自己株式の消却じこかぶしきのしょうきゃく
会社が保有する自己株式を消滅させる手続で、発行済株式の総数が減り、資本金の額と発行可能株式総数は変わりません。決定機関と、取得・処分との登記上の違いが肢で突かれます。
自己株式の消却は、会社が保有している自己株式を消滅させることで、会社法178条が定めます。消却する自己株式の数、種類株式発行会社なら種類と種類ごとの数を定め、取締役会設置会社では取締役会の決議によります。消却すると発行済株式の総数が減りますが、資本金の額は減らず、発行可能株式総数も定款を変えない限りそのままです。自己株式の取得や処分とは登記上の現れ方が違うので、肢は三つの場面を並べて、どれで何が変わるかを問います。
会社法 第178条株式会社は、自己株式を消却することができる。この場合においては、消却する自己株式の数(種類株式発行会社にあっては、自己株式の種類及び種類ごとの数)を定めなければならない。
取締役会設置会社においては、前項後段の規定による決定は、取締役会の決議によらなければならない。

消却は取締役会、取締役会がなければ取締役の過半数で決めます
消却する自己株式の数の決定は、取締役会設置会社では取締役会の決議によります。取締役会設置会社でない会社では取締役の決定で足り、取締役が2人以上いれば定款に別段の定めがない限り過半数の一致で決めます。申請書には取締役会議事録、または取締役の過半数の一致があったことを証する書面を添付し、株主総会の決議は要りません。消却できるのは会社が既に取得して保有している自己株式に限られ、株主が持つ株式を直接消却することはできません。登記実務では、株主名簿の記載を抹消するなど会社が消却の手続を終えた日を消却の効力発生日として登記すべき事項に記載すると扱われています。自己新株予約権の消却も同じ型で、取締役会設置会社でない会社の消却に「当該自己新株予約権の消却の決議をした株主総会の議事録を添付しなければならない」という肢は誤りです。
消却で減るのは発行済株式の総数だけです
消却の効力が生じると、消却した数だけ発行済株式の総数が減り、発行済株式の総数の変更の登記を申請します。資本金の額は株主への払戻しがあったわけではないので変わらず、取得の時点で既に自己株式として処理済みです。発行可能株式総数は消却によって自動的には減らず、減らしたいなら別に定款変更の決議をします。発行済株式の総数が減って発行可能株式総数が据え置かれるので、取締役会が発行できる枠はその分だけ広がります。公開会社で発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍を超えることになっても、消却の時点では是正を求められません。消却する株式は会社自身が持っているので、株券発行会社でも株券提出の公告は要りません。
取得は登記されず、処分は資本金を増やしません
会社が自己株式を取得しても、発行済株式の総数も資本金の額も変わらないので、取得そのものについて登記はしません。自己株式を処分するときは募集株式の発行と同じ手続によりますが、処分の対価は資本金に計上されず、その他資本剰余金の増減として処理します。「出資の目的が金銭であり,募集株式の一部が自己株式である場合には,払込みがされた額の全額を増加する資本金の額とする募集株式の発行による変更の登記の申請をすることはできない」という肢は正しい肢です。新株と自己株式を併せて割り当てたときは、新株の分だけ発行済株式の総数が増え、資本金等増加限度額は払込額に株式発行割合を乗じて計算します。
全員同意の登記の株主リストには自己株式の数も載せます
自己株式には議決権がなく、株主総会の決議を要する登記の株主リストには載りません。登記すべき事項について株主全員の同意を要する場合の株主リストでは、株主全員の氏名と住所、各株主の株式の数と議決権の数を記載し、自己株式があるときはその数も記載します。「登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合において,自己株式があるときは,登記の申請書に添付すべき株主リストには当該自己株式の数を記載しなければならない」という肢は正しい肢です。合併で消滅会社が持つ存続会社の株式を承継して自己株式になる分も、合併契約で交付する株式の数に含めて定めることができます。
商業登記規則 第61条第2項登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。
一 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数
二 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数
試験ではこう問われる
- 取締役会設置会社でない会社の自己株式の消却は誰が決めるか(取締役の過半数の決定)
- 消却で資本金の額や発行可能株式総数は減るか(減らない。減るのは発行済株式の総数)
- 自己株式の取得は登記するか(しない)
- 自己株式の処分の対価は資本金になるか(ならない)
- 全員同意を要する登記の株主リストに自己株式の数を書くか(書く)
この用語が問われた肢
取締役会設置会社でない会社が自己新株予約権の消却を行う場合には、新株予約権の消却による変更の登記の申請書には、当該自己新株予約権の消却の決議をした株主総会の議事録を添付しなければならない。
登記すべき事項につき株主全員の同意を要する場合において,自己株式があるときは,登記の申請書に添付すべき株主リストには当該自己株式の数を記載しなければならない。
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