取得条項付株式の取得と登記しゅとくじょうこうつきかぶしきのしゅとくととうき
一定の事由が生じたことを条件に会社が株式を取得する取得条項付株式について、事由の発生から取得の効力、株式を交付したときの登記までの流れです。取得請求権付株式との登記期間の違いと、添付書面の組合せが肢で突かれます。
取得条項付株式の取得は、株式の内容として定めた一定の事由が生じたことを条件に、会社が株主の意思によらずにその株式を取得することです。会社法168条から170条が、会社が取得の日を定める型と、取得する株式を会社が選ぶ型の手続を定め、事由が生じた日に会社が株式を取得します。取得と引換えに他の種類の株式や新株予約権を交付したときは、発行済株式の種類ごとの数や新株予約権の登記に変更が生じ、2週間以内に変更の登記を申請します。肢は、取得請求権付株式との違いと、添付書面の組合せを突く形です。
会社法 第170条(効力の発生等)
株式会社は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた日(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、第一号に掲げる日又は第二号に掲げる日のいずれか遅い日。次項及び第五項において同じ。)に、取得条項付株式(同条第二項第三号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定したもの。次項において同じ。)を取得する。
一 第百七条第二項第三号イの事由が生じた日
二 前条第三項の規定による通知の日又は同条第四項の公告の日から二週間を経過した日
次の各号に掲げる場合には、取得条項付株式の株主(当該株式会社を除く。)は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた日に、同号(種類株式発行会社にあっては、第百八条第二項第六号)に定める事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。
一 第百七条第二項第三号ニに掲げる事項についての定めがある場合 同号ニの社債の社債権者
二 第百七条第二項第三号ホに掲げる事項についての定めがある場合 同号ホの新株予約権の新株予約権者
三 第百七条第二項第三号ヘに掲げる事項についての定めがある場合 同号ヘの新株予約権付社債についての社債の社債権者及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権の新株予約権者
四 第百八条第二項第六号ロに掲げる事項についての定めがある場合 同号ロの他の株式の株主
株式会社は、第百七条第二項第三号イの事由が生じた後、遅滞なく、取得条項付株式の株主及びその登録株式質権者(同号ハに掲げる事項についての定めがある場合にあっては、前条第一項の規定により決定した取得条項付株式の株主及びその登録株式質権者)に対し、当該事由が生じた旨を通知しなければならない。ただし、第百六十八条第二項の規定による通知又は同条第三項の公告をしたときは、この限りでない。
前項本文の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
前各項の規定は、取得条項付株式を取得するのと引換えに第百七条第二項第三号ニからトまでに規定する財産を交付する場合において、これらの財産の帳簿価額が同号イの事由が生じた日における第四百六十一条第二項の分配可能額を超えているときは、適用しない。

取得の日を会社が定める型は2週間前までに通知します
取得の事由として会社が別に定める日の到来を定めてある場合は、その日を株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議で定め、定款で別段の定めも可能です。日を定めたときは、取得条項付株式の株主と登録株式質権者にその日の2週間前までに通知しなければならず、通知は公告で代えられるのが仕組みです。取得する株式の一部を会社が選ぶ型では、同じ機関の決議で対象の株式を決め、その株主と登録株式質権者に直ちに取得する旨を通知しなければなりません。どちらも通知をしたことを証する書面は登記の添付書面ではなく、日や対象を決めた議事録が事由の発生を証する書面の一部という位置づけです。
取得は事由が生じた日に効力を生じ、分配可能額の枠があります
会社は、定款で定めた事由が生じた日に取得条項付株式を取得します。一部を選んで取得する型では、通知か公告から2週間を経過した日と事由の日の遅い方に取得し、株主はその日に対価として定められた株式や新株予約権の株主または新株予約権者になります。事由が生じた後は遅滞なく株主と登録株式質権者に事由が生じた旨を通知しますが、取得の日を事前に通知または公告していれば省けます。対価が社債、新株予約権、金銭などの株式以外の財産で、その帳簿価額が事由の生じた日の分配可能額を超えるときは、取得の効力は生じません。対価が会社の株式だけなら財産の流出がないので、分配可能額の枠はかかりません。
登記は2週間以内で、事由の発生と株券提出公告の書面を添付します
取得と引換えに株式を交付したときの変更の登記は、取得の日から2週間以内に申請します。取得請求権付株式の取得請求のように毎月末日からまとめて申請する特則はなく、「取得請求権付株式の取得と引換えにする当該他の種類の株式の発行による変更の登記の申請は、当該他の種類の株式の発行の日から 2 週間以内にしなければならない」という肢が誤りとされるのは、請求による取得の起算点が月末だからです。申請書には取得の事由の発生を証する書面と、株券発行会社なら株券提出公告をしたことを証する書面または株式の全部について株券を発行していないことを証する書面を添付します。対価が新株予約権のときは、分配可能額が存在することを証する書面も要ります。
取得条項を後から付けるには株主全員の同意が要ります
発行後の株式の内容に取得条項を設け、または取得条項の内容を変更する定款変更には、その株式の株主全員の同意が要ります。種類株式の一つに設けるときはその種類の株主全員で、「A種種類株式の内容を変更して取得条項付株式とした場合には,株式の内容の変更の登記の申請書には,A種種類株式を有する株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。取得条項を廃止する変更は全員の同意ではなく通常の定款変更の特別決議で足り、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあればその種類株主総会の決議も要る点が対照的です。設定の登記は株式の内容の変更として申請し、株主総会議事録と株主リスト、全員の同意書を添付します。
商業登記法 第59条(取得条項付株式等の取得と引換えにする株式の交付による変更の登記)
取得条項付株式(株式の内容として会社法第百八条第二項第六号ロに掲げる事項についての定めがあるものに限る。)の取得と引換えにする株式の交付による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 会社法第百七条第二項第三号イの事由の発生を証する書面
二 株券発行会社にあつては、会社法第二百十九条第一項本文の規定による公告をしたことを証する書面又は当該株式の全部について株券を発行していないことを証する書面
取得条項付新株予約権(新株予約権の内容として会社法第二百三十六条第一項第七号ニに掲げる事項についての定めがあるものに限る。)の取得と引換えにする株式の交付による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 会社法第二百三十六条第一項第七号イの事由の発生を証する書面
二 会社法第二百九十三条第一項の規定による公告をしたことを証する書面又は同項に規定する新株予約権証券を発行していないことを証する書面
試験ではこう問われる
- 会社が取得の日を定める型で株主への通知はいつまでか(取得の日の2週間前まで。公告で代えられる)
- 対価が株式以外で分配可能額を超えるとき取得の効力は生じるか(生じない)
- 取得と引換えの株式交付の登記期間はいつからか(取得の日から2週間以内。取得請求権付株式のような月末の特則はない)
- 取得条項を後から設けるときの要件は何か(株主全員の同意)
この用語が問われた肢
ある種類の株式について株式の内容を取得条項付株式とする定款変更による株式の内容の変更の登記を申請するときは、当該登記の申請書には、当該種類株主全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。
会社が取得請求権付株式の株主から請求を受け当該取得請求権付株式の取得と引換えに当該会社の他の種類の株式を発行した場合には、取得請求権付株式の取得と引換えにする当該他の種類の株式の発行による変更の登記の申請は、当該他の種類の株式の発行の日から 2 週間以内にしなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
この用語で問われた肢を、解説つきでそのまま解けます。無料プランは月100問まで。