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根抵当権の設定と変更(398条の2〜398条の18・被担保債権の範囲・債務者・譲渡・相続)ねていとうけんのせっていとへんこう

民法 第8章 担保物権 過去問で25肢

根抵当権とは、設定行為で定めるところにより、債務者との一定の種類の取引などから生ずる一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度において担保する抵当権のことです(398条の2)。元本の確定前は、個々の債権との付従性・随伴性がなく、被担保債権の範囲・債務者・確定期日を後順位抵当権者の承諾なしに変更でき、設定者の承諾を得て譲渡できます。

銀行と取引を続ける会社は、借りては返すことを何度も繰り返します。そのたびに抵当権を設定し直し、返すたびに消していたのでは手間がかかりすぎます。そこで、この会社との手形取引や銀行取引から生じる債権を、1億円という枠の中でまとめて担保する抵当権が認められています。これが根抵当権です。枠が決まっていれば後順位の人も損得を計算できるので、中身の債権が入れ替わっても構わない、という考え方で作られています。

銀行の融資窓口。窓口の上に大きな枠の札「極度額 1億円」が掲げられ、枠の中に小さな札「手形取引の債権」「銀行取引の債権」が出たり入ったりしている。先生が銀行員役(札「根抵当権者」)で枠を指し、男性(札「債務者の会社」)が書類を持って立ってい

根抵当権は、債務者との一定の種類の取引などに限定した範囲の不特定の債権を極度額まで担保するもので、確定期日を定めなくても有効です

398条の2第1項は、抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができると定めています。2項は、担保すべき債権の範囲を、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならないとし、あらゆる債権を担保する包括根抵当を認めていません。範囲を限定するのは、設定者だけでなく、後順位担保権者や一般債権者が担保の中身を予測できるようにするためでもあります。登記原因証明情報に被担保債権の範囲として「信託取引」と記載されている場合について、「「信託取引」を当該根抵当権の債権の範囲として当該根抵当権の設定の登記を申請することができる」とする肢(R5 午後 問24 ア)は正しいです。3項により、特定の原因に基づいて継続して生ずる債権や手形上・小切手上の請求権も被担保債権にできます。特定の継続的取引契約から生ずる債権に加えて、設定時に現に発生している特定の債権を含めることもできます。元本の確定期日は定めても定めなくてもよい(398条の6第1項)ので、確定期日を定めなくても根抵当権の設定は有効です。

元本の確定前は、被担保債権の範囲・債務者・確定期日を後順位抵当権者の承諾なしに変更できますが、極度額の変更には利害関係人の承諾が要ります

398条の4は、元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができ、債務者の変更も同様とし、その変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しないと定めています。後順位抵当権者は極度額という枠を前提にしているので、枠の中身が変わっても害されないからです。「根抵当権者と根抵当権設定者が元本の確定前に根抵当権の担保すべき債権の範囲を変更するときは,後順位の抵当権者の承諾を得なければならない」という肢(R2 問14 ア)は誤りで、「根抵当権者は、元本の確定前においては、後順位の抵当権者の承諾を得ないで、根抵当権設定者との合意により、その根抵当権の被担保債権の範囲を変更することができる」という肢(R8 問14 イ)は正しいです。ただし、変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされる(398条の4第3項)ので、「元本の確定前に根抵当権の被担保債権の債務者の変更をした場合において、元本の確定前にその旨の登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなされる」という肢(R8 問14 ウ)は正しいです。確定期日の定めや変更にも後順位抵当権者の承諾は要りません(398条の6第2項)。確定期日は定め又は変更した日から5年以内でなければなりません(398条の6第3項)。「根抵当権の担保すべき元本の確定すべき期日を定める場合には、その期日は、これを定めた日から 5 年以内でなければならない」という肢(R6 問15 イ)と、「根抵当権者と根抵当権設定者は,後順位の抵当権者の承諾を得ることなく,根抵当権の担保すべき元本の確定すべき期日を変更することができる」という肢(R2 問14 ウ)は正しいです。これに対し、398条の5は、極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないと定めています。極度額は後順位の者の取り分を直接左右するからです。減額でも同じで、「根抵当権の極度額は、利害関係を有する者の承諾を得ないで減額することができる」という肢(R8 問14 ア)は誤りです。承諾を得なければ変更できないので、増額の契約の後に唯一の利害関係人が承諾したときは、極度額の増額による変更の登記の登記原因の日付は承諾の日になり、この点を問う肢(R8 午後 問23 ア)は正しいです。

板書の図解。黒板に「元本の確定前の変更」と題した表があり、左の列「被担保債権の範囲」「債務者」「確定期日」に「後順位抵当権者の承諾 不要」、右の列「極度額」に「利害関係人の承諾 必要」と書かれている。先生が教師役(札「先生」)で右の列を指し

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者や代位弁済をした者は、その債権について根抵当権を行使できません

398条の7第1項は、元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができず、元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も同様とすると定めています。確定前の根抵当権は枠を支配する権利で、個々の債権に随伴しないからです。「元本の確定前に,第三者がその時点における被担保債権の全部を債務者のために弁済したときは,その第三者は,弁済した債権について根抵当権を行使することができる」という肢(R3 問14 ア)は誤りです。元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、相続人と設定者の合意で定めた相続人が取得する債権も担保されますが、その合意について相続の開始後6か月以内に登記をしないときは、相続開始の時に元本が確定したものとみなされます(398条の8第1項・4項)。「元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、根抵当権者の相続開始の時に存する債権のみを担保する」という肢(R8 問14 オ)は誤りです。

