報酬の基準の明示と領収証ほうしゅうのきじゅんのめいじとりょうしゅうしょう
報酬の基準の明示とは、司法書士が3条1項各号の事務を受任しようとするときに、あらかじめ依頼をしようとする者に報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示す義務です(規則22条)。試験では、依頼者の求めがなくても示さなければならないこと、領収証には報酬額の総額ではなく内訳を詳細に記載しなければならないこと(規則29条3項)が問われています。
報酬の基準の明示は、司法書士法施行規則22条が定めています。司法書士は、3条1項各号の事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に報酬の基準を示さなければなりません。依頼者からの求めは要件になっていません。

司法書士法施行規則22条司法書士は、法第三条第一項各号に掲げる事務を受任しようとする場合には、あらかじめ、依頼をしようとする者に対し、報酬額の算定の方法その他の報酬の基準を示さなければならない。
報酬の基準は、依頼者から求められなくても受任前に示します
規則22条は「あらかじめ」示すと定めているので、依頼者が尋ねてこない場合でも、受任しようとする段階で示さなければなりません。求めがあったときは示さなければならないが、求めがなかったときは示すことを要しないとする記述は誤りです。示す時期は受任の前で、受任した後や報酬を請求する段階になって初めて示すのでは足りません。示す相手は「依頼をしようとする者」で、まだ依頼者になっていない段階の者も含まれます。
領収証は正副2通を作り、正本には報酬額の内訳を詳細に記載します
施行規則29条は、報酬を受けたときは領収証正副2通を作成し、正本は記名して職印を押して依頼者に交付し、副本は作成の日から3年間保存すると定めています。領収証には受領した報酬額の内訳を詳細に記載し、又は記録しなければならず(同条3項)、総額だけでは足りません。領収証は電磁的記録で作成・保存することもできます(同条2項)。この2項と3項の「又は記録しなければならない」という文言は令和2年8月1日施行の省令改正で加わったもので、内訳を詳細に記載する義務はそれ以前から置かれていました。副本の保存期間3年は、事件簿の保存期間(閉鎖後7年間)とは別の期間です。

司法書士法施行規則29条3項第一項の領収証には、受領した報酬額の内訳を詳細に記載し、又は記録しなければならない。
報酬の基準の明示は、簡裁訴訟代理等関係業務を含む3条1項各号のすべての事務に及びます
施行規則22条は「法第三条第一項各号に掲げる事務を受任しようとする場合」と定め、1号から8号までを区別していません。登記の代理だけでなく、裁判所に提出する書類の作成、簡易裁判所での訴訟代理、裁判外の和解の代理を受任しようとするときも、あらかじめ報酬の基準を示します。依頼に応ずる義務(21条)が簡裁訴訟代理等関係業務を除いているのとは扱いが違います。明示する内容は「報酬額の算定の方法その他の報酬の基準」で、どのように金額が決まるかを依頼者が受任前に知ることができるようにするものです。
依頼を集める段階では、不当な手段による依頼の誘致が禁じられています
報酬の基準の明示が受任前の説明の義務であるのに対し、施行規則26条は、司法書士は不当な手段によって依頼を誘致するような行為をしてはならないと定めています。この規定は司法書士法人(施行規則37条)と協会の業務(施行規則51条)にも準用されます。施行規則の規定は「この法律に基づく命令」なので、22条・26条・29条に違反すると47条・48条の懲戒の対象になります。懲戒処分に関しては、法務大臣が事件簿その他の関係資料を調査でき、司法書士は正当の理由なくこれを拒めません(施行規則42条1項・4項)。
司法書士法施行規則26条司法書士は、不当な手段によつて依頼を誘致するような行為をしてはならない。
司法書士法人にも準用され、協会の領収証には別の規定があります
施行規則22条と29条は、37条によって司法書士法人に準用されています。公共嘱託登記司法書士協会については、施行規則48条が、嘱託人から報酬を受けたときは、その年月日、件名並びに報酬額及びその内訳を記載した領収証を正副2通作成し、正本を嘱託人に交付し、副本を作成の日から3年間保存すると定めています。協会の領収証では、記載事項として年月日と件名が明示されている点が、司法書士の領収証の規定と違います。
試験ではこう問われる
- 報酬の基準は、依頼をしようとする者から求めがなくても、受任前にあらかじめ示さなければならない(規則22条。H25 午後 問8 ア ×・出題当時)
- 領収証には受領した報酬額の内訳を詳細に記載しなければならず、総額だけでは足りない(規則29条3項。H29 午後 問8 ア ×・出題当時)
- 領収証は正副2通を作成し、正本は記名・押印して依頼者に交付し、副本は作成の日から3年間保存する(規則29条1項)
- 報酬の基準の明示は、簡裁訴訟代理等関係業務を含む3条1項各号の事務を受任しようとするときに求められる(規則22条)
- 司法書士法人にも規則22条・29条が準用される(規則37条)

