代金の納付と売却による登記の嘱託(申立ての取下げの制限)だいきんののうふとばいきゃくによるとうきのしょくたく
売却許可決定が確定すると、買受人は裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付し(78条1項)、代金を納付した時に不動産を取得します(79条)。代金が納付されると、裁判所書記官が、買受人の取得した権利の移転の登記と、売却により消滅した権利の登記や差押えの登記などの抹消を嘱託します(82条1項)。
不動産の売却は、代金の納付によって完結します。代金の納付で不動産が買受人に移り、裁判所書記官の嘱託で登記が買受人名義に改められます。

民事執行法 第79条第1項買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。
買受人は、売却許可決定の時ではなく代金を納付した時に不動産を取得します
売却許可決定が確定したときは、買受人は裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付しなければなりません(78条1項)。買受けの申出の保証として提供した金銭は代金に充てられます(同条2項)。買受人が売却代金から配当を受けるべき債権者であるときは、売却許可決定が確定するまでに申し出て、配当を受けるべき額を差し引いて代金を納付することもできます(同条4項)。不動産を取得する時期は、代金を納付した時です(79条)。
代金を納付しないと売却許可決定は効力を失い、保証は返還されません
買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定はその効力を失い、買受人は提供した保証の返還を請求することができません(80条1項)。次順位買受けの申出があるときは、執行裁判所はその申出について売却の許可又は不許可の決定をしなければなりません(同条2項)。
民事執行法 第80条第1項買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は、その効力を失う。この場合においては、買受人は、第六十六条の規定により提供した保証の返還を請求することができない。
買受けの申出の後の取下げには同意が要りますが、代金不納付で決定が効力を失えば買受人の同意は要りません
買受けの申出があった後に強制競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意を得なければなりません(76条1項本文)。買受けのために手続に加わった者の利益を守るためで、この規定は担保不動産競売にも準用されます(188条)。もっとも、買受人が代金を納付しないと売却許可決定は効力を失うので(80条1項)、その者はもはや買受人ではありません。次順位買受申出人もいなければ、同意を得るべき者はいません。平成25年には、買受人が期限までに代金を納付せず次順位買受申出人もいない場合でも、買受人の同意を得なければ不動産担保権の実行の申立てを取り下げることができないとした肢が出題され、誤りとされています。
民事執行法 第76条第1項買受けの申出があつた後に強制競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意を得なければならない。ただし、他に差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)がある場合において、取下げにより第六十二条第一項第二号に掲げる事項について変更が生じないときは、この限りでない。
代金納付の後、裁判所書記官が移転の登記と抹消の登記を嘱託します
買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、買受人の取得した権利の移転の登記(82条1項1号)、売却により消滅した権利又は売却により効力を失った権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹消(同項2号)、差押え又は仮差押えの登記の抹消(同項3号)を嘱託しなければなりません。嘱託に要する登録免許税その他の費用は買受人の負担です(同条4項)。

民事執行法 第82条第1項買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、次に掲げる登記及び登記の抹消を嘱託しなければならない。
一 買受人の取得した権利の移転の登記
二 売却により消滅した権利又は売却により効力を失つた権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹消
三 差押え又は仮差押えの登記の抹消
試験ではこう問われる
- 代金不納付で売却許可決定が効力を失い次順位買受申出人もいないときは、申立ての取下げに買受人の同意は要らない(76条1項・80条1項・188条。H25 午後 問7 エ ×・出題当時)
- 買受人は代金を納付した時に不動産を取得する(79条)
- 買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は効力を失い、保証の返還を請求できない(80条1項)
- 代金納付の後、裁判所書記官が移転の登記と、消滅した権利や差押えの登記の抹消を嘱託する(82条1項)
- 買受人等の申出があれば、指定された司法書士などに嘱託情報を登記所へ提供させる方法で嘱託する(82条2項)