元本の確定前は、設定者の承諾を得て根抵当権を譲渡できますが、376条の譲渡・放棄・順位の譲渡・順位の放棄はできず、転根抵当だけはできます

398条の12第1項・398条の13は、元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡し又は一部譲渡をすることができると定めています。譲受人の債権を担保することになり、設定者の負担が変わるからです。「根抵当権者は,元本の確定前において,根抵当権設定者の承諾を得ることなく,その根抵当権を譲り渡すことができる」という肢(R2 問14 オ)は誤りです。根抵当権を2個に分割して一方を譲り渡すこともできるので(398条の12第2項)、「根抵当権者は、その根抵当権を 2 個の根抵当権に分割して、その一方を譲り渡すことはできない」という肢(R6 問15 オ)は誤りです。根抵当権の共有者が権利を譲り渡すには他の共有者の同意が要るので(398条の14第2項)、「根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得ることなく、その有する持分を譲り渡すことができる」という肢(R6 問15 エ)も誤りです。他方、398条の11第1項は、元本の確定前においては、根抵当権者は376条1項の規定による根抵当権の処分をすることができず、ただし根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げないと定めています。被担保債権が特定していない段階で順位の譲渡などを許すと配当の関係が定まらないからです。「根抵当権者は、元本の確定前において、同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその根抵当権又はその順位を譲渡し、又は放棄することができる」という肢(R5 問15 ウ)は誤りです。根抵当権を他の債権の担保とする転根抵当は設定者の承諾なしにできるので、「根抵当権者は,元本の確定前において,根抵当権設定者の承諾を得ることなく,その根抵当権を他の債権の担保とすることができる」という肢(R2 問14 エ)は正しいです。転根抵当では、元本の確定前にした弁済に377条2項は適用されない(398条の11第2項)ので、転根抵当権の設定の通知を受けた債務者は、元本の確定前なら転根抵当権者の承諾なしに根抵当権者に弁済できます。反対に、根抵当権者が先順位の普通抵当権者から順位の譲渡や放棄を受けることは禁じられていません(398条の15はこれを前提にしています)。「抵当権の順位の譲渡を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡をした場合には、その譲受人は、抵当権の順位の譲渡の利益を受ける」という肢(R6 問15 ウ)は正しいです。

  • 被担保債権の範囲・債務者の変更(398条の4)確定前に限りできます。後順位抵当権者の承諾は要りませんが、確定前に登記しないと変更しなかったものとみなされます
  • 確定期日の定め・変更(398条の6)後順位抵当権者の承諾は要りません。定め又は変更した日から5年以内です
  • 極度額の変更(398条の5)利害関係を有する者の承諾が必要です
  • 確定前の債権譲渡・代位弁済(398条の7)譲受人・代位弁済者は根抵当権を行使できません
  • 確定前の全部譲渡・一部譲渡(398条の12・398条の13)根抵当権設定者の承諾が必要です
  • 確定前の376条1項の処分(398条の11)できません。転根抵当だけはできます
  • 数個の不動産の根抵当権(398条の16・398条の18)設定と同時に共同担保の登記をした共同根抵当を除き、各不動産の極度額まで優先権を行使できます

数個の不動産に根抵当権を設定しても、設定と同時に共同担保の登記をしない限り、各不動産の極度額まで優先権を行使できます

398条の18は、数個の不動産につき根抵当権を有する者は、398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができると定めています(累積根抵当)。398条の16は、392条・393条は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り適用するとしています(共同根抵当)。

民法 第398条の2

(根抵当権)
抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。次条第二項において同じ。)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

民法 第398条の4

(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)
元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす。

民法 第398条の7第1項

元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする。

民法 第398条の11

(根抵当権の処分)
元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。
第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない。

民法 第398条の12第1項

元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。

試験ではこう問われる

  1. 確定前の被担保債権の範囲・債務者・確定期日の変更に後順位抵当権者の承諾は要らない(398条の4第2項・398条の6第2項。R2 問14 ア ×、R8 問14 イ ○、R2 問14 ウ ○)
  2. 範囲・債務者の変更は、元本の確定前に登記しなければ変更しなかったものとみなされる(398条の4第3項。R5 問15 イ ○、R8 問14 ウ ○)
  3. 極度額の変更は、減額でも利害関係を有する者の承諾が要る(398条の5。R2 問14 イ ○、R8 問14 ア ×)
  4. 確定期日は、定め又は変更した日から5年以内でなければならない(398条の6第3項。R6 問15 イ ○)
  5. 確定前に代位弁済をした第三者は根抵当権を行使できず、根抵当権者の相続では合意で定めた相続人が取得する債権も担保される(398条の7第1項・398条の8第1項。R3 問14 ア ×、R8 問14 オ ×)
  6. 確定前の全部譲渡には設定者の承諾が要り、分割譲渡もでき、共有者の持分の譲渡には他の共有者の同意が要る(398条の12・398条の14第2項。R2 問14 オ ×、R6 問15 オ ×、R6 問15 エ ×)
  7. 確定前は順位の譲渡・放棄などはできないが、転根抵当は設定者の承諾なくでき、順位の譲渡を受けた根抵当権の譲受人はその利益を受ける(398条の11・398条の15。R5 問15 ウ ×、R2 問14 エ ○、R6 問15 ウ ○)

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