保全仮登記ほぜんかりとうき
所有権以外の権利の保存・設定・変更の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分を執行するとき、処分禁止の登記とともにされる仮処分による仮登記です。本登記の方法、更正の可否、後れる登記の抹消ができる場合が肢で突かれます。
保全仮登記は、所有権以外の権利の保存・設定・変更の登記請求権を保全する処分禁止の仮処分を執行するとき、処分禁止の登記とともにされる仮処分による仮登記です。抵当権や地上権の設定を求める債権者は、処分禁止の登記だけでは自分が取得する権利の順位を確保できないので、仮登記で順位を押さえておきます。本案で勝ったときは保全仮登記に基づく本登記をし、その順位は保全仮登記の順位によるというのが不動産登記法112条です。肢では、本登記の方法、本登記の前提として保全仮登記の更正ができるか、後れる登記の抹消ができる権利の種類が突かれます。
民事保全法 第53条第2項不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。

保全仮登記が付くのは所有権以外の権利の保存・設定・変更だけです
所有権の移転や抹消の登記請求権を保全する仮処分は、処分禁止の登記だけで執行します。所有権以外の権利でも、移転や抹消の登記請求権なら処分禁止の登記だけです。保全仮登記が付くのは、抵当権や地上権の設定、根抵当権の極度額の増額の変更のように、所有権以外の権利を新しく生じさせたり内容を変えたりする登記請求権に限られます。債権者が取得する権利の順位を仮登記で先取りしておくための仕組みだからです。
本登記は保全仮登記に基づく本登記の方法でします
仮処分の債権者が本案で勝って登記をするには、保全仮登記に基づく本登記の方法によります。本登記の順位は保全仮登記の順位によるので、処分禁止の登記の後にされた抵当権より先順位の抵当権として登記されます。本登記の申請には本案の判決などの債務名義を使い、登記原因証明情報としてその正本を提供します。
本案の内容が保全仮登記と違っても当事者は更正できません
保全仮登記は裁判所書記官の嘱託でされた登記なので、本案の債務名義と内容が食い違っていても、当事者が共同で更正の登記を申請することはできません。「当該保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義においてその極度額が1000 万円とされたときは,AとBは,共同して,当該保全仮登記の極度額を1000 万円とする更正の登記を申請することができる」という肢は誤りです。債務者の表示が違うときも同じで、「当該保全仮登記の本登記をする前提として,A及びBは共同して当該保全仮登記の更正の登記を申請することができない」という肢は正しい肢です。権利の表示が符合しないときは、民事保全法60条により、債権者の申立てで仮処分命令を発した裁判所が命令を更正し、更正決定が確定すると裁判所書記官が保全仮登記の更正を嘱託します。
後れる登記の抹消は使用収益権の本登記のときだけできます
保全仮登記の本登記をするとき、債権者が単独で抹消できる後れる登記は、不動産登記法113条が定める使用収益権の場合に限られます。債権者の権利が地上権や賃借権のような使用収益をする権利で、後れる登記も使用収益をする権利かそれを目的とする権利のときに抹消できます。「不動産の使用及び収益をしない旨の定めがない質権の設定の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行としての処分禁止の登記及び保全仮登記がされている場合には,当該保全仮登記に係る仮処分の債権者は,当該保全仮登記に基づく本登記の申請と同時に,当該処分禁止の登記に後れる地上権の設定の登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。後れる登記が不動産そのものを目的とする質権のような担保権であれば、使用収益権の取得の登記ではないので抹消の対象になりません。「当該保全仮登記に係る仮処分の債権者は,当該申請と同時に,単独で当該保全仮登記に係る仮処分の登記に後れる質権の設定の登記の抹消を申請することはできない」という肢は正しい肢です。後れる地上権を目的とする抵当権のように、使用収益権を目的とする権利の登記は対象に入ります。
職権で消えるのは処分禁止の登記で、後れる登記は申請で消します
保全仮登記に基づく本登記をするとき、登記官が職権で抹消するのは保全仮登記とともにした処分禁止の登記です。後れる登記は債権者が単独で申請して抹消するもので、登記官が職権で消すのではありません。「当該土地に当該処分禁止の登記に後れる賃借権の設定の登記がされているときは,登記官は,職権で当該賃借権の登記を抹消しなければならない」という肢は誤りです。
不動産登記法 第113条(保全仮登記に係る仮処分の登記に後れる登記の抹消)
不動産の使用又は収益をする権利について保全仮登記がされた後、当該保全仮登記に係る仮処分の債権者が本登記を申請する場合においては、当該債権者は、所有権以外の不動産の使用若しくは収益をする権利又は当該権利を目的とする権利に関する登記であって当該保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れるものの抹消を単独で申請することができる。
試験ではこう問われる
- 所有権移転請求権を保全する仮処分に保全仮登記が付くか(付かない。所有権以外の保存・設定・変更だけ)
- 本案の債務名義と内容が違う保全仮登記を当事者が更正できるか(できない。仮処分命令の更正と書記官の嘱託による)
- 抵当権の保全仮登記の本登記で後れる登記を抹消できるか(できない。使用収益権の本登記のときだけ)
- 地上権の保全仮登記の本登記で後れる質権を抹消できるか(できない。不動産自体を目的とする担保権は対象外)
- 保全仮登記の本登記で後れる賃借権は職権で抹消されるか(されない。債権者の単独申請)
この用語が問われた肢
甲建物について,Bの抵当権の設定の登記請求権を保全するため,処分禁止の仮処分の登記とともに保全仮登記がされた場合において,当該保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の判決書の正本に記載の債務者の表示と,当該保全仮登記の登記記録上の債務者の表示とが異なるときは,当該保全仮登記の本登記をする前提として,A及びBは共同して当該保全仮登記の更正の登記を申請することができない。
地上権の設定の保全仮登記に基づく本登記を申請する場合には、当該保全仮登記に係る仮処分の債権者は、当該申請と同時に、単独で当該保全仮登記に係る仮処分の登記に後れる質権の設定の登記の抹消を申請することはできない。
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