訴えの取下げと控訴の取下げの比較・取下げ擬制うったえのとりさげとこうそのとりさげのひかくとりさげぎせい
訴えの取下げとは訴えを撤回して訴訟係属を遡って消滅させることで、控訴の取下げとは控訴を撤回して控訴審の係属を消滅させることです。訴えの取下げは判決の確定まで、控訴の取下げは控訴審の終局判決までできます。当事者双方の欠席が続くと取下げが擬制され、控訴審では控訴の取下げが擬制されます(263条・292条2項)。
第一審で負けて控訴した人が、控訴をやめたくなったとします。控訴を取り下げれば第一審判決が確定し、訴えそのものを取り下げれば訴訟は初めからなかったことになります。似た言葉ですが、いつまでできるか、相手方の同意が要るか、どんな結果になるかが違います。また、当事者双方が期日に来ないまま放置すると、法律上当然に取下げがあったものとみなされます。控訴審でそれが起きたときに消えるのは、訴えではなく控訴です。

訴えの取下げは判決の確定まで、控訴の取下げは控訴審の終局判決までできます
訴えは判決が確定するまで取り下げられます(261条1項)が、控訴は控訴審の終局判決があるまでしか取り下げられません(292条1項)。控訴審の終局判決が出た後に控訴を取り下げられるとすると、控訴人は不利な控訴審判決を見てから取下げで第一審判決を確定させるという選択ができてしまい、相手方に不公平だからです。効果も違い、訴えの取下げでは訴訟係属が遡って消える(262条1項)のに対し、控訴の取下げでは控訴が初めからなかったことになり(292条2項による262条1項の準用)、控訴期間が過ぎていれば第一審判決が確定します。
- 時期訴えの取下げ=判決の確定まで(261条1項)/控訴の取下げ=控訴審の終局判決まで(292条1項)
- 相手方の同意訴えの取下げ=本案の応訴後は必要(261条2項)/控訴の取下げ=不要(261条2項は準用されない)
- 方式どちらも書面が原則で、口頭弁論等の期日では口頭でもできます(261条3項・4項、292条2項)
- 効果訴えの取下げ=訴訟係属が初めからなかったことになる/控訴の取下げ=控訴が初めからなかったことになり、第一審判決が確定に向かう
- 取下げの擬制第一審=訴えの取下げの擬制(263条)/控訴審=控訴の取下げの擬制(292条2項による263条の準用)
控訴の取下げには被控訴人の同意が要らず、附帯控訴があっても同じで、附帯控訴は原則として効力を失います
控訴の取下げについては、相手方の同意を要求する261条2項が準用されていないので(292条2項)、被控訴人の同意は要りません。控訴を取り下げても第一審判決が確定するだけで、被控訴人は第一審の勝訴判決を維持できるからです。被控訴人が附帯控訴をしていても、同意は要りません。附帯控訴は控訴に附帯するものなので、控訴の取下げがあると効力を失います(293条2項本文)。ただし、控訴期間内にされるなど控訴の要件を備える附帯控訴は、独立した控訴とみなされます(同項ただし書)。附帯控訴そのものは自らの控訴期間が過ぎた後でもでき、「被控訴人は、既に自らの控訴期間が経過しているとき又は既に控訴をする権利を放棄しているときは、控訴審の口頭弁論の終結前であっても、附帯控訴をすることができない」という肢(R4 午後 問5 エ)は誤りです。附帯控訴は再訴禁止の趣旨が及ばない特殊な訴訟行為なので、いったん取り下げても口頭弁論の終結までは再び申し立てられます(最判昭和38年12月27日)。

当事者双方が期日に欠席して1か月以内に期日指定の申立てをしないか、連続して2回欠席すると、訴えの取下げがあったものとみなされます
当事者双方が、口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭せず(又は弁論や申述をしないで退廷・退席し)、1か月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなされます(263条前段)。当事者双方が連続して2回出頭しなかったときも同じです(同条後段)。双方が訴訟を追行する意思を失ったとみられる事件を終わらせる趣旨で、法律上当然に生じる効果なので被告の同意は要りません。「当事者双方が、連続して二回、口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合には、訴えの取下げがあったものとみなされる」という肢(R4 午後 問4 エ)は正しいです。弁論準備手続の期日の双方欠席も対象です。期間は1か月で、連続2回の場合は申立ての期間を待たずに効果が生じます。
控訴審で当事者双方が欠席して期日指定の申立てをしなければ、取り下げられたとみなされるのは訴えではなく控訴です
263条は控訴審にも準用されますが、準用の結果みなされるのは控訴の取下げです(292条2項)。控訴審で双方が欠席し1か月以内に期日指定の申立てがないときは、控訴が取り下げられたものとみなされ、第一審判決が確定します。「当事者双方が、控訴審の口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しなかった場合において、法定の期間内に期日指定の申立てをしないときは、控訴の取下げがあったものとみなされる」という肢(R8 午後 問5 オ)は正しいです。第一審で勝訴した原告にとって、控訴審の欠席で訴えが消えるのではなく、相手方の控訴が消えて自分の勝訴判決が確定することになります。欠席の効果の全体は、当事者双方の欠席の効果の語で扱います。
民事訴訟法 第292条第1項控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。
民事訴訟法 第292条第2項第二百六十一条第三項及び第四項、第二百六十二条第一項並びに第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。
民事訴訟法 第263条(訴えの取下げの擬制)
当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。
試験ではこう問われる
- 訴えの取下げは判決の確定まで、控訴の取下げは控訴審の終局判決までできる(261条1項・292条1項)
- 控訴の取下げには被控訴人の同意が要らず、附帯控訴をしていても同意は要らない
- 控訴の取下げで附帯控訴は効力を失うが、控訴の要件を備える附帯控訴は独立した控訴とみなされる(293条2項)
- 附帯控訴は、自らの控訴期間の経過後や控訴権の放棄後でも、控訴審の口頭弁論終結前ならできる(R4 午後 問5 エ ×)
- 当事者双方の欠席後1か月以内に期日指定の申立てがないとき、又は連続2回の欠席で、訴えの取下げが擬制され、被告の同意は要らない(263条、R4 午後 問4 エ ○)
- 控訴審での双方欠席で擬制されるのは控訴の取下げであり、訴えの取下げではない(292条2項、R8 午後 問5 オ ○)

