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仮処分債権者による単独抹消かりしょぶんさいけんしゃによるたんどくまっしょう

不動産登記 第9章 仮登記と処分制限 過去問で16肢

処分禁止の仮処分の債権者が、自分の登記と抵触する後れる登記を相手の関与なしに抹消できる単独申請の例外です。何が抹消できて何ができないか、通知の相手は誰かが肢で突かれます。

仮処分債権者による単独抹消は、処分禁止の仮処分の債権者が保全していた登記請求権を実現する登記をするときに、処分禁止の登記に後れる抵触する登記を単独で抹消できる例外です。抹消される登記の名義人は申請に関与しません。不動産登記法111条が根拠で、共同申請主義の例外としては判決による登記や相続による登記と並ぶ定番です。抹消できる範囲は民事保全法58条の「抵触する限度」で区切られ、仮処分より先に登記された権利やその権利に付随する登記は消せません。肢では、どの登記が抹消の対象になるか、仮処分をしていなかった場合との違い、通知の相手は誰かが突かれます。

不動産登記法 第111条第1項

所有権について民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(同条第二項に規定する保全仮登記(以下「保全仮登記」という。)とともにしたものを除く。以下この条において同じ。)がされた後、当該処分禁止の登記に係る仮処分の債権者が当該仮処分の債務者を登記義務者とする所有権の登記(仮登記を除く。)を申請する場合においては、当該債権者は、当該処分禁止の登記に後れる登記の抹消を単独で申請することができる。

債権者が一人で窓口に立ち、勝訴の書面と郵便の受領証を差し出している。職員が帳簿の禁止の印より下の別の人物の行を消し、その席は空いている
仮処分債権者は処分禁止に後れて自分の登記と抵触する登記を単独で抹消できます
抵触する限度だけ先順位の権利に付随する登記は消せない通知は抹消される登記の名義人と代位者に

抹消できるのは処分禁止の後にされた抵触する登記です

処分禁止の登記の後にされた所有権の移転、抵当権の設定、仮差押えの登記は、債権者の所有権の取得と抵触するので抹消できます。和解調書を提供して「Aの所有権の保存の登記の抹消の申請と同時にCの仮差押登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。処分禁止より前に設定された抵当権は債権者に対抗できるので、その抵当権の実行による差押えの登記が処分禁止の後にされていても抹消できません。「処分禁止の登記がされる前に設定の登記がされた抵当権が実行され,その差押えの登記が処分禁止の登記に後れてされているときは,当該差押えの登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。先順位の根抵当権の債権の範囲の変更の登記も、先順位の権利に付随する登記なので抹消の対象になりません。「Bは,Bへの所有権の移転の登記の申請と同時に当該根抵当権の変更の登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。

一部しか抵触しないときは全部の抹消はできません

債権者が本案で得た権利が所有権の持分の一部なら、後れる第三者の所有権の移転の登記と抵触するのはその持分の限度です。「AからBへの所有権の持分の2分の1の移転の登記の手続を命ずる確定判決を得た場合には,Bは,当該持分の移転の登記の申請と同時にAからCへの所有権の移転の登記の抹消を単独で申請することができる」という肢は誤りです。登記実務では、抵触する持分の限度でCの登記を一部抹消する更正の登記によります。

仮処分をしていなければ判決があっても第三者の登記は消せません

売買による所有権移転の登記手続を命ずる判決を仮処分なしで得ても、判決の後に第三者へ所有権が移転して登記されれば、二重譲渡の第三者にはその判決の効力が及びません。「当該判決に承継執行文の付与を受けてCからBへの所有権の移転の登記を単独で申請することができる」という肢は誤りです。仮処分をしておけば、第三者の登記は処分禁止に後れる登記として単独で抹消でき、債務者を登記義務者とする登記を判決で実現できます。所有権に基づく抹消請求のように承継人に判決の効力が及ぶ場面もありますが、二重譲渡の場面では仮処分の登記が本案の判決を生かす備えになります。

単独申請の根拠は判決・相続・収用の各規定と区別します

仮処分債権者の単独抹消は111条が根拠で、判決による登記の63条1項とは別の規定です。相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は、令和5年4月1日施行の63条3項により受遺者が単独で申請できます。「Bは,甲土地について,当該遺言に基づき,遺贈を原因とする所有権の移転の登記を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。収用による所有権の移転の登記は118条により起業者が単独で申請でき、「株式会社Bは,収用を登記原因とする所有権の移転の登記を単独で申請することができる」という肢は正しい肢です。共同相続人の全員から相続分の譲渡を受けた相続人は、相続を原因として単独で申請でき、「Dは,甲土地について相続を原因とするAからDへの所有権の移転の登記を単独で申請することができる」という肢も正しい肢です。

通知は抹消される登記の名義人と代位者にします

後れる登記を抹消する前に、民事保全法59条の通知を抹消される登記の権利者に発します。通知の相手は抹消される登記の名義人で、仮処分の債務者には要りません。「その旨をA及びCに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない」という肢は誤りです。後れる登記が債権者の代位によってされていたときは、登記名義人と代位者の双方に通知し、「その旨をB及びDに対しあらかじめ通知したことを証する情報を提供しなければならない」という肢は正しい肢です。

民事保全法 第59条

(登記の抹消の通知)
仮処分の債権者が前条第二項又は第四項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。
前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から一週間を経過した時に到達したものとみなす。

試験ではこう問われる

  1. 処分禁止より前の抵当権の実行による差押えを抹消できるか(できない)
  2. 先順位の根抵当権の債権の範囲の変更の登記を抹消できるか(できない)
  3. 持分2分の1の判決で第三者の所有権移転の登記を全部抹消できるか(できない。抵触する限度)
  4. 仮処分なしの判決で承継執行文により第三者の登記を消せるか(消せない)
  5. 抹消前の通知の相手は誰か(抹消される登記の名義人。代位でされた登記なら代位者にも)
不動産登記を肢別で解く

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