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虚偽表示の無効と94条2項の「第三者」きょぎひょうじのむこうときゅうじゅうよんじょうにこうのだいさんしゃ

民法 第2章 法律行為と意思表示 過去問で134肢

虚偽表示とは、相手方と通じてした虚偽の意思表示のことで、当事者間では無効です(94条1項)。その無効は善意の第三者に対抗することができず(94条2項)、第三者とは、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者で、虚偽表示の外形を基礎として新たに法律上の利害関係を有するに至った者をいいます。

借金取りから土地を隠すため、友人と口裏を合わせて土地を売ったことにし、登記も友人名義に移したとします。本当に売る気は二人ともないので、この売買は無効です。ところが登記を信じて友人から土地を買った人がいると、無効だからと土地を取り上げられては困ります。自分で嘘の外観を作った元の持ち主より、外観を信じた人を守るべきだからです。そこで民法は、相手方と通じてした虚偽の意思表示を無効としつつ、その無効を善意の第三者に対抗できないとしています(94条)。

登記所の窓口の場面。窓口の前に三人。左に男性(札「A(元の持ち主)」)が頭を抱え、中央に男性(札「B(仮装の買主)」)が登記簿を指さして笑い、右に男性(札「C(買主)」)が売買契約書を持って立っている。AとBの間に破れた契約書「仮装の売買」

相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効で、当事者とその相続人に対しては誰に対しても無効を主張できます

94条1項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効とすると定めています。通謀、虚偽の表示、意思表示の三つがそろえば無効で、当事者は互いに相手方に無効を主張できます。仮装の買主が死亡した場合、相続人は買主の地位をそのまま引き継ぐ包括承継人なので、偽装を知らなかったとしても第三者には当たらず、売主は相続人に無効を主張できます。虚偽表示による売買は、当事者が無効であることを知って追認しても、新たな行為をしたものとみなされるだけで(119条ただし書)、遡って有効になるわけではありません。「AとBが、当該売買の日から 1 か月後に、これが無効であることを知って追認したときは、当該売買は、初めから有効であったものとみなされる」という肢(R8 問5 ア)は誤りです。代理人が相手方と通謀して売買契約を仮装した場合、意思の不存在の有無は代理人について決するので(101条1項)、本人が通謀を知らなかったとしても契約は無効です。

94条2項の「第三者」は、当事者と包括承継人以外の者で、虚偽表示の外形を基礎として新たに独立の法律上の利害関係を持った者です

94条2項は、前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができないと定めています。判例は、ここでいう第三者を、虚偽表示の当事者又はその包括承継人以外の者で、虚偽表示の外形を基礎として新たに法律上の利害関係を有するに至った者としています(大判大正5年11月17日、最判昭和45年7月24日)。仮装譲受人から目的物に抵当権の設定を受けた者、目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者(最判昭和48年6月28日)、仮装の抵当権から転抵当権の設定を受けた者(最判昭和55年9月11日)は、外形を信じて新たな関係に入った者なので第三者に当たります。仮装の売買契約の売主の債権者が、仮装の売買代金債権を差し押さえた場合も同じで、仮装の買主は虚偽表示を証明しても、善意の差押債権者に無効を対抗できません。これに対し、差押えをしていない単なる金銭債権者は、特定の目的物について利害関係を持っていないので第三者に当たりません。仮装譲受人の相続人、土地の仮装譲受人がその土地上に建てた建物の賃借人(最判昭和57年6月8日)、借地上の建物が仮装譲渡された場合の土地の賃貸人(最判昭和38年11月28日)も、仮装された目的物について新たな利害関係を持った者ではないので第三者に当たりません。

  • 仮装譲受人から抵当権の設定を受けた者第三者に当たります
  • 目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者第三者に当たります(最判昭和48年6月28日)
  • 仮装の抵当権から転抵当権の設定を受けた者第三者に当たります(最判昭和55年9月11日)
  • 仮装譲受人と売買予約をした者第三者に当たります。善意は予約完結権を行使した時で判断します(最判昭和38年6月7日)
  • 差押えをしていない仮装譲受人の金銭債権者第三者に当たりません
  • 仮装譲受人の相続人包括承継人なので第三者に当たりません
  • 土地の仮装譲受人が建てた建物の賃借人土地について法律上の利害関係がなく、第三者に当たりません(最判昭和57年6月8日)
  • 借地上の建物が仮装譲渡された場合の土地の賃貸人第三者に当たりません(最判昭和38年11月28日)

