職権による住所等の変更登記(検索用情報)しょっけんによるじゅうしょとうのへんこうとうき
登記官が住民基本台帳や商業登記の情報から氏名・住所の変更を把握し、職権で変更の登記をする仕組みです。自然人は申出があるときに限る点と、検索用情報として何を申し出るかが肢で突かれます。
職権による住所等の変更登記は、所有権の登記名義人の氏名・名称・住所に変更があったと認めるべき場合に、登記官が職権で変更の登記をする不動産登記法76条の6の仕組みです。令和8年4月1日施行の住所等変更登記の申請義務化と対になる制度で、義務を課すだけでなく、登記所の側から登記記録を現実に合わせる経路を用意しました。自然人については、氏名・住所・生年月日などの検索用情報を申し出ておくと、登記官が住民基本台帳ネットワークに照会して変更を把握します。法人は会社法人等番号を手がかりに商業登記の情報から把握するので、申出は要りません。肢では、自然人と法人の違いと、検索用情報の中身が突かれます。
不動産登記法 第76条の6(職権による氏名等の変更の登記)
登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

自然人は本人の申出があるときに限り職権で登記されます
不動産登記法76条の6ただし書により、所有権の登記名義人が自然人であるときは、本人の申出があるときに限って職権の変更の登記がされます。住所の変更には転居以外の事情が隠れていることもあり、本人の意思を確かめずに登記記録を書き換えることを避けたからです。登記官が住民基本台帳ネットワークの情報で変更を確認すると名義人へ通知し、名義人が通知の発送の日から1か月以内に職権の登記をしてよい旨を申し出ると、変更の登記がされます。通知は原則として電子メールで、メールアドレスが記録されていないときは書面で送られます。
法人は会社法人等番号を手がかりに申出なしで登記されます
法人の登記名義人については、会社法人等番号が登記されていれば、登記官が法人の登記簿の情報の提供を受けて名称や住所の変更を確認し、申出を待たずに職権で変更の登記をします。商号変更や本店移転は商業登記で公示されているので、本人の意思を改めて確かめる必要がないからです。会社法人等番号が登記記録に記録されていない古い登記の法人は、そのままではこの経路に乗りません。登記実務では番号を登記記録に記録する申出をしておくか、自ら変更の登記を申請することになるわけです。職権で変更の登記がされれば、法人も住所等変更登記の申請義務を果たしたことになります。
検索用情報は氏名・振り仮名・住所・生年月日です
検索用情報は、氏名、氏名の振り仮名、住所、出生の年月日、電子メールアドレスなどで、不動産登記規則158条の38が定めています。所有権の保存や移転の登記を申請するときは、所有権の登記名義人となる申請人が国内に住所を持つ場合に、その人の検索用情報を申請情報の内容として申し出るものとされています。受付は令和7年4月21日から始まっており、申し出るのは登記名義人になる人の分だけで、登記義務者となる前の名義人の分は要りません。「検索用情報同時申出をするときは、A及びBの双方の出生の年月日を申請情報の内容として申し出なければならない」という肢は誤りです。申出には氏名の振り仮名と生年月日を証する住民票の写しなどを添付しますが、電子申請で登記官がその二つを確認できる電子証明書を提供したときは省略できます。すでに登記名義人になっている人は、不動産の所在地を管轄する登記所に単独で検索用情報を申し出ることも可能です。
職権で変更の登記がされれば申請義務は果たされます
職権で氏名や住所の変更の登記がされると、登記名義人は改めて変更の登記を申請する必要がなく、不動産登記法76条の5の申請義務も果たしたことになります。ただし、通知に応じて申出をしなかった自然人は職権の登記がされないので、2年の期間内に自分で申請しなければ過料の対象になりえます。職権の登記では、不動産登記規則158条の44により、登記の目的、登記原因とその日付、登記の年月日が記録されます。検索用情報として記録された内容に変更や誤りがあるときは、登記官が職権で記録を直す仕組みです。
不動産登記規則 第158条の44(職権による氏名等の変更の登記)
法第七十六条の六本文の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
登記官は、法第七十六条の六本文の規定による登記をするときは、登記の目的、登記原因及びその日付並びに登記の年月日を記録しなければならない。
登記官は、法第七十六条の六本文の規定により所有権の登記名義人(検索用情報管理ファイルに記録されている者であって、国内に住所を有するものに限る。以下この款において同じ。)の氏名についての変更の登記をする場合において、第一項第一号の通知により当該所有権の登記名義人のローマ字氏名を確認したときは、職権で、当該ローマ字氏名を登記記録に記録するものとする。
登記官は、法第七十六条の六本文の規定により所有権の登記名義人の氏名についての変更の登記をする場合において、第一項第一号の通知により当該所有権の登記名義人がその一の旧氏を登記記録に記録するよう申し出たことを確認したときは、職権で、当該旧氏を登記記録に記録するものとする。
試験ではこう問われる
- 自然人の職権登記に本人の申出が要るか(要る。通知の発送から1か月以内)
- 法人の職権登記に申出が要るか(要らない。会社法人等番号を手がかりに登記官が確認)
- 検索用情報の内容と申し出る人の範囲(氏名・振り仮名・住所・生年月日・メールアドレスなど。所有権の登記名義人になる申請人のみ)
- 施行日(令和8年4月1日。申請義務化と同日)
この用語が問われた肢
自然人であるAが所有権の登記名義人である甲土地について、国内に住所を有する自然人であるBへの所有権の移転の登記を申請する場合において、検索用情報同時申出をするときは、A及びBの双方の出生の年月日を申請情報の内容として申し出なければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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