司法書士試験AIブートラボ 司法書士試験AIブートラボ

解除と登記(解除前の第三者・解除後の第三者)かいじょととうき

民法 第5章 物権総論と物権変動 過去問で133肢

解除と登記とは、不動産の売買契約が解除された場合に、解除者が所有権の復帰を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。判例は、解除前の第三者は545条1項ただし書で保護されるが権利保護要件として登記を要し、解除後の第三者とは対抗関係に立つとして177条で処理します。

代金を払わない買主との売買を解除すると、売主は土地を取り戻せます。しかし、買主がすでにその土地を他人に転売していた場合、転売を受けた人の立場も考えなければなりません。解除の前に買った人は、解除されるかどうか分からない段階で取引に入ったので、登記まで備えていれば守る価値があります。解除の後に買った人との関係では、売主は登記を取り戻せたのに放置したのですから、登記の早い方を勝たせるのが公平です。取消しと登記と同じく、第三者が現れたのが解除の前か後かで扱いが分かれます。

不動産の売買契約の席の場面。机の上に「契約解除通知書」が置かれ、先生が売主役(札「売主A」)で通知書を指している。机の向こうに男性(札「代金を払わない買主B」)が頭をかいている。窓の外では別の男性(札「解除前の転得者C」)が登記済みの書類を

解除前の第三者は545条1項ただし書で保護され、債務不履行を知っていても、登記を備えていれば解除者に優先します

545条1項は、解除権を行使したときは各当事者は相手方を原状に復させる義務を負うが、第三者の権利を害することはできないと定めています。判例は解除によって契約が遡って消滅すると考え(直接効果説)、ただし書の第三者を、解除された契約から生じた法律効果を基礎として解除前に新たな権利を取得した者と解しています。解除するかどうかは解除権者が決めることなので、第三者が債務不履行の事実を知っていても保護は否定されません。もっとも、第三者が保護されるには、その権利について登記を経ていることが必要です(大判大正10年5月17日)。この登記は、対抗要件というより、解除者の犠牲で保護を受けるための権利保護要件と説明されます。買主の代金未払を知って買い受けた第三者も、所有権移転登記を受けていれば解除者に所有権の取得を主張できます。

解除後の第三者とは、解除による所有権の復帰と第三者への譲渡が対抗関係になり、解除者は登記がなければ対抗できません

判例は、不動産の売買契約に基づき買主のため所有権移転登記があった後、売買契約が解除されて所有権が売主に復帰した場合でも、売主はその所有権取得の登記を了しなければ、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の復帰を対抗できないとしました(最判昭和35年11月29日)。解除後の第三者は545条1項ただし書の問題ではなく、買主を起点とする二重譲渡と同じ関係として177条で処理されます。「Aがその所有する甲土地をBに売却し、その旨の登記をした後、Bの債務不履行により当該売買契約を解除した場合において、その後、BがCに甲土地を売却し、その旨の登記をしたときは、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張することができない」という肢(R4 問7 ウ)は正しいです。買主の立場から解除後に売主が別の者に譲渡して登記した場合も同じで、買主はその譲受人に対し、売主からの所有権移転登記の抹消登記手続を請求できません。

板書の図解。黒板に時間の矢印があり、中央に「解除」の目盛り。左側(解除前)に「第三者C:545条1項ただし書・善意悪意を問わない・登記が要る」、右側(解除後)に「第三者D:B→A(復帰)とB→Dの二重譲渡と同じ→登記の先後(177条)」。下

合意解除の場合も、解除前の第三者は登記を備えていなければ保護されません

当事者が合意で契約を解消した場合も、当事者の合意で第三者の既得の地位を奪うことはできないので、法定解除と同じ扱いになります。判例は、合意解除の場合でも、第三者が不動産の所有権を取得したときはその所有権について登記を経由していることを要し、登記を経由していないときは第三者として保護できないとしています(最判昭和33年6月14日)。「A所有の甲土地がAからBへ、BからCへと順次売却された後、AB間の売買契約が合意により解除された場合には、Cは、BからCへの所有権移転登記がされていないときであっても、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができる」という肢(R7 問8 ア)は誤りです。

直接効果説では545条1項ただし書は遡及効を制限する規定で、間接効果説では注意規定にすぎないと説明されます

解除により契約が遡って消滅するとする直接効果説によると、解除前の第三者はただし書によって遡及効が制限される結果として保護され、登記名義を得ていれば足ります。解除後の第三者とは対抗関係に立つので、Bに登記名義が残っている段階ではAもCも相手に優先せず、直接効果説からAが優先するという帰結にはなりません。解除で契約は将来に向かって効力を失うにすぎないとする間接効果説によると、解除の前後を問わずAとCは対抗関係に立ち、ただし書は注意規定の意味しか持ちません。合意解除の場合は、どちらの説に立っても、Aは登記を得なければCに対抗できず、Cの登場が解除の前か後かでも変わりません。解除前に登記をしたCが債務不履行を知っていた場合も、直接効果説ではただし書の第三者に善意は要らず、間接効果説では対抗関係で登記を備えたCが優先するので、どちらの説でもCが優先し、両説で結論が逆になることはありません。判例は直接効果説をとっています。

民法 第545条第1項

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

最判昭和35年11月29日

不動産を目的とする売買契約に基き買主のため所有権移転登記があつた後、右売買契約が解除せられ、不動産の所有権が売主に復帰した場合でも、売主は、その所有権取得の登記を了しなければ、右契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰を以つて対抗し得ない

試験ではこう問われる

  1. 解除前の第三者は、債務不履行について悪意でも、登記を備えていれば545条1項ただし書で保護される(大判大正10年5月17日)
  2. 解除後に買主から転得して登記をした第三者に対し、売主は所有権を主張できない(最判昭和35年11月29日。R4 問7 ウ ○)
  3. 合意解除でも、解除前の第三者は登記を備えていなければ保護されない(最判昭和33年6月14日。R7 問8 ア ×)
  4. 遺産分割協議で負担した扶養義務を履行しないことを理由に遺産分割協議を解除し、解除を登記原因として所有権の移転の登記の抹消を申請することはできない(R2 午後 問19 オ ×)
  5. 直接効果説では545条1項ただし書は遡及効の制限、間接効果説では注意規定と説明される

司法書士試験AIブートラボ

司法書士試験の対策を、
スマホひとつで。

過去問の肢別演習、記述式と雛形ドリル、先例と条文、用語集。司法書士試験の勉強に使う教材をひとつのアプリにまとめました。

関連する用語

物権総論と物権変動

177条の「第三者」の範囲(制限説・不法占拠者・前主・賃借人・差押債権者)

177条の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の得喪及び変更の登記の欠缺を主張す...
物権総論と物権変動

取消しと登記(取消し前の第三者・取消し後の第三者)

取消しと登記とは、不動産の売買などが取り消された場合に、取消権者が取消しによる所有権の復帰を第三者に主張するのに登...
物権総論と物権変動

取得時効と登記(時効完成前後の第三者・起算点の固定・再度の時効取得)

取得時効と登記とは、不動産を時効取得した者が、その取得を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。判例は、時...
契約総論

解除の効果(545条・原状回復・使用利益・利息・損害賠償)

解除の効果とは、解除権の行使によって生じる法律効果で、契約は遡って消滅し、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負...
物権総論と物権変動

相続と登記(共同相続・相続放棄・遺産分割・遺贈・特定財産承継遺言・遺言執行者)

相続と登記とは、相続によって不動産を取得した者が、その取得を第三者に主張するのに登記が要るかという問題です。自己の...