ではない(23条。H29 午後 問6 ウ ×・出題当時)
  5. 裁判所は、申立ての目的を達するため必要な処分を仮処分の内容として定める(24条)

この用語が問われた肢

R7 問6 ウ正しい

仮処分命令は、保全すべき債権が条件付又は期限付である場合においても、発することができる。

R4 問6 イ誤り

占有移転禁止の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

保全命令の申立てと審理

仮差押命令

仮差押命令とは、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行...
保全執行と仮差押え・仮処分の効力

処分禁止の仮処分の執行と効力

不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法で執行し(53条1項)、その登記の後...
保全命令の申立てと審理

仮の地位を定める仮処分

仮の地位を定める仮処分とは、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるため、本案の判...
保全命令の申立てと審理

仮処分解放金

仮処分解放金とは、仮処分の執行の停止又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額で、保全...
保全執行と仮差押え・仮処分の効力

占有移転禁止の仮処分の執行と効力

占有移転禁止の仮処分は、債務者に係争物の占有の移転を禁じ、占有を解いて執行官に引き渡させ、執行官に保管と公示をさせ...