仮登記の単独申請(承諾書・仮処分命令)かりとうきのたんどくしんせい
仮登記義務者の承諾があるとき、または裁判所の仮登記を命ずる処分があるときに、仮登記権利者が単独で仮登記を申請できる仕組みです。承諾書の印鑑証明書、決定書の扱い、処分を出す裁判所が肢で突かれます。
仮登記の単独申請は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき、または裁判所の仮登記を命ずる処分があるときに、仮登記の登記権利者が単独で仮登記を申請できる仕組みです。不動産登記法107条1項が共同申請主義の例外として定め、承諾書か決定書の正本を添えれば義務者が申請に加わらなくても仮登記ができます。仮登記は順位を確保するだけで権利そのものを完成させないので、義務者の意思確認を軽くしてよいという考え方です。肢では、承諾書に添える印鑑証明書、決定書と登記原因証明情報の関係、処分を出す裁判所の管轄が突かれます。
不動産登記法 第107条第1項仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び次条に規定する仮登記を命ずる処分があるときは、第六十条の規定にかかわらず、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。

承諾書を添えれば登記権利者が単独で申請できます
仮登記義務者の承諾を証する情報を提供すれば、登記権利者が単独で仮登記を申請できます。書面申請では承諾書に義務者が記名押印し、不動産登記令19条2項により印鑑証明書を添付します。承諾の条項が公正証書に入っているときは、公務員が職務上作成した書面なので印鑑証明書は要りません。「当該登記権利者が登記手続をすることについて仮登記の登記義務者が承諾する旨の条項がある公正証書の正本を申請書に添付したとしても,当該登記義務者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない」という肢は誤りです。承諾書に添えた印鑑証明書は原本還付の対象から外れており、「当該承諾書に添付された登記義務者の印鑑に関する証明書について原本の還付を請求することはできない」という肢は正しい肢です。
仮登記を命ずる処分は不動産の所在地の地方裁判所が出します
仮登記を命ずる処分は、仮登記の登記権利者の申立てにより裁判所が出し、申立人は仮登記の原因となる事実を疎明します。管轄は不動産の所在地を管轄する地方裁判所の専属で、不動産登記法108条3項が定めています。「仮登記の登記義務者の住所地を管轄する地方裁判所は,仮登記の登記権利者の申立てにより,仮登記を命ずる処分をすることができる」という肢は誤りです。却下の決定には即時抗告ができます。
決定書の正本が登記原因証明情報になります
仮登記を命ずる処分に基づいて単独で申請するときは、その決定書の正本を提供し、これが登記原因証明情報を兼ねます。「Bが単独で当該決定に基づいて当該仮登記の申請をするときは,登記原因証明情報として,当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。所有権の登記がない建物について処分に基づく仮登記を申請しても、仮登記は嘱託による処分制限の登記ではないので、登記官は職権で所有権の保存の登記をしません。「所有権の登記のない建物について所有権の移転の仮登記を命ずる裁判所の処分に基づく仮登記が申請されたときは,登記官は,職権で所有権の保存の登記をしなければならない」という肢は誤りです。
共同申請なら登記識別情報は要りません
仮登記を登記権利者と登記義務者が共同で申請するときは、不動産登記法107条2項により22条本文が適用されず、登記義務者の登記識別情報は要りません。仮登記の典型が登記識別情報を提供できない場合であることを踏まえた扱いです。義務者が申請に加わる以上、承諾書も仮登記を命ずる処分も要らず、本人確認は通常の共同申請と同じ方法によります。印鑑証明書の要否は登記義務者の地位と登記の種類で決まり、抵当権の移転の仮登記のように要らない場合もあります。
義務者が破産すれば承諾書による単独申請はできません
承諾の後に仮登記義務者について破産手続開始の決定があり、その旨が登記されると、義務者は財産の管理処分権を失います。破産前の承諾だけを根拠に権利者が単独で仮登記を申請することはできません。「その承諾後,Aについて破産手続開始の決定がされ,その旨が登記された場合には,Bは,当該承諾を証する情報を提供して,当該承諾の日を登記原因の日付とする根抵当権の設定の仮登記を単独で申請することができる」という肢は誤りです。
不動産登記法 第108条(仮登記を命ずる処分)
裁判所は、仮登記の登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができる。
前項の申立てをするときは、仮登記の原因となる事実を疎明しなければならない。
第一項の申立てに係る事件は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する。
第一項の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
非訟事件手続法第二条及び第二編(同法第五条、第六条、第七条第二項、第四十条、第五十九条、第六十六条第一項及び第二項並びに第七十二条を除く。)の規定は、前項の即時抗告について準用する。
試験ではこう問われる
- 仮登記義務者の承諾書で登記権利者が単独申請できるか(できる。承諾書に印鑑証明書を添える)
- 公正証書に承諾条項があるときも印鑑証明書が要るか(要らない)
- 仮登記を命ずる処分の管轄はどこか(不動産の所在地の地方裁判所の専属)
- 処分による仮登記の登記原因証明情報は何か(決定書の正本)
- 義務者の破産手続開始後の承諾書による単独申請と、共同申請の登記識別情報(前者はできない。後者は要らない)
この用語が問われた肢
売買予約を原因とする所有権の移転請求権の仮登記を申請する場合において、登記権利者が、登記義務者の承諾書を添付して単独で当該仮登記の申請をしたときは、当該承諾書に添付された登記義務者の印鑑に関する証明書について原本の還付を請求することはできない。
Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、AからBへの所有権の移転の仮登記を命ずる処分の決定がされた場合において、Bが単独で当該決定に基づいて当該仮登記の申請をするときは、登記原因証明情報として、当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本を提供しなければならない。
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