主観的追加的併合しゅかんてきついかてきへいごう
主観的追加的併合とは、訴訟の係属中に、当事者でなかった者に対する請求や当事者でなかった者の請求を追加して、係属中の訴訟を共同訴訟にすることです。明文で認められた共同訴訟参加・選定者に係る請求の追加・参加承継と引受承継のほかに、明文のない主観的追加的併合は判例上認められていません。
土地の売主を訴えている途中で、鑑定書を書いた鑑定士にも責任があると気づいた原告が、今の訴訟にその人を被告として加えたいと考えることがあります。同じ手続で審理できれば便利ですが、途中から引き込まれる人はそれまでの審理に関われなかったうえ、訴訟が複雑になって長引くおそれもあります。そこで、明文で認められた場合を除き、係属中の訴訟に新しい当事者を加えることは認められていません。これが主観的追加的併合の問題です。

明文のない主観的追加的併合は判例上認められず、原告は新たな被告に別訴を起こして弁論の併合を裁判所に促すことになります
判例は、原告が係属中の訴訟に第三者を被告とする請求を追加して一個の判決を得ようとする場合には、その第三者に対する別訴を提起したうえで口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合について裁判所の判断を受けるべきであり、新旧両訴訟が共同訴訟の要件(38条)を満たすときでも、新訴が当然に旧訴訟に併合される効果は認められないとしました(最判昭和62年7月17日)。理由として、明文の規定がないこと、新訴について旧訴訟の訴訟状態をそのまま利用できるかに問題があって必ずしも訴訟経済に適わないこと、かえって訴訟を複雑にすること、軽率な提訴や濫訴が増えるおそれがあること、提起の時期によっては訴訟の遅延を招きやすいことを挙げています。弁論を併合するかどうかは裁判所の裁量(152条1項)なので、当事者の権利として併合された審理を求めることはできません。新たな被告への訴えは別訴なので、その手数料も別に納めなければなりません。

選定者に係る請求の追加は、明文で認められた主観的追加的併合の一つです
係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定できます(30条3項)。選定するために自分で訴えを起こして併合を求める必要はありません。被告となるべき者の選定があった場合には、原告は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者に係る請求の追加をすることができます(144条2項)。原告となるべき者の選定があった場合には、選定当事者がその選定者のために請求を追加できます(同条1項)。追加には訴えの変更の書面と送達の規定などが準用され(同条3項)、控訴審では相手方の同意が要ります(300条3項)。
共同訴訟参加も明文で認められた主観的追加的併合ですが、合一確定の必要がなければ使えません
第三者のほうから係属中の訴訟に加わる場合として、共同訴訟参加(52条1項)があります。これは訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合に限られます。同じ事故の被害者が複数いても、各被害者の損害賠償請求権は別個の訴訟物で、過失の程度や損害の額も人ごとに違い、判決の効力も互いに及ばないので、合一確定の必要がありません。そのため、別の被害者は共同訴訟参加できず、自分で訴えを起こして弁論の併合を求めることになります。このほか、係争物の譲渡があったときの参加承継と引受承継(49条〜51条)も、明文で第三者を当事者に加える制度です。
- 明文で認められるもの共同訴訟参加(52条)、選定者に係る請求の追加(144条)、参加承継・引受承継(49条〜51条)、独立当事者参加(47条)
- 明文のないもの原告が新たな被告への請求を追加すること(判例は否定)。別訴を起こして弁論の併合を促します
民事訴訟法 第144条第2項第三十条第三項の規定による被告となるべき者の選定があった場合には、原告は、口頭弁論の終結に至るまで、その選定者に係る請求の追加をすることができる。
試験ではこう問われる
- 明文のない主観的追加的併合は認められず、原告は新たな被告への別訴を提起して弁論の併合を促す(最判昭和62年7月17日)
- 数人に対する一の訴えで併合請求の裁判籍が使えるのは38条前段の場合に限られ、権利義務が同種で同種の原因に基づくだけでは使えない(7条ただし書。R6 午後 問2 イ ×)
- 係属中の訴訟の当事者を選定するのに、自ら訴えを提起して併合を求める必要はない(30条3項)
- 被告となるべき者の選定があれば、原告は口頭弁論の終結まで選定者に係る請求を追加できる(144条2項)
- 同一事故の別の被害者は合一確定の必要がないので共同訴訟参加できない(52条1項)

