新株予約権の行使と変更登記(月末まとめ)しんかぶよやくけんのこうし
新株予約権者が行使期間内に行使して出資をし、株式の交付を受けることと、それに伴う発行済株式の総数・資本金の額・新株予約権の数の変更の登記です。登記期間の起算と添付書面の要否で肢が作られます。
新株予約権の行使は、新株予約権者が行使期間内に会社に行使する旨を伝え、金銭を出資の目的とするときは行使価額の全額を払い込んで、株式の交付を受けることです。金銭以外の財産を給付する定めや、報酬として発行された新株予約権で行使時の出資を要しない定めもあります。行使した日に株主になり、新株を発行したときは発行済株式の総数と資本金の額が増え、行使された新株予約権の数が減るので、変更の登記を申請します。行使は期間中に何度も散発的に起きるため、会社法915条3項は毎月末日現在でまとめて登記することを認めています。肢で突かれるのは、登記期間の起算日と、何を添付するかです。
会社法 第915条第3項第一項の規定にかかわらず、次に掲げる事由による変更の登記は、毎月末日現在により、当該末日から二週間以内にすれば足りる。
一 新株予約権の行使
二 第百六十六条第一項の規定による請求(株式の内容として第百七条第二項第二号ハ若しくはニ又は第百八条第二項第五号ロに掲げる事項についての定めがある場合に限る。)

行使した日に株主になり、登記は毎月末日現在でまとめられます
新株予約権を行使した新株予約権者は、行使した日に目的である株式の株主になります。変更の登記は本来2週間以内ですが、新株予約権の行使による変更の登記は、毎月末日現在により、その末日から2週間以内にすれば足ります。その月に何度行使があっても、月末の数字でまとめて1件の申請にできる仕組みです。月の途中で行使のたびに申請してもよく、月末まで待つことが義務ではありません。月末まとめで申請するときの変更年月日は、行使の日ではなく月末の日付です。
登記するのは発行済株式の総数、資本金の額、新株予約権の数です
新株を発行して交付したときは、発行済株式の総数と資本金の額が増え、行使された分の新株予約権の数と目的である株式の数が減ります。資本金に計上する額は募集事項で定めた236条1項5号の事項に従い、会社計算規則が定める資本金等増加限度額の2分の1までは資本準備金にできます。自己株式のみを交付したときは、発行済株式の総数も資本金の額も変わりません。登記するのは新株予約権の減少だけです。全部が行使されたときは、その新株予約権の登記を抹消する記号が記録されます。
添付書面は行使を証する書面と払込みを証する書面です
商業登記法57条は、新株予約権の行使があったことを証する書面と、金銭を出資の目的とするときは払込みがあったことを証する書面を列挙します。払込みの証明は出資があったことの証明なので、自己株式のみを交付したときも省けません。「新株予約権の行使に際してする出資の目的を金銭とする場合には,当該新株予約権の行使により自己株式のみが交付されるときであっても,新株予約権の行使による変更の登記の申請書には,その行使に係る新株予約権についての払込みがあったことを証する書面を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。金銭以外の財産を出資の目的とするときは、検査役の調査報告書や弁護士等の証明書など現物出資の書面を添付します。資本金の額が増えるときは、資本金の額の計上に関する証明書も欠かせません。
資本金に計上しない額を株主総会で定めた会社は議事録も添付します
公開会社でない会社では、募集事項は株主総会の決議で定め、行使により増加する資本金のうち計上しない額もそこで定めます。その定めは行使による資本金の額の計算の根拠になるので、行使の登記にその株主総会議事録を添付します。「募集新株予約権の内容として、当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における資本金の額として計上しない額を定めていたときは、当該新株予約権の行使による変更の登記の申請書には、当該株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。公開会社で取締役会が定めたときは、取締役会議事録がこれに当たります。
発行可能株式総数の枠を使うのは行使期間が始まった新株予約権です
新株予約権者が行使で取得する株式の数は、発行可能株式総数から自己株式を除いた発行済株式の総数を引いた数を超えられません。ただし行使期間の初日が到来していない新株予約権は、この計算から除かれます。「当該募集株式の発行後の発行済株式総数に新株予約権の目的である株式の数を加えた数が当該会社の発行可能株式総数を超えるときは,当該会社の発行可能株式総数の変更の登記をしなければ,当該募集株式の発行による変更の登記を申請することはできない」という肢は、行使期間の初日が到来する前の募集株式の発行についてのもので、誤りです。登録免許税は増加した資本金の額の1000分の7で、3万円に満たなければ3万円です。自己株式のみの交付で資本金が増えないときは、登記事項の変更として3万円です。
商業登記法 第57条(新株予約権の行使による変更の登記)
新株予約権の行使による変更の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。
一 新株予約権の行使があつたことを証する書面
二 金銭を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、会社法第二百八十一条第一項の規定による払込みがあつたことを証する書面
三 金銭以外の財産を新株予約権の行使に際してする出資の目的とするときは、次に掲げる書面
イ 検査役が選任されたときは、検査役の調査報告を記載した書面及びその附属書類
ロ 会社法第二百八十四条第九項第三号に掲げる場合には、有価証券の市場価格を証する書面
ハ 会社法第二百八十四条第九項第四号に掲げる場合には、同号に規定する証明を記載した書面及びその附属書類
ニ 会社法第二百八十四条第九項第五号に掲げる場合には、同号の金銭債権について記載された会計帳簿
ホ 会社法第二百八十一条第二項後段に規定する場合には、同項後段に規定する差額に相当する金銭の払込みがあつたことを証する書面
四 検査役の報告に関する裁判があつたときは、その謄本
試験ではこう問われる
- 新株予約権の行使による変更の登記の登記期間はいつからか(毎月末日現在で末日から2週間で足りる)
- 自己株式のみを交付したときも払込みを証する書面が要るか(要る)
- 行使により資本金に計上しない額を定めた株主総会議事録は要るか(要る)
- 行使期間の初日が来ていない新株予約権は発行可能株式総数の計算に入るか(入らない)
- 登録免許税は何を課税標準にするか(増加した資本金の額の1000分の7、最低3万円)
この用語が問われた肢
会社法上の公開会社でない株式会社が、株主総会の決議により、募集新株予約権の内容として、当該新株予約権の行使により株式を発行する場合における資本金の額として計上しない額を定めていたときは、当該新株予約権の行使による変更の登記の申請書には、当該株主総会の議事録を添付しなければならない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。
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