登記所と管轄とうきしょとかんかつ
登記の事務は不動産の所在地を管轄する法務局・地方法務局とその支局・出張所がつかさどり、その役所を登記所と呼びます。同一の登記所の管轄区域内かどうかが一括申請や添付情報の要否を分けるため、肢に頻出します。
登記所は、不動産登記法6条1項により登記の事務をつかさどる、不動産の所在地を管轄する法務局・地方法務局とその支局・出張所の総称です。管轄はどの登記所がその不動産の登記事務を扱うかという区分で、不動産の所在地で決まり、申請人の住所とは関係がありません。管轄に属しない不動産の申請は25条1号で却下され、誤ってされた登記は71条の職権抹消の対象になります。一括申請の「同一の登記所の管轄区域内」という要件や、他の登記所の管轄にある不動産を示す登記事項証明書の要否も、管轄の考え方から導かれます。肢で突かれるのは、管轄をまたぐ場面の扱いと、管轄が同じでも一括申請できない組合せです。
不動産登記法 第6条(登記所)
登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下単に「登記所」という。)がつかさどる。
不動産が二以上の登記所の管轄区域にまたがる場合は、法務省令で定めるところにより、法務大臣又は法務局若しくは地方法務局の長が、当該不動産に関する登記の事務をつかさどる登記所を指定する。
前項に規定する場合において、同項の指定がされるまでの間、登記の申請は、当該二以上の登記所のうち、一の登記所にすることができる。

管轄は不動産の所在地で決まり、管轄違いは却下されます
登記所の管轄区域は法務局や地方法務局とその支局・出張所ごとに定められ、不動産がどこにあるかで申請先が決まります。管轄に属しない不動産の申請は補正の余地がなく、25条1号で却下されます。管轄違いの登記が完了してしまったときは、登記官が71条の手続で職権により抹消します。申請人や義務者の住所地は管轄と無関係で、仮登記を命ずる処分の申立ても不動産の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄です。「仮登記の登記義務者の住所地を管轄する地方裁判所は,仮登記の登記権利者の申立てにより,仮登記を命ずる処分をすることができる」という肢は誤りです。
またがる不動産は指定された登記所が扱います
一つの不動産が二つ以上の登記所の管轄区域にまたがるときは、6条2項により法務大臣か法務局・地方法務局の長が事務をつかさどる登記所を指定します。指定がされるまでの間は、6条3項によりいずれか一つの登記所に申請できます。法務大臣は7条で一つの登記所の事務を他の登記所に委任でき、8条で災害などのときに期間を定めて事務の停止を命じられます。事務が停止しても添付情報の期限は延びず、「登記所の事務が1か月間停止した場合には,登記義務者の印鑑に関する証明書としての有効期間は1か月間伸長される」という肢は誤りです。
一括申請は同一の登記所の管轄区域内が前提です
不動産登記令4条ただし書は、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産で登記の目的と登記原因とその日付が同一のときに一の申請情報による申請を認めます。同一の債務を担保する抵当権なら設定日が違っても一括でき、「甲土地及び乙土地に係る抵当権の設定の登記は,一の申請情報によって申請することができる」という肢は正しい肢です。同一の債権を担保する担保権の登記を除けば、管轄が同じでも申請人が違えばまとめられず、A所有の甲土地とB所有の乙土地にCのための「所有権移転請求権の仮登記は,一の申請情報によって申請することができる」という肢は誤りです。A単有の甲土地とAB共有の乙土地の住所変更を「一の申請情報によって申請することができる」という肢も、申請人が違うので誤りになります。登記識別情報を提供する申請と事前通知による申請とは「一の申請情報によって申請することができる」という肢は正しい肢です。
管轄をまたぐ不動産を示すには登記事項証明書を添えます
承役地の登記所に地役権の設定を書面で申請するとき、要役地が他の登記所の管轄なら要役地の登記事項証明書を添付します。電子申請では令11条により登記情報の照会番号を提供して添付に代えられます。「甲土地が他の登記所の管轄に属するときであっても,甲土地の登記事項証明書を提供することを要しない」という肢は誤りです。不動産番号で不動産の表示を省略する場合も、他の登記所の管轄にある不動産なら、不動産登記規則34条3項によりその登記所の表示を併せて申請情報の内容にします。根抵当権の設定の仮登記は共同担保にできないので、同一管轄で原因日付が同じでも「一の申請情報によって申請することはできない」という肢が正しい肢で、管轄が同じことは一括申請の必要条件であって十分条件ではありません。
不動産登記令 第4条(申請情報の作成及び提供)
申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 管轄は何で決まるか(不動産の所在地。申請人や義務者の住所地ではない)
- 管轄違いの申請はどうなるか(25条1号で却下。完了していれば職権抹消)
- またがる不動産はどこに申請するか(指定された登記所。指定前はいずれか一方)
- 同一管轄でも一括申請できない組合せは何か(同一の債権を担保する担保権以外で申請人が違うもの、根抵当権の設定の仮登記など)
- 他の登記所の管轄にある要役地を示すには何が要るか(要役地の登記事項証明書)
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