完成建物の所有権の帰属(請負)かんせいたてもののしょゆうけんのきぞく
完成建物の所有権の帰属とは、建物の建築請負で完成した建物の所有権が注文者と請負人のどちらに原始的に帰属するかの問題です。判例は、特約がなければ材料の提供者を基準にし、請負人が材料を提供したときは請負人が原始取得して引渡しで注文者に移るとしつつ、注文者が代金の大半を支払っていれば完成と同時に注文者に帰属するとしています。
工務店が自分で木材や鉄骨を用意して家を建てたとき、出来上がった家がすぐ施主のものになるとは限りません。判例は、材料を出した人を基準にし、工務店が材料を出したなら、家はいったん工務店のものになり、引き渡されて施主に移ると考えます。工務店が代金を回収できないまま家を取られないようにするためです。ただし、施主が代金の大半を払っていれば、完成と同時に施主のものになります。

判例は材料の提供者を基準にし、請負人が材料を提供したときは請負人が原始取得して引渡しで注文者に移ります
特約がないとき、判例は、誰が材料の全部又は主要部分を提供したかで完成建物の所有権の帰属を決めます。注文者が材料を提供したときは注文者が原始取得し(大判昭和7年5月9日)、請負人が材料を提供したときは請負人がいったん原始取得し、引渡しによって注文者に移転します(大判明治37年6月22日、大判大正3年12月26日)。請負人に所有権を認めるのは報酬債権の回収を確保するためで、材料の提供者にかかわらず請負人が取得するわけではありません。他方、建築途中の建物を第三者が完成させた場合の帰属は、加工の規定で決まるので、前半の付合・加工の語に書きました。「【問】請負人が自ら材料を提供して建物の建築を始めたが、独立の不動産になっていない建前の状態で工事を中止した後、第三者がその建前に自ら材料を提供して工事を続行して建物を建築した場合には、その建物の所有権の帰属はどの規定により決定されるでしょうか。動産の付合の規定により決定されます。」という学生の解答(R5 問9 ウ)は誤りです。
注文者が工事代金の大半を支払っていたときや特約があるときは、完成と同時に注文者が原始取得します
判例は、注文者が全工事代金の半額以上を棟上げの時までに支払い、その後も工事の進行に応じて残代金を支払ってきた事案で、特段の事情のない限り、建物の所有権は完成と同時に原始的に注文者に帰属するとしました(最判昭和44年9月12日)。代金をほぼ払っている注文者に所有権を与えても請負人の報酬の確保は害されず、当事者の合意もそう解されるからです。注文者に帰属させる特約も有効です。注文者と元請負人の間に、契約が中途で解除されたときは出来形部分の所有権を注文者に帰属させる約定がある場合に、判例は、元請負人から一括して工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したときでも、注文者と下請負人の間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、出来形部分の所有権は注文者に帰属するとしました(最判平成5年10月19日)。下請負人は注文者との関係では元請負人の履行補助者的な立場にとどまり、元請負人と異なる権利関係を主張できる立場にないからです。

材料を請負人が提供しても注文者に原始的に帰属するとする見解は、請負人には別の保護手段があり、所有権を持たせても意味がないことを論拠にします
学説には、材料を提供したのが請負人でも、完成建物は原始的に注文者に帰属するとする見解があります。この見解は、請負人は不動産工事の先取特権(327条)や同時履行の抗弁権、留置権で報酬を確保できるので所有権を与える必要はないこと、実務では注文者が建築確認を申請し注文者名義で保存登記をしていること、請負人には敷地利用権がなく、所有権を持っても収去を求められるだけであることを論拠にします。これに対し、引渡し前の建物に注文者の債権者が強制執行できるのは妥当でないという考え方は、請負人に帰属させる判例の側の論拠です。建物が土地と別個の不動産で敷地に付合しないことは、建物が誰のものになるかを決めないので、どちらの見解の論拠にもなりません。
- 注文者が材料を提供注文者が原始取得します(大判昭和7年5月9日)
- 請負人が材料を提供請負人が原始取得し、引渡しで注文者に移ります
- 棟上げまでに代金の半額以上を支払い、以後も進行に応じて支払完成と同時に注文者が原始取得します(最判昭和44年9月12日)
- 注文者帰属の特約有効で、自ら材料を提供した一括下請負人にも及びます(最判平成5年10月19日)
民法 第327条第1項不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。
試験ではこう問われる
- 判例は材料の提供者を基準にし、注文者が材料を提供したときは注文者が、請負人が提供したときは請負人が原始取得する(大判昭和7年5月9日、大判明治37年6月22日)
- 請負人が原始取得した建物は、引渡しによって注文者に移転する
- 棟上げまでに代金の半額以上を支払い、以後も工事の進行に応じて支払っていれば、特段の事情のない限り完成と同時に注文者に帰属する(最判昭和44年9月12日)
- 中途解除の際の出来形部分を注文者に帰属させる約定は、自ら材料を提供した一括下請負人の築造部分にも及ぶ(最判平成5年10月19日)
- 建前の段階で工事が中止され、第三者が材料を提供して完成させた建物の帰属は、動産の付合ではなく加工の規定で決まる(R5 問9 ウ ×)

