仮処分に後れる登記の抹消かりしょぶんにおくれるとうきのまっしょう
処分禁止の登記の後にされた登記を、仮処分の債権者が自分の登記と同時に単独で抹消する手続です。同時申請の要件、添付情報、一括申請の可否、処分禁止の登記そのものの消え方が肢で突かれます。
仮処分に後れる登記の抹消は、処分禁止の登記の後にされた登記を、仮処分の債権者が保全していた登記請求権を実現する登記を申請するときに、同時に単独で抹消する手続です。民事保全法58条が後れる登記の権利の取得を債権者に対抗できないものとし、不動産登記法111条が単独申請の根拠を定めています。抹消の前には後れる登記の名義人に通知し、抹消が済むと登記官が処分禁止の登記を職権で抹消します。肢では、債権者の登記と同時でなければならないか、添付情報に何が要るか、複数の抹消を一括できるか、処分禁止の登記そのものは誰が消すかが突かれます。
不動産登記法 第111条第1項所有権について民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(同条第二項に規定する保全仮登記(以下「保全仮登記」という。)とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。

債権者の登記と同時に申請するときに限って単独で抹消できます
後れる登記の抹消を単独で申請できるのは、仮処分の債権者が債務者を登記義務者とする所有権の登記を申請する場合です。債権者の登記が判決による単独申請でも債務者との共同申請でも構いませんが、同時に申請することが要ります。所有権以外の権利についても、不動産登記法111条2項により、債務者を登記義務者とするその権利の移転や消滅の登記を申請する場合に同じ扱いが準用されます。「債権者及び債務者が甲土地についての所有権の移転の登記を共同して申請する場合には,申請と同時にするときに限り,債権者は,処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。債権者が申請するのが仮登記のときは、111条1項の括弧書きで除かれているので使えません。「A及びBが甲土地について所有権の移転請求権の保全の仮登記を申請する場合には,Bは,当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。
登記原因証明情報は要らず、通知したことを証する情報を添えます
後れる登記の抹消の申請には、不動産登記令7条3項3号により登記原因証明情報が要りません。処分禁止の登記と債権者の登記が登記記録にあれば、抹消の原因は登記官に分かるからです。「当該抹消の登記の申請に際して登記原因証明情報の提供を要しない」という肢は正しい肢で、「登記原因証明情報として仮処分の決定書の正本を提供しなければならない」という肢は誤りです。代わりに、民事保全法59条が求める事前の通知をしたことを証する情報を提供します。「処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請するときは,その旨をあらかじめ当該登記の登記名義人に対して通知したことを証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。通知は登記記録上の住所に発すれば足り、発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなされます。
抹消できるのは債権者の登記と抵触する限度に限られます
民事保全法58条1項が対抗できないとするのは、債権者の登記に係る権利の取得や消滅と抵触する限度です。所有権の一部を共有名義にする更正の登記のように、後れる抵当権と一部しか抵触しないときは、その抵当権を丸ごと抹消することはできません。「A及びBの共有名義とする所有権の更正の登記の申請をするときは,Bは同時に,当該仮処分の登記に後れるCの抵当権の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。建物収去土地明渡請求権を保全する建物の処分禁止の仮処分は、登記請求権を保全するものではないので、後れる登記の抹消の仕組みが働きません。「Bは,Aに対して甲建物を収去し,土地の明渡しを命ずる旨の判決書の正本及び当該判決の確定証明書を提供し,単独で当該仮処分の登記に後れるCのための登記の抹消を申請することはできない」という肢は正しい肢です。
目的や名義人が違う後れる登記の抹消は別々の申請情報です
後れる登記が所有権の移転と抵当権の設定のように登記の目的も登記名義人も違うものであれば、抹消は一つずつ別の申請情報で申請します。「Bが単独で申請することができる当該仮処分の登記に後れるC及びDのためにされた各登記の抹消は,一の申請情報により申請することができない」という肢は正しい肢です。債権者の所有権の移転の登記と各抹消の申請は、同時に提出して連件として処理されます。
処分禁止の登記そのものは職権で抹消されます
債権者の登記と後れる登記の抹消がされると、処分禁止の登記は役目を終えるので、登記官が職権で抹消します。「AからBへの所有権の移転の登記及び当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消の登記を申請する場合には,Bは,当該処分禁止の登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。「仮処分に後れる登記が抹消される場合には,当該処分禁止の登記は,登記官の職権により,抹消される」という肢は正しい肢です。
民事保全法 第58条第2項前項の場合においては、第五十三条第一項の仮処分の債権者(同条第二項の仮処分の債権者を除く。)は、同条第一項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。
試験ではこう問われる
- 後れる登記の抹消を債権者の登記と別の日に単独で申請できるか(できない。同時に申請)
- 債権者の登記が仮登記のときに後れる登記を抹消できるか(できない)
- 後れる登記の抹消に登記原因証明情報が要るか(要らない。通知したことを証する情報を添える)
- 所有権移転と抵当権設定の後れる登記の抹消を一の申請情報でできるか(できない)
- 処分禁止の登記そのものは誰が消すか(登記官の職権)
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