処分禁止の仮処分の登記しょぶんきんしのかりしょぶんのとうき
不動産の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分を執行する方法として裁判所書記官が嘱託する登記で、所有権以外の権利の設定などでは保全仮登記とともにされます。嘱託か申請か、主登記か付記か、抹消は誰がするかが肢で突かれます。
処分禁止の仮処分の登記は、不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分を執行する方法として、裁判所書記官の嘱託でされる登記です。所有権の移転の登記請求権なら処分禁止の登記だけをし、所有権以外の権利の保存・設定・変更の登記請求権なら処分禁止の登記とともに保全仮登記をします。登記の後も債務者は処分できますが、仮処分の債権者が本案で勝って登記をするときに、後れる登記は抵触する限度で債権者に対抗できません。抵触する後れる登記は債権者が単独で抹消できる仕組みです。肢では、嘱託か申請か、主登記か付記登記か、どの権利を目的にできるか、処分禁止の登記そのものは誰が消すかが突かれます。
民事保全法 第53条第1項不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

処分禁止の登記は裁判所書記官が嘱託し、当事者は申請できません
処分禁止の仮処分の執行は、仮処分命令を発した裁判所の書記官が登記を嘱託する方法で行います。当事者が申請する登記ではないので、保全の必要が無くなっても当事者が解除を原因に共同で抹消することはできず、仮処分の取消しや執行の取消しを経て書記官が抹消を嘱託します。「当該登記請求権について保全の必要性が消滅したときは,A及びBは,解除を登記原因として当該処分禁止の登記の抹消を申請することができる」という肢は誤りです。債務者が死亡して相続人を債務者とする仮処分命令が出たときも、登記実務では債権者が自ら相続人に代位して相続登記を申請する手続は求められていません。「当該処分禁止の登記の前提として,当該登記請求権の債権者であるCは,Bに代位して相続を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない」という肢は誤りです。
主登記か付記登記かは目的の権利で決まります
所有権を目的とする処分禁止の登記は甲区に主登記でされます。抵当権の順位の譲渡のように所有権以外の権利を目的とするときは、その権利の登記に付記してされます。「抵当権の順位の譲渡についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行としての抵当権の処分禁止の登記は,付記登記によってされる」という肢は正しい肢です。敷地権付き区分建物の敷地である土地だけを目的とすることもでき、「敷地権付き区分建物についての処分禁止の仮処分の登記は,当該敷地権が生じた後に当該仮処分がされた場合であっても,敷地権の目的である土地のみを目的とすることができる」という肢は正しい肢です。
仮登記を目的とする処分禁止の債権者は本登記の承諾者ではありません
所有権移転の仮登記そのものを目的として処分禁止の登記がされていても、仮登記名義人が本登記をすることは仮登記の処分ではありません。処分禁止の効力は本登記の後の所有権に引き継がれるので、本登記に仮処分債権者の承諾は要りません。「当該仮登記を目的としてCを仮処分の債権者とする所有権の移転の仮登記の処分禁止の登記がされている場合において,当該仮登記に基づく本登記を申請するときは,Cの承諾を証する情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。
仮処分の後にされた登記も受理され、却下はされません
処分禁止の登記は債務者の処分を無効にするものではなく、後にされた抵当権の設定や所有権の移転の登記も受理されます。債権者が本案で勝って登記をするとき、後れる抵当権の設定の登記のように債権者の登記の妨げにならないものは、抹消を申請しなくても構いません。「処分禁止の登記に後れる抵当権の設定の登記の抹消を申請しなかったときは,当該所有権の移転の登記の申請は却下される」という肢は誤りです。抹消しなかった抵当権の登記はそのまま残り、債権者はその負担を引き受けます。一方、第三者への所有権の移転の登記のように債権者の登記と両立しないものは、同時に抹消を申請する必要があります。
債権者の登記と後れる登記の抹消がされると職権で消えます
仮処分の債権者が保全していた登記をし、後れる登記の抹消を申請すると、登記官は処分禁止の登記を職権で抹消します。「登記官が,Bの申請に基づきAからBへの所有権の移転の登記及び当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消をするときは,職権で,当該処分禁止の登記を抹消しなければならない」という肢は正しい肢です。保全仮登記とともにした処分禁止の登記は、保全仮登記に基づく本登記をするときに職権で抹消されます。「当該保全仮登記に基づく本登記がされた場合には,当該処分禁止の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢は正しい肢です。
不動産登記法 第111条第1項所有権について民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(同条第二項に規定する保全仮登記(以下「保全仮登記」という。)とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。
試験ではこう問われる
- 処分禁止の登記は誰がするか(裁判所書記官の嘱託。当事者の解除による抹消はできない)
- 抵当権の順位譲渡請求権を保全する処分禁止の登記は主登記か付記登記か(付記登記)
- 仮登記を目的とする処分禁止の債権者の承諾が本登記に要るか(要らない)
- 処分禁止の登記の後にされた登記は却下されるか(されない。後れる登記として抹消の対象になる)
- 処分禁止の登記そのものはどう消えるか(債権者の登記と後れる登記の抹消のときに職権で抹消)
この用語が問われた肢
甲不動産について、Bを仮処分の債権者とする所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記がされた後、当該登記請求権について保全の必要性が消滅したときは、A及びBは、解除を登記原因として当該処分禁止の登記の抹消を申請することができる。
甲不動産について、債務者の表示として「被相続人A相続人B」と記載された仮処分命令の決定書の正本を提供して所有権の移転の登記請求権を保全する処分禁止の登記が嘱託される場合には、当該処分禁止の登記の前提として、当該登記請求権の債権者であるCは、Bに代位して相続を原因とするAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。
敷地権付き区分建物についての処分禁止の仮処分の登記は、当該敷地権が生じた後に当該仮処分がされた場合であっても、敷地権の目的である土地のみを目的とすることができる。
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