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退任たいにん

商業登記 第5章 役員の変更 過去問で14肢

任期満了・辞任・解任・死亡・資格喪失などで役員の地位を失うことの総称で、退任を証する書面を添付して変更の登記をします。退任事由ごとの登記原因の書き方と添付書面、員数を欠いても登記できる事由が肢で突かれます。

退任は、任期満了・辞任・解任・死亡・欠格事由の発生などで役員がその地位を失うことです。登記すべき事項には退任の事由を原因として書き、商業登記法54条4項により退任を証する書面を添付します。会社法346条1項により、任期満了と辞任による退任で員数を欠くときは後任が就任するまで権利義務が続き、解任・死亡・欠格事由による退任には権利義務が生じません。肢で突かれるのは、退任事由ごとの原因の書き方と添付書面、そして員数を欠いても登記できる事由の区別です。

商業登記法 第54条第4項

第一項又は第二項に規定する者の退任による変更の登記の申請書には、これを証する書面を添付しなければならない。

会議室の出口から四人がそれぞれ別の扉(砂時計・届書・遺影・判決書)を通って出ていく
退任は任期満了・辞任・解任・死亡・資格喪失で生じ、事由ごとに登記原因と添付書面が変わります
退任を証する書面破産は資格喪失ではなく退任解任・死亡・欠格事由は員数を欠いても登記可

退任事由によって登記原因と添付書面が変わります

任期満了なら原因は「退任」で、添付書面は定款と定時株主総会議事録です。辞任なら辞任届、死亡なら戸籍事項証明書や死亡届、相続人の作成した死亡届などの死亡を証する書面を添付します。欠格事由の発生による退任は原因を「資格喪失」と書き、判決書の謄本など欠格事由を示す書面を添付します。後見開始の審判を受けた取締役は民法653条の委任の終了により退任し、「取締役が成年被後見人となった場合における当該取締役の退任の登記の申請書には,後見開始の審判書の謄本及びその確定証明書を添付し,又は後見に関する登記に係る登記事項証明書を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。令和3年3月1日施行の改正で成年被後見人は取締役の欠格事由から外れましたが、委任の終了事由として退任すること自体は変わりません。

破産手続開始の決定は資格喪失ではなく委任の終了です

取締役が破産手続開始の決定を受けても、会社法331条1項の欠格事由には当たりません。民法653条により委任が終了して退任するので、登記原因は「資格喪失」ではなく「退任」です。「取締役が破産手続開始の決定を受けた場合には、登記原因を「資格喪失」として、当該取締役の退任の登記を申請しなければならない」という肢は誤りです。破産手続開始の決定後に改めて選任すれば、同じ人が取締役に就任できます。退任を証する書面は破産手続開始の決定書の謄本などです。

解任・死亡・欠格事由による退任は員数を欠いても登記できます

会社法346条1項の権利義務は任期満了と辞任にだけ生じます。「ある取締役に欠格事由が生じた場合でも,これにより定款で定めた取締役の員数に満たないこととなるときは,その後任者が選任されるまで,当該取締役の退任による変更の登記の申請は,することができない」という肢は誤りで、欠格事由による退任は員数を欠いてもそのまま登記できます。「株主総会で取締役のうち 1 名を解任する決議がされた場合には、定款で定めた取締役の員数に満たないこととなるときであっても、当該取締役の解任による変更の登記を申請することができる」という肢は正しい肢です。員数を欠いたまま放置すれば裁判所の一時役員の選任や過料の対象になりますが、登記自体は受理されます。

定款変更で任期が満了する退任も申請が要ります

監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めを廃止すると、会社法336条4項3号により監査役の任期はその時に満了します。「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めのある監査役を置く清算株式会社において、当該定めを廃止した場合には、当該監査役の退任による変更の登記を申請しなければならない」という肢は正しい肢です。清算株式会社には会社法480条2項により336条が適用されません。代わりに480条1項2号が会計限定の定めの廃止による退任を定めているので、定めの廃止と監査役の退任の登記を併せて申請します。会計監査人設置会社が解散したときは、会計監査人設置会社の定めと会計監査人の登記は登記官が職権で抹消するので、申請は要りません。

唯一の取締役が死亡しても一時取締役の登記は申請できません

唯一の取締役が死亡すると会社法346条2項により裁判所が一時取締役の職務を行うべき者を選任できますが、その登記は会社法937条1項2号により裁判所書記官の嘱託でされます。「唯一の取締役が死亡により退任した場合には、一時取締役の職務を行うべき者を選任した裁判所の選任決定書を添付して、当該一時取締役の職務を行うべき者の就任の登記を申請することができる」という肢は誤りです。会社が申請するのは死亡による退任の登記で、添付書面は死亡を証する書面です。

会社法 第346条第1項

役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。

試験ではこう問われる

  1. 破産手続開始の決定や後見開始の審判があった取締役の登記原因と添付書面を問う肢
  2. 欠格事由・解任・死亡で員数を欠くときに退任の登記ができるかを、任期満了・辞任と混ぜて問う肢
  3. 会計限定の廃止や譲渡制限の廃止で任期が満了した役員の退任の登記が要るかを問う肢
  4. 一時取締役の登記を会社が申請できるか、嘱託かを問う肢

この用語が問われた肢

R8 問31 エ誤り

取締役が破産手続開始の決定を受けた場合には、登記原因を「資格喪失」として、当該取締役の退任の登記を申請しなければならない。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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