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専門委員と専門的知見の補充手段(92条の2〜92条の7・鑑定・調査の嘱託)せんもんいいんとせんもんてきちけんのほじゅうしゅだん

民事訴訟法 第5章 審理の原則と手続 過去問で2肢

専門委員とは、専門的な知見を要する事件で、争点や証拠の整理、証拠調べ、和解などの手続に関与し、裁判所に専門的な知見に基づく説明をする非常勤の専門家です(92条の2〜92条の7)。説明は裁判所の理解を助けるためのもので、証拠資料にはなりません。

医療事故や建築の欠陥をめぐる訴訟では、裁判官が当事者の主張や書証を読んでも、専門用語や技術の意味が分からないことがあります。専門委員は、そうした事件で裁判所に専門的な知見を説明する非常勤の専門家です。証人や鑑定人と違って証拠方法ではなく、あくまで裁判所の理解を助ける役割なので、関与させるときの当事者の関与は、場面に応じて意見聴取で足りるか同意が要るかが分かれています。

弁論準備手続室のラウンドテーブル。奥に先生が裁判官役(札「受命裁判官」)、横に白衣の専門家(札「専門委員」)が建物の設計図面を広げて指さしている。左右に原告代理人(札「原告」)と被告代理人(札「被告」)。専門委員の吹き出し「この記号は耐力壁

争点整理・進行協議と証拠調べの期日に関与させるには当事者の意見を聴けば足り、訴訟手続の円滑な進行のためにも関与させられます

裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門委員を手続に関与させることができます(92条の2第1項)。同意は要りません。目的には訴訟手続の円滑な進行も含まれます。証拠調べをするに当たり、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があるときも、当事者の意見を聴いて、証拠調べの期日に関与させることができます(同条3項前段)。専門委員は、書証として出された設計図面の意味内容も説明できます。

証人などに直接問いを発させるのと、和解を試みる期日に関与させるのには、当事者の同意が要ります

証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人質問の期日に専門委員に説明をさせるとき、裁判長は、当事者の同意を得て、専門委員が証人・当事者本人・鑑定人に直接に問いを発することを許すことができます(92条の2第3項後段)。直接の発問は証拠調べの結果に影響するからです。和解を試みるに当たっては、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日に関与させることができます(同条4項)。意見聴取だけでは足りませんが、同意があれば関与させられます。

  • 争点・証拠の整理、進行協議(92条の2第1項)当事者の意見を聴いて関与させる
  • 証拠調べの期日(同条3項前段)当事者の意見を聴いて関与させる
  • 証人・当事者本人・鑑定人への直接の発問(同条3項後段)当事者の同意を得て裁判長が許す
  • 和解を試みる期日(同条4項)当事者の同意を得て関与させる
  • 関与決定の取消し(92条の4)相当と認めるとき申立て又は職権で。当事者双方の申立てがあれば必ず取り消す

説明は書面又は口頭でさせ、当事者に意見を述べる機会を与えますが、説明は証拠資料にならず宣誓も要りません

専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせます(92条の2第1項後段)。説明の内容は当事者に開示され、当事者には意見を述べる機会が与えられます(民事訴訟規則34条の5)。専門委員は証拠資料を正確に理解するために知見を提供するのであって証拠方法ではないので、説明の結果を証拠資料として用いることはできません。証人でも鑑定人でもないので、宣誓も要りません。

公開の法廷の証人尋問の場面。証言台に証人(札「証人」)、法壇の脇の席に専門委員(札「専門委員」)。法壇の先生が裁判長役(札「裁判長」)で、原告代理人と被告代理人に向かって吹き出し「専門委員が証人に直接質問することに、双方とも同意されますか」

当事者双方の申立てがあれば関与決定を取り消さなければならず、除斥・忌避が準用され、受命裁判官も関与させられます

裁判所は、相当と認めるときは申立てにより又は職権で専門委員を関与させる決定を取り消すことができ、当事者双方の申立てがあるときは取り消さなければなりません(92条の4)。双方の申立てがあれば、相当性を問わず取り消す義務があります。専門委員には除斥・忌避の規定が準用され(92条の6第1項)、除斥又は忌避の申立てがあれば、その決定が確定するまで手続に関与できません(同条2項)。受命裁判官が弁論準備手続などを行う場合は、関与させる決定などの職務をその裁判官が行います(92条の7本文)。ただし、証拠調べの期日への関与の決定・取消しと専門委員の指定は受訴裁判所がします(同条ただし書)。

専門的知見を補う手段には、専門委員のほか、鑑定・鑑定の嘱託・調査の嘱託・私鑑定の報告書の書証があります

専門委員は証拠方法ではないので、専門的知見そのものを証拠にしたいときは、鑑定・鑑定の嘱託・調査の嘱託などを使います。裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署や学校・商工会議所・取引所その他の団体に嘱託することができる(186条)ので、気象台に特定の日と地域の気象情報を照会することもできます。官庁若しくは公署又は相当の設備を有する法人に鑑定を嘱託することもでき(218条1項)、工業製品の化学的性質について法人に鑑定を嘱託することもできます。当事者は、相当賃料額の算定のように専門的判断を要する事項について鑑定の申出ができます。当事者が自分で専門家に判断を依頼した報告書(いわゆる私鑑定)は、鑑定ではなく書証として提出することができます。鑑定と調査の嘱託の手続の詳細は証拠の章の語で扱います。

民事訴訟法 第92条の2第1項

裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない。

民事訴訟法 第92条の2第4項

裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。

民事訴訟法 第92条の4

(専門委員の関与の決定の取消し)
裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、専門委員を手続に関与させる決定を取り消すことができる。ただし、当事者双方の申立てがあるときは、これを取り消さなければならない。

試験ではこう問われる

  1. 争点整理・進行協議への関与は当事者の意見聴取で足り、同意は要らない(92条の2第1項)。訴訟手続の円滑な進行のためにも関与させられる
  2. 証拠調べの期日への関与も意見聴取で足りるが(同条3項前段)、証人・当事者本人・鑑定人への直接の発問には当事者の同意が要る(同条3項後段)
  3. 和解を試みる期日への関与には当事者の同意が要る(同条4項)
  4. 説明は書面又は口頭でさせ、証拠資料にならない。宣誓も要らない
  5. 当事者双方の申立てがあれば関与決定を取り消さなければならない(92条の4)。除斥・忌避が準用され(92条の6)、受命裁判官も関与させられる(92条の7)
  6. 専門的知見を補う手段には鑑定・鑑定の嘱託・調査の嘱託・私鑑定の報告書の書証もあり、調査の嘱託は職権でもできる(186条、R2 午後 問2 オ ○)

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