消除主義と引受主義(売却に伴う権利の消滅)しょうじょしゅぎとひきうけしゅぎ
消除主義とは、売却によって不動産上の担保権などを消滅させる考え方で、先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は売却により消滅します(59条1項)。引受主義とは、買受人に権利を引き受けさせる考え方で、留置権と、使用及び収益をしない旨の定めのない質権で59条2項の適用がないものについては、買受人がその被担保債権を弁済する責任を負います(同条4項)。
競売で不動産を売るとき、その不動産に付いている担保権や用益権を売却後も残すか消すかが問題になります。59条は、抵当権などは売却で消し(消除主義)、留置権などは買受人に引き受けさせる(引受主義)という組合せを定めています。

民事執行法 第59条第1項不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。
抵当権・先取特権・使用収益をしない質権は、売却で消滅します
59条1項により、不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅します。これらの担保権者は売却代金から配当を受けるので、権利を残す必要がありません。これらの権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得も、売却によりその効力を失います(同条2項)。最先順位の抵当権の登記より後に設定された賃借権や地上権は、この規定によって効力を失います。

民事執行法 第59条第2項前項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失う。
差押え・仮差押えの執行と、対抗できない仮処分の執行も効力を失います
不動産に係る差押え、仮差押えの執行及び1項により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない仮処分の執行は、売却によりその効力を失います(59条3項)。売却により効力を失わない権利の取得や仮処分の執行は、裁判所書記官が作成する物件明細書に記載されます(62条1項2号)。
留置権と使用収益をする質権は消滅せず、買受人が被担保債権を弁済する責任を負います
不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で59条2項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによって担保される債権を弁済する責めに任じます(59条4項)。留置権には優先弁済を受ける効力がなく、配当によって満足を得ることができないので、権利を残して買受人に引き受けさせています。平成25年には、不動産の上に存する留置権は売却により消滅するとした肢が出題され、誤りとされています。
民事執行法 第59条第4項不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で第二項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。
売却基準価額が定められる時までの合意で、権利の変動を変えられます
利害関係を有する者が、売却基準価額が定められる時までに、59条1項、2項又は4項の規定と異なる合意をした旨の届出をしたときは、売却による不動産の上の権利の変動は、その合意に従います(59条5項)。
民事執行法 第59条第5項利害関係を有する者が次条第一項に規定する売却基準価額が定められる時までに第一項、第二項又は前項の規定と異なる合意をした旨の届出をしたときは、売却による不動産の上の権利の変動は、その合意に従う。
試験ではこう問われる
- 不動産の上に存する留置権は売却で消滅せず、買受人が被担保債権を弁済する責任を負う(59条4項。H25 午後 問7 ア ×・出題当時)
- 抵当権・先取特権・使用及び収益をしない旨の定めのある質権は、売却により消滅する(59条1項)
- 消滅する担保権者や差押債権者に対抗できない権利の取得は、売却により効力を失う(59条2項)
- 差押え・仮差押えの執行は、売却により効力を失う(59条3項)
- 売却基準価額が定められる時までに異なる合意の届出があれば、権利の変動はその合意に従う(59条5項)

