司法書士の業務(3条1項1号〜5号)しほうしょしのぎょうむ
司法書士の業務は、他人の依頼を受けて、登記・供託の手続の代理、法務局に提出する書類の作成、登記・供託の審査請求の代理、裁判所・検察庁に提出する書類の作成、これらの相談を行うことです(3条1項1号〜5号)。試験では、これらの業務の依頼は正当な事由がなければ拒めないこと、裁判所に提出する書類の作成には価額の制限がないことが問われています。
司法書士の業務は、3条1項各号に列挙されています。柱書は「他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする」と定めており、自分の登記を自分で申請することは司法書士の業務ではありません。1号から5号までは、登記又は供託に関する手続の代理、法務局又は地方法務局に提出し又は提供する書類・電磁的記録の作成、法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続の代理、裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続で法務局に提出する書類の作成、そしてこれらの事務についての相談です。6号から8号までは簡易裁判所での訴訟代理などで、法務大臣の認定を受けた司法書士だけが行える業務として別に扱われます(3条2項)。

司法書士法 第3条第1項司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
三 法務局又は地方法務局の長に対する登記又は供託に関する審査請求の手続について代理すること。
四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類若しくは電磁的記録又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。
六 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。ただし、上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決、決定又は命令に係るものを除く。)、再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については、代理することができない。
イ 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定による手続(ロに規定する手続及び訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ロ 民事訴訟法第二百七十五条の規定による和解の手続又は同法第八編の規定による支払督促の手続であつて、請求の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ハ 民事訴訟法第二編第四章第七節の規定による訴えの提起前における証拠保全手続又は民事保全法(平成元年法律第九十一号)の規定による手続であつて、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ニ 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)の規定による手続であつて、調停を求める事項の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
ホ 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二章第二節第四款第二目の規定による少額訴訟債権執行の手続であつて、請求の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないもの
七 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
八 筆界特定の手続であつて対象土地(不動産登記法第百二十三条第三号に規定する対象土地をいう。)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の二分の一に相当する額に筆界特定によつて通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は代理すること。
1号から5号までは登記・供託・裁判書類の三つの柱に分かれます
1号と2号は登記・供託の手続そのものです。1号は手続の代理、2号は法務局又は地方法務局に提出する書類や電磁的記録の作成で、2号は4号に当たる筆界特定の手続の書類を除いています。3号は登記・供託についての審査請求の代理で、相手は法務局又は地方法務局の長に限られます。4号は裁判所又は検察庁に提出する書類と、筆界特定の手続で法務局に提出する書類の作成です。5号は1号から4号までの事務についての相談です。4号の業務と、5号のうち4号に関する部分は「裁判書類等作成関係業務」と呼ばれ(22条2項)、相手方の依頼を受けた事件などでは行えないという制限がかかります。
1号から5号までの業務は、すべての司法書士が行うことができ、価額の制限もありません
裁判所に提出する書類の作成(4号)は、地方裁判所に提出する訴状でも、請求額が140万円を超える事件の書類でも行うことができます。4号の文言には価額の限定がありません。価額で業務の範囲が区切られるのは、簡易裁判所での代理(6号)や裁判外の和解の代理(7号)など、簡裁訴訟代理等関係業務に限られます。ただし、3条1項に挙がる業務であっても、他の法律で業務を行うことが制限されているものは行うことができません(3条8項)。

司法書士法 第3条第8項司法書士は、第一項に規定する業務であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない。
1号から5号までの業務の依頼は、正当な事由がなければ拒めません
21条は、司法書士は正当な事由がある場合でなければ依頼を拒むことができないと定め、括弧書で簡裁訴訟代理等関係業務に関するものだけを除いています。そのため、審査請求の手続の代理(3号)も、簡易裁判所に提出する書類の作成(4号)も、依頼に応ずる義務の対象になります。「司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、簡易裁判所に提出する書類を作成する業務の依頼を拒むことができない」という肢(R6 午後 問8 イ)は正しい記述です。簡易裁判所に出す書類であっても、書類の作成は4号の業務であり、6号の代理とは別の業務だからです。
5号の相談と7号の相談は、対象も担い手も違います
5号の相談は、1号から4号までの事務についての相談で、すべての司法書士が行えます。たとえば、登記の手続や裁判所に出す書類の書き方についての相談がこれに当たります。これに対し7号の相談は、簡易裁判所の民事訴訟の対象となる民事紛争で、紛争の目的の価額が140万円を超えないものについての相談です。7号は簡裁訴訟代理等関係業務に含まれるので、3条2項の認定を受けた司法書士でなければ行えません。同じ「相談」という語でも、5号は1号から4号までの事務についての相談に限られるので、紛争の解決そのものについて法律上の判断を示す相談は、5号ではなく7号の範囲で考えることになります。どこまでが書類作成に付随する相談かの線引きは、個々の事案によります。
司法書士法 第3条第1項第7号民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。
1号から5号までの業務は、司法書士会に入会している司法書士と司法書士法人でなければ行えません
73条1項本文は、司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(公共嘱託登記司法書士協会を除く)は、3条1項1号から5号までの業務を行ってはならないと定めています。ただし書は、他の法律に別段の定めがある場合を除いています。違反した者は1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます(78条1項)。司法書士法人は定款の定めがなくても1号から5号までの業務を行うことができ(29条1項)、協会は官公署等の嘱託を受けて不動産の権利に関する登記について1号から5号までの事務を行います(69条1項)。
司法書士法 第73条第1項司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 簡易裁判所に提出する書類の作成は3条1項4号の業務であり、正当な事由がなければ依頼を拒めない(3条1項4号・21条。R6 午後 問8 イ ○)
- 法務局又は地方法務局の長に対する登記の審査請求の代理(3条1項3号)も、正当な事由がなければ依頼を拒めない(21条。H25 午後 問8 ウ ×・出題当時)
- 裁判所に提出する書類の作成には、簡裁訴訟代理等関係業務のような価額の制限はない(3条1項4号)
- 3条1項4号の業務と5号のうち4号に関する部分を「裁判書類等作成関係業務」といい、22条2項・41条の制限がかかる(22条2項)
- 5号の相談は1号から4号までの事務についての相談で、民事紛争についての相談(7号)は認定司法書士に限られる(3条1項5号・7号・2項)
- 3条1項の業務でも、他の法律で行うことが制限されているものは行えない(3条8項)
- 司法書士会に入会している司法書士・司法書士法人でない者は、1号から5号までの業務を行えない(73条1項・78条1項)
この用語が問われた肢
司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、簡易裁判所に提出する書類を作成する業務の依頼を拒むことができない。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

