補助者と他人による業務取扱いの禁止ほじょしゃとたにんによるぎょうむとりあつかいのきんし
補助者とは、司法書士が業務の補助をさせるために置くことができる者で、置いたとき・置かなくなったときは遅滞なく所属の司法書士会に届け出ます(規則25条)。試験では、補助者は補助をするだけで、病気などやむを得ない事由があっても補助者に業務を取り扱わせることはできないこと(規則24条)と、届出先が法務局ではなく所属の司法書士会であることが問われています。
補助者は、司法書士法ではなく司法書士法施行規則が定めています。25条1項は、司法書士はその業務の補助をさせるため補助者を置くことができると定めます。補助者ができるのは補助であり、司法書士の業務を自分の判断で取り扱うことではありません。

司法書士法施行規則24条司法書士は、他人をしてその業務を取り扱わせてはならない。
やむを得ない事由があっても、補助者に業務を取り扱わせることはできません
施行規則24条は、他人による業務取扱いを禁じ、例外を設けていません。長期の疾病で自ら業務を行えないときでも、補助者に業務を取り扱わせることはできません。「司法書士は、長期の疾病などやむを得ない事由により自ら業務を行い得ないときは、補助者にその業務を取り扱わせることができる」という肢(R7 午後 問8 エ)は誤りです。司法書士会に入会している司法書士でない者が3条1項1号から5号までの業務を行うことは、73条1項で禁じられています。
補助者を置いたときは、所属の司法書士会に届け出ます
施行規則25条2項は、補助者を置いたときと置かなくなったときは、遅滞なく所属の司法書士会に届け出なければならないと定めています。届出を受けた司法書士会は、その会の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に通知します(同条3項)。届出先は法務局ではなく所属の司法書士会で、司法書士会からの通知先も日本司法書士会連合会ではなく法務局又は地方法務局の長です。

司法書士法施行規則25条司法書士は、その業務の補助をさせるため補助者を置くことができる。2司法書士は、補助者を置いたときは、遅滞なく、その旨を所属の司法書士会に届け出なければならない。補助者を置かなくなつたときも、同様とする。3司法書士会は、前項の規定による届出があつたときは、その旨をその司法書士会の事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長に通知しなければならない。
自ら業務を行えない状態が続くときに法律が用意しているのは、登録の取消しの規定です
司法書士が病気などで自ら業務を行えないとき、司法書士法は補助者による代行を認める規定を置いていません。用意されているのは、心身の故障により業務を行うことができないときや、引き続き2年以上業務を行わないときに、連合会が登録を取り消すことができるという16条1項の規定です。心身の故障により業務を行うことができないおそれがある場合として法務省令で定める場合に当たることとなったときは、本人又は法定代理人若しくは同居の親族が、所属する司法書士会を経由して連合会に届け出るものとされています(16条2項)。業務を続けるかどうかは、補助者に任せるのではなく、司法書士本人の登録の問題として扱われます。
司法書士法 第16条第1項司法書士が次の各号のいずれかに該当する場合には、日本司法書士会連合会は、その登録を取り消すことができる。
一 引き続き二年以上業務を行わないとき。
二 心身の故障により業務を行うことができないとき。
簡裁訴訟代理等関係業務でも、事務を行うのは認定を受けた司法書士本人です
司法書士法人が3条1項6号の事務を受けるときは、依頼者からその社員又は使用人である認定司法書士に行わせる事務の委託を受け、依頼者にそのうちから代理人を選任させなければなりません(30条1項)。法人の業務であっても、訴訟の代理を担うのは資格を持つ個人です。施行規則24条が他人による業務の取扱いを禁じているのと同じく、業務の担い手を資格者に限る考え方が、法人の規定にも表れています。
補助者が業務そのものを行えば、非司法書士の業務の禁止にも触れます
司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者は、3条1項1号から5号までの業務を行ってはなりません(73条1項)。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(78条1項)。司法書士会に入会している司法書士でない補助者が、補助の範囲を超えて登記の代理や書類の作成を自ら業として行うと、この規定に違反します。他人に業務を取り扱わせた司法書士の側は、施行規則24条に違反したものとして、47条の懲戒の対象になります。施行規則は「この法律に基づく命令」に当たるからです。
司法書士法 第73条第1項司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
法人も補助者を置くことができ、協会には別の取扱いの制限があります
施行規則24条と25条は、37条によって司法書士法人に準用されています。法人も補助者を置いたときは所属の司法書士会に届け出ます。公共嘱託登記司法書士協会については、69条2項が、協会は業務に係る事務を司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者に取り扱わせてはならないと定め、違反したときは、事務を取り扱い又は取り扱わせた理事又は職員が6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられます(77条)。協会の業務を実際に処理するのは、社員である司法書士と司法書士法人です。
司法書士法 第69条第2項協会は、その業務に係る前項に規定する事務を、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者に取り扱わせてはならない。
試験ではこう問われる
- 長期の疾病などやむを得ない事由があっても、補助者に業務を取り扱わせることはできない(規則24条。R7 午後 問8 エ ×)
- 補助者を置いたときは、遅滞なく所属の司法書士会に届け出る(規則25条2項。H25 午後 問8 イ ○・出題当時)
- 補助者の届出先を法務局又は地方法務局の長とするのは誤り(規則25条2項。H29 午後 問8 ウ ×・出題当時)
- 補助者を置かなくなったときも、遅滞なく所属の司法書士会に届け出る(施行規則25条2項後段)
- 届出を受けた司法書士会の通知先は法務局又は地方法務局の長で、連合会ではない(規則25条3項。R1 午後 問8 ウ ×・出題当時)
この用語が問われた肢
司法書士は、長期の疾病などやむを得ない事由により自ら業務を行い得ないときは、補助者にその業務を取り扱わせることができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

