条件成就執行文と承継執行文じょうけんじょうじゅしっこうぶんとしょうけいしっこうぶん
条件成就執行文とは、請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合に、債権者がその事実の到来したことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り付与される執行文です(27条1項)。承継執行文とは、債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文で、その者に対し又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるか、債権者がそれを証する文書等を提出したときに付与されます(同条2項)。
単純な執行文は、債務名義のとおりに執行してよいことを示すだけです。これに対し、債務名義の請求が一定の事実の到来にかかっているときや、債務名義に表示された当事者以外の者のために又はその者に対して執行するときは、27条により、その事実や承継を確かめたうえで特別の執行文を付与します。

民事執行法 第27条第1項請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り、付与することができる。
債権者が証明すべき事実の到来に係る請求は、文書等を提出したときに限り執行文が付与されます
27条1項は、請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り、付与することができると定めています。これを条件成就執行文といいます。平成30年の肢は、この場合の執行文は事実の到来を証する文書を提出したときに限り付与できるとしており、正しいとされています。出題当時の条文は「文書」だけで、令和5年の改正により2026年5月21日から「又は電磁的記録」が加わりました。

口頭弁論終結後の承継人には、承継執行文で執行できます
執行証書以外の債務名義による強制執行は、債務名義に表示された当事者のほか、その債務名義成立後の承継人に対し、又はその者のためにすることができ、確定判決などでは口頭弁論終結後の承継人が基準になります(23条1項3号)。債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書又は電磁的記録を提出したときに限り付与されます(27条2項)。これを承継執行文といいます。土地の所有者Aが、土地上に建物を所有して土地を占有するBに建物収去土地明渡請求訴訟を提起し、全部認容判決が確定した後、事実審の口頭弁論終結後にAが土地をCに譲渡した事案では、Cは債権者側の承継人に当たります。「Cは、承継執行文の付与を受けることにより、その確定判決を債務名義として強制執行を申し立てることができる」という肢(R4 午後 問7 エ)は正しい記述です。
民事執行法 第23条第1項第3号前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)
民事執行法 第27条第2項債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書若しくは電磁的記録を提出したときに限り、付与することができる。
引換給付の反対給付は、執行文ではなく強制執行の開始の段階で証明します
債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り開始することができます(31条1項)。これは執行文付与の要件ではありません。「債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り、付与することができる」という肢(R4 午後 問7 オ)は誤りです。例外は意思表示を命ずる判決で、債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合には、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証する文書を提出したときに限り付与されます(177条2項)。意思表示の擬制では執行の開始という段階がなく、執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなされるからです(177条1項ただし書)。
民事執行法 第177条第2項債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。
文書等を提出できないときは執行文付与の訴えで付与を求め、債務者は異議の訴えで争います
27条1項・2項の文書又は電磁的記録を提出できないときは、債権者は執行文付与の訴えを提起できます(33条1項)。反対に、条件成就執行文や承継執行文が付与されたことについて、事実の到来や承継を争う債務者は、執行文付与に対する異議の訴えを提起できます(34条1項)。
試験ではこう問われる
- 口頭弁論終結後に債権者から土地を譲り受けた者は、承継執行文の付与を受けて確定判決で強制執行できる(23条1項3号・27条2項。R4 午後 問7 エ ○)
- 引換給付の反対給付又はその提供の証明は、執行文付与ではなく強制執行の開始の要件である(31条1項。R4 午後 問7 オ ×)
- 債権者の証明すべき事実の到来に係る請求の執行文は、事実の到来を証する文書を提出したときに限り付与できる(27条1項。H30 午後 問7 ウ ○・出題当時)
- 意思表示を命ずる判決が反対給付との引換えに係るときは、反対給付又はその提供を証する文書の提出が執行文付与の要件になる(177条2項)
- 承継を文書で証明できないときは、執行文付与の訴えを提起できる(33条1項)
この用語が問われた肢
土地の所有者Aが、その土地上に建物を所有して土地を占有しているBに対して建物収去土地明渡請求訴訟を提起し、その全部認容判決が確定した場合において、その事実審の口頭弁論終結後にAがCに対してその土地を譲渡したときは、Cは、承継執行文の付与を受けることにより、その確定判決を債務名義として強制執行を申し立てることができる。
債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り、付与することができる。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

