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強制執行の開始要件(送達・確定期限・担保・引換給付)きょうせいしっこうのかいしようけん

民事執行法 第2章 債務名義と執行文 過去問で4肢

強制執行の開始要件とは、執行文の付与とは別に、執行機関が強制執行を開始する際に確かめる要件です。債務名義の正本等があらかじめ又は同時に債務者に送達されていること(29条)、確定期限が到来していること、担保を立てたことを証する文書の提出(30条)、引換給付の反対給付又はその提供の証明(31条)がこれに当たります。

強制執行は、執行文の付された債務名義の正本があればすぐに始められるわけではありません。29条から31条までは、執行機関自身が開始の段階で確かめる要件を定めています。執行文の付与の段階で確かめる事項(27条)と、開始の段階で確かめる事項が分けられている点が問われます。

黒板の左右に執行文の付与と執行の開始を並べ、確かめる事項を振り分けた教室
確定期限の到来、担保を立てたことの証明、引換給付の反対給付の証明は、執行文付与ではなく強制執行の開始の要件です
確定期限は開始で担保の文書は開始で引換給付は開始で事実の到来は執行文で

債務名義の正本等は、あらかじめ又は同時に債務者に送達されていなければなりません

29条は、強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本若しくは謄本などが、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り開始することができると定めています。債務者に、何に基づいて執行されるのかを知らせるためです。27条により執行文が付与された場合には、執行文の謄本と債権者が提出した文書の謄本なども、あらかじめ又は同時に送達されなければなりません。29条には執行裁判所の許可で送達前に開始できるという定めはなく、許可を受ければ送達前に強制執行を開始することができるとした令和元年の肢は、誤りとされています。

執行官役の先生が玄関で債務者に判決正本の封筒を手渡す場面
強制執行は、債務名義の正本等があらかじめ又は同時に債務者に送達されたときに限り開始できます
あらかじめか同時に送達許可で省けない何で執行されるか知らせる
民事執行法 第29条第1項

強制執行は、債務名義若しくは確定により債務名義となるべき裁判の正本若しくは謄本又はその債務名義若しくは裁判に係る電磁的記録が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。第二十七条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文の謄本又は執行文に係る電磁的記録及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本又は電磁的記録に記録されている事項の全部を記録した電磁的記録も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。

確定期限の到来は、執行文付与ではなく開始の要件です

請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り開始することができます(30条1項)。確定期限は暦で明らかなので、執行機関が開始の段階で確かめれば足ります。確定期限の到来後に限り執行文を付与することができるとした平成30年の肢は、誤りとされています。これに対し、債権者の証明すべき事実の到来に係る請求は、執行文付与の段階で文書等による証明が求められます(27条1項)。扶養義務等に係る定期金債権については、一部に不履行があれば、確定期限が到来していないものについても債権執行を開始できる特例があります(151条の2第1項)。

民事執行法 第30条第1項

請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。

担保を立てることが条件の債務名義は、担保を立てたことを証する文書の提出で開始します

担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り開始することができます(30条2項)。担保を立てて仮執行をすることができる旨の宣言を付した判決がその例です。「担保を立てて仮執行をすることができる旨の宣言を付した判決による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる」という肢(R8 午後 問7 エ)は正しい記述です。担保の提供も、執行文の付与ではなく開始の段階で確かめます。

民事執行法 第30条第2項

担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。

引換給付の反対給付は、債権者が開始の段階で証明します

債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り開始することができます(31条1項)。執行文の付与の段階でこれを求めると、債権者は先に反対給付をしなければ執行文も得られず、先履行を強いられることになります。「債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り、付与することができる」という肢(R4 午後 問7 オ)は誤りです。債務者の給付が、他の給付について強制執行の目的を達することができない場合にその代わりにすべきもの(代償請求)であるときは、債権者がその目的を達することができなかったことを証明したときに限り開始することができます(31条2項)。

民事執行法 第31条第1項

債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。

試験ではこう問われる

  1. 担保を立てて仮執行できる旨の判決による強制執行は、担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り開始できる(30条2項。R8 午後 問7 エ ○)
  2. 引換給付の反対給付又はその提供の証明は、執行文付与ではなく強制執行の開始の要件である(31条1項。R4 午後 問7 オ ×)
  3. 確定期限の到来は、執行文付与の要件ではなく強制執行の開始の要件である(30条1項。H30 午後 問7 イ ×・出題当時)
  4. 債務名義の正本等は、あらかじめ又は同時に債務者に送達されていなければならず、執行裁判所の許可で送達前に開始できる定めはない(29条。R1 午後 問7 ウ ×・出題当時)

この用語が問われた肢

R8 問7 エ正しい

担保を立てて仮執行をすることができる旨の宣言を付した判決による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。

R4 問7 オ誤り

債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあったことを証明したときに限り、付与することができる。

解説と関連先例は肢別演習で読めます。

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