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引渡命令ひきわたしめいれい

民事執行法 第3章 不動産執行 過去問で1肢

引渡命令とは、代金を納付した買受人の申立てにより、執行裁判所が債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずる決定です(83条1項本文)。事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者には発せられず(同項ただし書)、代金を納付した日から6月(抵当建物使用者が占有していた建物は9月)を経過すると申し立てられません(同条2項)。

引渡命令は、代金を納付した買受人が、明渡しの訴えを提起しなくても、競売手続の中で不動産の引渡しを実現できるようにした決定です。引渡命令は、執行抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判で、確定して効力を生ずると債務名義になります(22条3号、83条4項・5項)。買受人は、引渡命令に執行文の付与を受けて、引渡しの強制執行を申し立てます。

競売の対象外の小屋が建つ土地の前で、執行裁判所役の先生が土地の引渡命令を掲げる
担保不動産競売の土地上に競売の対象でない建物があっても、土地の引渡命令を発することができます
対象外の建物があっても可建物の収去は別の債務名義担保不動産競売にも準用
民事執行法 第83条第1項

執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。

相手方は、債務者と、買受人に対抗できない占有者です

引渡命令は、債務者又は不動産の占有者に対して発せられます(83条1項本文)。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、発することができません(同項ただし書)。債務者以外の占有者に対して引渡命令を発するときは、その者を審尋しなければなりません。事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるときや、既にその者を審尋しているときは、審尋は要りません(同条3項)。

民事執行法 第83条第3項

執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し第一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。

申立ては代金納付から6月以内、抵当建物使用者の建物は9月以内です

買受人は、代金を納付した日から6月を経過したときは、引渡命令の申立てをすることができません。買受けの時に抵当建物使用者が占有していた建物の買受人については9月です(83条2項)。引渡命令の申立てについての裁判に対しては執行抗告ができ(83条4項)、引渡命令は確定しなければ効力を生じません(同条5項)。9月とされているのは、抵当建物使用者が、買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは建物を引き渡さなくてよいとされているからです(民法395条1項)。

代金納付から6月と9月の二本の帯が伸び、その先が通行止めの時間軸の黒板
引渡命令の申立ては、代金納付の日から6月以内、抵当建物使用者が占有していた建物は9月以内にしなければなりません
代金納付から6月抵当建物使用者は9月確定して効力
民法 第395条第1項

抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者

担保不動産競売にも準用され、土地上に競売の対象でない建物があっても土地の引渡命令を発することができます

83条は担保不動産競売に準用されます(188条)。平成25年には、執行裁判所は、担保不動産競売の対象とされた土地上にその競売の対象とされていない建物が存在する場合であっても、当該土地を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができるとした肢が出題され、正しいとされています。判例も、競売の対象とされた土地上に競売の対象外の建物などが存在する場合であっても、土地の買受人の申立てにより、債務者又は占有者に対して土地の引渡命令を発することができるとしています(最決平成11年10月26日)。建物の存在で敷地部分の引渡しの執行が事実上できなくなるとしても、申立ての利益は否定されず、発令を許さないと、買受人に簡易迅速な占有取得の手段を与える引渡命令の趣旨に反するからです。もっとも、土地の引渡命令で競売の対象外の建物を収去することはできず、収去を求めるには建物収去土地明渡しの訴えなどで別に債務名義を得る必要があります。

試験ではこう問われる

  1. 担保不動産競売の土地上に競売の対象でない建物があっても、土地の引渡命令を発することができる(83条1項・188条、最決平成11年10月26日。H25 午後 問7 オ ○・出題当時)
  2. 引渡命令は、代金を納付した買受人の申立てにより発せられる(83条1項)
  3. 事件の記録上買受人に対抗できる権原により占有していると認められる者には、引渡命令は発せられない(83条1項ただし書)
  4. 代金納付の日から6月(抵当建物使用者が占有していた建物は9月)を経過すると申し立てられない(83条2項)
  5. 引渡命令の申立てについての裁判に対しては執行抗告ができ、引渡命令は確定しなければ効力を生じない(83条4項・5項)

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