適法な転貸の効果(613条・合意解除と債務不履行解除)てきほうなてんたいのこうか
適法な転貸とは、賃貸人の承諾を得てする転貸のことで、転借人は賃借人の債務の範囲を限度として賃貸人に直接義務を負い(613条1項)、賃貸人は原賃貸借の合意解除を転借人に対抗できません(613条3項)。
大家さんの承諾を得て又貸しした場合、大家さん・借主・又借りした人の三者の関係が問題になります。民法は、大家さんを守るため、又借りした人(転借人)に大家さんへ直接家賃を払う義務を負わせましたが、転借人が大家さんに修繕を頼めるようにはしていません。また、大家さんと借主が相談して契約をやめても、承諾して住まわせた転借人を追い出すことはできません。

転借人は、原賃貸借の賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に直接義務を負います
613条1項は、賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、賃料の前払を賃貸人に対抗できないと定めています。賃貸人が賃借人に対して権利を行使することも妨げられません(同条2項)。原賃料が月10万円、転借料が月12万円なら、賃貸人が転借人に請求できるのは10万円までです。原賃料が使えない部分の割合で減額されれば、転借人が賃貸人に負う賃料もその範囲に限られます。賃貸人の先取特権も転貸の場合に広がり、転借人の動産と、転貸人が受けるべき金銭に及びます(314条)。「不動産の賃借人がその不動産を転貸している場合には,賃貸人の先取特権は,賃借人がその転貸借契約に基づいて転借人から受けるべき金銭にも及ぶ」という肢(R3 問11 エ)は正しいです。
転借人は賃貸人に直接の権利を持たないので、賃貸人に修繕を請求することはできません
613条1項は賃貸人を保護するために転借人の義務を定めたもので、賃貸人が転借人に義務を負うわけではありません。転借人が修繕を求める相手は転貸人で、賃貸人は転借人に直接修繕義務を負わず、転貸人が修繕を拒んでも転借人は賃貸人に修繕を請求できません。転借人の過失で目的物が損傷・焼失したときは、転借人は賃借人の履行補助者のような立場にあるので、賃借人は賃貸人に損害賠償責任を負います(大判昭和4年6月19日)。転貸に承諾があっても同じです。
原賃貸借の合意解除は転借人に対抗できませんが、賃貸人が債務不履行解除権を持っていたときは別です
賃借人が適法に転貸した場合、賃貸人は賃借人との賃貸借を合意により解除したことを転借人に対抗できません(613条3項本文)。合意解除は賃借人が自ら賃借権を放棄するのと同じで、承諾して転借させた者の権利をそれで失わせるのは信義に反するからです。合意解除をしても、賃貸人は転借人に明渡しを請求できません。判例は、借地の合意解除も、特段の事情がない限り、借地上の建物の賃借人に対抗できないとしていました(最判昭和38年2月21日)。ただし、合意解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を持っていたときは、転借人に対抗できます(同項ただし書)。どのみち債務不履行で解除できたからです。

債務不履行解除なら転借人に対抗でき、転貸借は賃貸人が転借人に返還を請求した時に終了します
賃借人の賃料不払などで原賃貸借が債務不履行解除されたときは、賃貸人は転借人に解除を対抗できます。判例は、この場合、承諾のある転貸借は、原則として賃貸人が転借人に目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了するとしています(最判昭和36年12月21日、最判平成9年2月25日)。賃貸人が転貸を承諾していたことは、この履行不能を妨げません。賃料不払で解除するときに、賃貸人は転借人や借地上の建物の賃借人に支払の機会を与える催告をする必要はありません(最判昭和51年12月14日)。もっとも、借地上の建物の賃借人は敷地の地代の弁済について正当な利益を持つので、借地人の意思に反しても地代を弁済して解除を防ぐことができます(最判昭和63年7月1日・474条2項)。原賃貸借が期間満了で終了したときも、転借人は賃貸人に転借権を主張できなくなり、動産の承諾転貸では賃貸人は所有権に基づいて返還を請求できます。
- 合意解除転借人に対抗できません(613条3項本文、最判昭和38年2月21日)
- 合意解除の当時に債務不履行解除権あり転借人に対抗できます(613条3項ただし書)
- 債務不履行解除対抗でき、転貸借は返還請求の時に履行不能で終了します(最判平成9年2月25日)。転借人への催告は不要です
- 期間満了転借人は転借権を主張できず、賃貸人は所有権に基づいて返還を請求できます
- 賃貸人の地位と転借人の地位の混同特別の合意がない限り転貸借は消滅しません(最判昭和35年6月23日)
賃貸人の地位と転借人の地位が同じ人に帰属しても、転貸借は当然には消滅しません
転借人が賃貸目的物を買い受けて賃貸人の地位を承継した場合、判例は、613条1項による転借人の賃貸人に対する直接の義務が混同で消滅するのは別として、当事者間に転貸借関係を消滅させる特別の合意がない限り、転貸借関係は当然には消滅しないとしています(最判昭和35年6月23日)。賃借人(転貸人)と転借人の契約関係は残るからです。
民法 第613条第1項賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
民法 第613条第3項賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 転借人は賃借人の債務の範囲を限度に賃貸人に直接義務を負い、賃料の前払を賃貸人に対抗できない(613条1項)
- 賃貸人の先取特権は、転借人の動産と、転貸人が転借人から受けるべき金銭に及ぶ(314条。R3 問11 エ ○)
- 転借人は賃貸人に修繕を請求できず、賃貸人は転借人に直接の修繕義務を負わない
- 原賃貸借の合意解除は転借人に対抗できないが、合意解除の当時に債務不履行解除権があれば対抗できる(613条3項)
- 債務不履行解除なら、転貸借は賃貸人が転借人に返還を請求した時に履行不能で終了し、転借人への催告は要らない(最判平成9年2月25日、最判昭和51年12月14日)
- 転借権者が複数いるときは、転貸の登記の申請情報に転借権者ごとの持分を載せる(R4 午後 問13 イ ○)
- 転借権の登記の抹消の前提として、転借権者の住所の変更の登記は要らない(R2 午後 問13 イ ×)

