執行文(付与機関・付与の方法・再度付与)しっこうぶん
執行文とは、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる旨を付記して、債務名義の執行力の存在と範囲を示すものです(26条2項)。執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与し(同条1項)、少額訴訟の確定判決などでは原則として要りません(25条ただし書)。
執行文は、執行機関に、この債務名義で今この債権者がこの債務者に強制執行をしてよいことを示す付記です。債務名義を作った機関と執行を行う機関が別なので、執行力の有無と範囲の判断を記録を持つ裁判所書記官や公証人に任せ、執行機関はそれを前提に執行を始めます。強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施します(25条本文)。

民事執行法 第25条第1項強制執行は、執行文の付された債務名義の正本(債務名義に係る電磁的記録がファイルに記録されたものである場合にあつては記録事項証明書、債務名義が電磁的記録をもつて作成された執行証書である場合にあつては公証人法(明治四十一年法律第五十三号)第四十四条第一項第二号の書面又は同項第三号の電磁的記録。以下同じ。)に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その債務名義の正本に基づいて実施する。
執行文は、強制執行をすることができる旨を債務名義の正本の末尾に付記して付与します
26条2項は、執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に行うと定め、書面の債務名義では、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法によります(同項3号)。「執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う」という肢(R4 午後 問7 ウ)は正しい記述です。令和5年の改正で、2025年10月1日からは、債務名義に係る電磁的記録がファイルに記録されたものである場合などに、その電磁的記録に併せて記録する方法が加わりました(同項1号・2号)。出題当時の26条2項は正本の末尾に付記する方法だけを定めており、現行法でも書面の債務名義については同じです。
民事執行法 第26条第2項第3号前二号に掲げる場合以外の場合における執行文の付与 債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法
付与するのは、執行証書以外は裁判所書記官、執行証書は公証人です
26条1項により、判決や和解調書などの執行文は事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書の執行文はその原本を保存する公証人が付与します。どちらも申立てにより付与します。「執行証書が書面をもって作成されている場合には、当該執行証書についての執行文は、申立てにより、当該執行証書の原本を保存する公証人が付与する」という肢(R8 午後 問7 ア)は正しい記述です。付与の申立てに関する処分に不服があるときは、32条の異議の申立てによります。
民事執行法 第26条第1項執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本(執行証書が電磁的記録をもつて作成されている場合にあつては、当該電磁的記録)を保存する公証人が付与する。
少額訴訟の確定判決・仮執行宣言付少額訴訟判決・支払督促では、執行文が要りません
25条ただし書は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その債務名義の正本に基づいて実施すると定めています。簡易迅速な手続で作られた債務名義を、そのまま執行に使えるようにしたものです。「仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決により、これに表示された当事者に対し、又はその者のために強制執行をするには、執行文の付与を受けることを要しない」という肢(R4 午後 問7 イ)は正しい記述です。表示された当事者以外の者(承継人など)との間で執行するときは、ただし書の対象外なので執行文が必要になります。
執行文の再度付与は、正本が数通必要なときか滅失したときに限られます
28条1項は、執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができると定めています。同じ債務名義で重ねて執行されることを防ぐため、場合を限っています。「執行文は、執行文の付された債務名義の正本が滅失したときであっても、再度付与することができない」という肢(R8 午後 問7 イ)は誤りです。少額訴訟の確定判決などの正本を更に交付する場合にも、28条1項が準用されます(同条2項)。

民事執行法 第28条第1項執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。
試験ではこう問われる
- 執行文の付与は、強制執行をすることができる旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法で行う(26条2項3号。R4 午後 問7 ウ ○)
- 仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決に表示された当事者間の強制執行には、執行文は要らない(25条ただし書。R4 午後 問7 イ ○)
- 執行文の付された債務名義の正本が滅失したときは、執行文を再度付与できる(28条1項。R8 午後 問7 イ ×)
- 書面で作成された執行証書の執行文は、原本を保存する公証人が付与する(26条1項。R8 午後 問7 ア ○)
- 執行文は申立てにより付与する(26条1項)
この用語が問われた肢
執行証書が書面をもって作成されている場合には、当該執行証書についての執行文は、申立てにより、当該執行証書の原本を保存する公証人が付与する。
執行文は、執行文の付された債務名義の正本が滅失したときであっても、再度付与することができない。
仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決により、これに表示された当事者に対し、又はその者のために強制執行をするには、執行文の付与を受けることを要しない。
執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。
解説と関連先例は肢別演習で読めます。

