移送の裁判の効力と不服申立て(21条・22条・309条)いそうのさいばんのこうりょくとふふくもうしたて
移送の裁判の効力とは、確定した移送の裁判が移送を受けた裁判所を拘束し(22条1項)、移送を受けた裁判所が更に事件を他の裁判所に移送できず(同条2項)、訴訟が初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなされる(同条3項)ことです。移送の決定と移送の申立てを却下した決定には、即時抗告で不服を申し立てることができます(21条)。
移送のたびに裁判所どうしが「うちではない」と事件を押し付け合えば、当事者はいつまでも本題に入れません。そこで法律は、移送の裁判に不服があれば即時抗告で争わせ、確定した後は移送を受けた裁判所を縛って送り返せないようにし、訴えた時から移送先に係属していたことにして、時効などの効果を守っています。どの点が拘束され、どの事由なら再び移送できるかが問われます。

移送の決定にも移送の申立てを却下した決定にも即時抗告ができますが、反訴による移送の決定には不服を申し立てられません
移送の裁判は決定の形式でされ、移送の決定に対しても、移送の申立てを却下した決定に対しても、即時抗告をすることができます(21条)。どの裁判所で審理されるかは当事者の利害に大きくかかわるので、移送を求めた側にも求められた側にも上級審の判断を受ける機会を与えたものです。ここでの却下には、申立てに理由がないとして退ける場合も含まれます。例外として、簡易裁判所で地方裁判所の管轄に属する反訴が起こされ、相手方の申立てにより本訴と反訴を地方裁判所に移送する決定には、不服を申し立てることができません(274条2項)。要件が明確で、地方裁判所で審理することに不利益が考えにくいからです。
確定した移送の裁判は移送を受けた裁判所を拘束し、同じ事由で送り返すことはできませんが、別の事由や新たに生じた事由による再移送はできます
確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束し(22条1項)、移送を受けた裁判所は更に事件を他の裁判所に移送することができません(同条2項)。管轄についての裁判所間の見解の違いから事件がたらい回しにされるのを防ぐためです。合意管轄を理由に名古屋簡易裁判所へ移送する裁判が確定した場合、名古屋簡易裁判所は合意が有効であるという判断に拘束されるので、合意が無効であることを理由に大阪簡易裁判所へ移送することはできません。もっとも、拘束力が及ぶのは移送の裁判が判断した事由についてであり、それ以外の事由まで封じる趣旨ではないので、移送を受けた裁判所が別の事由で再び移送することは認められると考えられています(東京地決昭和61年1月14日)。簡易裁判所が事件の複雑さを理由に18条で地方裁判所へ移送した後に、地方裁判所が証拠の偏在などを考慮して当事者間の衡平を図るため17条で更に他の管轄裁判所へ移送することもできます。同じく、移送決定の確定後に新たな事由が生じたときも、改めて移送することができます。

移送の裁判が確定すると訴訟は初めから移送先に係属していたものとみなされ、訴え提起の時に生じた時効の完成猶予は失われません
移送の裁判が確定したときは、訴訟は初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなされます(22条3項)。訴えの提起の効果は最初の裁判所に訴状を出した時に生じ、移送で途切れることはありません。裁判上の請求による時効の完成猶予は訴えの提起の時に生じるので(民法147条1項、民事訴訟法147条)、移送の申立てや移送の裁判の確定が時効期間の経過後になっても、その効力は影響を受けません。
移送の申立てがあっても訴訟手続は停止せず、合算して地裁に管轄がある共同訴訟を被告ごとに分離して簡裁へ移送することもできません
除斥・忌避の申立てと違い(26条)、移送の申立てがあっても訴訟手続を停止すべきとする規定はありません。移送の申立てで手続を止めると、遅延のための申立てを招くからです。また、貸主が同じ地方裁判所の管轄区域内に住む複数の借主を共同被告として、同種の消費貸借に基づく貸金請求を合算して140万円を超えるとして地方裁判所に起こした場合、7条ただし書が38条前段の場合に限っているのは土地管轄についてであり、事物管轄を定める9条の合算までは排除しません(最決平成23年5月18日)。各被告に対する請求額が140万円以下でも地方裁判所に事物管轄があるので、被告ごとに弁論を分離して各被告の住所地の簡易裁判所に移送することはできません。管轄は訴え提起の時を標準に定まるので(15条)、その後に弁論を分離しても地方裁判所の管轄は失われません。
控訴裁判所が管轄違いを理由に第一審判決を取り消すときは、判決で事件を管轄裁判所に移送します
控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければなりません(309条)。管轄のない裁判所の判決を取り消す以上、控訴裁判所が自ら本案を判断することも原審に差し戻すことも相当でないので、管轄のある裁判所に直接送ります。第一審での移送が決定でされるのと違い、ここでは原判決の取消しと一体なので判決の形式をとります。もっとも、控訴審では当事者は第一審裁判所に管轄がないことを主張できず、例外は法定の専属管轄の場合だけなので(299条1項)、309条が働く場面は限られています。
民事訴訟法 第21条(即時抗告)
移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
民事訴訟法 第22条第1項確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する。
民事訴訟法 第22条第2項移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない。
民事訴訟法 第22条第3項移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。
民事訴訟法 第309条(第一審の管轄違いを理由とする移送)
控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。
試験ではこう問われる
- 移送の決定にも、移送の申立てを却下した決定にも即時抗告ができる(21条)
- 口頭弁論の期日における移送の申立ては、口頭ですることができる(R3 午後 問3 イ ○)
- 簡裁の本訴に地裁の管轄に属する反訴が出れば、相手方の申立てで本訴と反訴を地裁に移送しなければならず(274条1項、R5 午後 問1 オ ○)、この決定には不服を申し立てられない(274条2項)
- 確定した移送の裁判は移送を受けた裁判所を拘束し、同じ事由で送り返すことはできない(22条1項・2項)。別の事由や新たに生じた事由による再移送はできる
- 移送の裁判が確定すると訴訟は初めから移送先に係属していたものとみなされ(22条3項)、提起時の時効の完成猶予は失われない
- 移送の申立てがあっても訴訟手続は停止しない。共同被告への請求を合算して地裁に起こした訴えを、被告ごとに分離して簡裁に移送することはできない(最決平成23年5月18日)
- 控訴裁判所は管轄違いを理由に第一審判決を取り消すときは、判決で管轄裁判所に移送する(309条)

