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扶養義務等に係る定期金債権の特例(養育費の強制執行)ふようぎむとうにかかるていききんさいけんのとくれい

民事執行法 第4章 動産執行・債権執行 過去問で3肢

扶養義務等に係る定期金債権の特例とは、養育費・婚姻費用などの扶養義務等に係る確定期限の定めのある定期金債権について、一部に不履行があるときは、確定期限が到来していないものについても債権執行を開始できるとする特例です(151条の2第1項)。差し押さえられるのは、各定期金の確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権に限られます(同条2項)。

養育費は月々の支払が長く続くので、不履行のたびに強制執行を申し立てるのは債権者の負担が大きくなります。民事執行法は、扶養義務等に係る金銭債権について、将来分の差押え、差押禁止の範囲の縮小、間接強制という特則を置いています。

月ごとのカレンダーで先月に不払いの×印、来月以降をまとめて囲んだ黒板
養育費などの定期金債権の一部に不履行があれば、確定期限が到来していない分についても債権執行を開始できます
一部不履行で将来分も対象は期限後の給料など継続的給付に限る
民事執行法 第151条の2第1項

債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
一 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
二 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
三 民法第七百六十六条及び第七百六十六条の三(これらの規定を同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
四 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務

一部に不履行があれば、確定期限が到来していない分についても債権執行を開始できます

確定期限の到来に係る請求の強制執行は、期限の到来後に限り開始できるのが原則です(30条1項)。151条の2第1項は、その例外として、債権者が夫婦間の協力扶助(民法752条)、婚姻費用の分担(同法760条)、子の監護(同法766条など)、扶養(同法877条から880条まで)の義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合に、その一部に不履行があるときは、確定期限が到来していないものについても債権執行を開始することができると定めています。「債権者が養育費に係る確定期限の定めのある定期金債権について債務名義を有する場合において,その一部に不履行があるときは,当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても,債権執行を開始することができますか。いいえ」という問答の肢(R2 午後 問7 ウ)は誤りです。

差し押さえられるのは、期限到来後に弁済期が来る給料などの継続的給付だけです

151条の2第1項により開始する債権執行では、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができます(同条2項)。毎月末払の養育費であれば、各月の養育費は、その月末より後に支払期が来る給料から回収されます。一度の申立てで将来の給料を押さえられますが、継続的給付に当たらない債権には、この特例は使えません。

民事執行法 第151条の2第2項

前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。

給料の差押禁止の範囲は、4分の3ではなく2分の1になります

扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合には、給料などの差押禁止の部分が支払期に受けるべき給付の2分の1になります(152条3項)。「養育費に係る金銭債権についての債務名義に基づいて,債務者の給料債権を差し押さえる場合に,当該給料債権の支払期に受けるべき給付の 4 分の1 に相当する部分を超えて差し押さえることはできますか。はい。その場合には,当該給付の 2 分の 1 に相当する部分まで差し押さえることができます」という問答の肢(R2 午後 問7 エ)は正しい記述です。この場合は、取立ての時期を4週間に延ばす155条2項と、転付命令の効力の発生を遅らせる159条6項も適用されません(各項括弧書)。

民事執行法 第152条第3項

債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

金銭債権でも、扶養義務等に係るものは間接強制ができます

金銭債権の強制執行は、差押えと換価による方法が原則です。167条の15第1項は、扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行は、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が172条1項の間接強制の方法により行うと定めています。ただし、債務者が支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき、又はその債務を弁済することによってその生活が著しく窮迫するときは、間接強制はできません(同項ただし書)。定期金債権の一部に不履行があるときは、6月以内に確定期限が到来するものについても、間接強制を開始することができます(167条の16)。平成29年には、金銭債権についての強制執行は直接強制の方法のみによることができ、間接強制の方法によることはできないとした肢が出題され、誤りとされています。

黒板の左右にふつうの金銭債権と養育費などを並べ、間接強制の可否を比べる教室
金銭債権でも、扶養義務等に係るものは、債務者に支払能力がない場合などを除き、間接強制の方法で強制執行できます
養育費は間接強制可支払能力がなければ不可6月以内の分も開始可
民事執行法 第167条の15第1項

第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権についての強制執行は、前各款の規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が第百七十二条第一項に規定する方法により行う。ただし、債務者が、支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき、又はその債務を弁済することによつてその生活が著しく窮迫するときは、この限りでない。

財産開示手続や給与債権の情報取得を申し立てると、判明した給与債権の差押えも同時に申し立てたものとみなされます

扶養義務等に係る請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者が、財産開示手続(197条1項)又は給与債権に係る情報の取得(206条1項)を申し立てた場合には、その手続で判明した給与債権など(206条1項各号の債権)に対する差押命令の申立ても同時にしたものとみなされます(167条の17第1項)。申立ての際に反対の意思を表示すれば、この扱いはされません(同項ただし書)。財産開示期日に債務者が財産を開示しなかったときは、債権者が別段の意思を表示しない限り、執行裁判所は債務者の住所のある市町村に給与債権に係る情報の提供を命じなければなりません(同条2項)。この特例は令和6年の民法等の改正(令和6年法律第33号)で設けられ、2026年4月1日から施行されています。

試験ではこう問われる

  1. 養育費の定期金債権の一部に不履行があれば、確定期限が到来していない分についても債権執行を開始できる(151条の2第1項。R2 午後 問7 ウ ×)
  2. 養育費に基づいて給料債権を差し押さえるときは、給付の2分の1まで差し押さえられる(152条3項。R2 午後 問7 エ ○)
  3. 期限未到来分の差押えの対象は、確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権に限られる(151条の2第2項)
  4. 扶養義務等に係る金銭債権は、債務者に支払能力がない場合などを除き、間接強制の方法でも強制執行できる(167条の15第1項。H29 午後 問7 ア ×・出題当時)
  5. 間接強制は、6月以内に確定期限が到来する定期金についても開始できる(167条の16)

この用語が問われた肢

R2 問7 ウ誤り

【問】次に,債権者が養育費に係る確定期限の定めのある定期金債権について債務名義を有する場合において,その一部に不履行があるときは,当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても,債権執行を開始することができますか。 いいえ。その場合,当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについては債権執行を開始することはできません。

R2 問7 エ正しい

【問】それでは,養育費に係る金銭債権についての債務名義に基づいて,債務者の給料債権を差し押さえる場合に,当該給料債権の支払期に受けるべき給付の 4 分の1 に相当する部分を超えて差し押さえることはできますか。 はい。その場合には,当該給付の 2 分の 1 に相当する部分まで差し押さえることができます。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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