第三者に当たるかは、仮装された目的物について外形を信じて新たな関係に入ったかどうかで決まります

仮装譲受人から目的物について抵当権の設定を受けた者と、仮装譲受人が譲り受けた目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者は第三者に当たります。これに対し、土地の賃借人が所有する地上建物を他に仮装譲渡した場合の土地賃貸人、財産の仮装譲渡を受けた者の相続人、土地の仮装譲受人から地上建物を賃借した者は第三者に当たりません。仮装の抵当権から善意で転抵当権の設定を受けた者に対しては、原抵当権の設定が無効であることを主張できません。仮装譲受人の相続人は、善意であっても第三者に当たらないので、仮装譲渡人は相続人に所有権を主張できます。借地上の建物を仮装譲渡された土地の賃貸人Aは第三者に当たらないので、建物の仮装譲受人Bを賃借権の譲受人として扱って地代の支払を求めることはできません。

教室の板書の図解。黒板の中央に「A→B 仮装譲渡」と書かれ、そこから下に枝分かれした線が伸びて、左側に丸印のグループ「抵当権の設定を受けた者」「差し押さえた一般債権者」「転抵当権者」、右側に×印のグループ「Bの相続人」「Bが建てた建物の賃借

善意かどうかは利害関係を持った時で判断し、その後に悪意になっても保護され、無過失も登記も要りません

善意は、第三者が法律上の利害関係を有するに至った時を基準に判断されます。差押債権者であれば差押えの時に善意であれば保護され、その後に悪意になっても保護は失われません。反対に、差押えの前に事情を知った債権者は保護されません。売買予約をした者については、物権を取得するのは予約完結権を行使して売買が成立した時なので、その時を基準に善意かを判断します(最判昭和38年6月7日)。条文は善意だけを求めており、判例は無過失を要しないとしています(大判昭和12年8月10日)。登記についても、虚偽表示の当事者は第三者から見て権利を承継した前主であって対抗関係に立たないので、第三者は登記がなくても保護されます(最判昭和44年5月27日)。「Cへの所有権の移転の登記がされていなかったとしても、Aは、AB間の売買の無効をCに対抗することができない」という肢(R8 問5 イ)は正しいです。善意については、判例・実務は第三者の側が自らの善意を主張立証しなければならないとしています(最判昭和35年2月2日)。

転得者は、直接の第三者が悪意でも自ら善意なら保護され、直接の第三者が善意なら悪意でも権利を取得します

仮装譲受人Bから悪意のCが譲り受け、さらにCから善意のDが譲り受けた場合、判例は、94条2項の第三者には虚偽表示の相手方と直接取引をした者だけでなく、その者からの転得者も含まれるとしています(最判昭和45年7月24日)。外形を信頼して取引に入った点では、転得者も直接の第三者と変わらないからです。「CがAB間の売買契約が仮装されたものであることを知っていたときは、Dがこれを知らなかったとしても、Dは、Aに対し、甲土地の所有権を主張することはできない」という肢(R5 問5 オ)は誤りです。反対に、善意のCから悪意のDが譲り受けた場合は、善意のCが確定的に権利を取得し、Dはそれを承継するので、Dは悪意でも権利を取得します(大判昭和6年10月24日)。この考え方を絶対的構成といいます。

善意の第三者と仮装譲渡人からの譲受人とは対抗関係に立ち、第三者が保護されても先に対抗要件を備えた賃借人には勝てません

AがBと通じて土地をB名義にし、善意のCがBから買い受けた後、Aが同じ土地をDに譲渡した場合、判例は、AとBを一体として、A=Bを起点とするCとDへの二重譲渡と同じに扱い、CとDは対抗関係に立つとしています。登記を先に備えた方が優先するので、Cは登記がなければDに所有権の取得を対抗できません。94条2項はAとの関係でCの権利取得を認めるだけなので、Cが土地を取得しても、それより前に土地の賃借人Dが借地上の建物の登記によって賃借権の対抗力を備えていれば、CはDの賃借権を否定できません。Dが仮装譲渡を知っていたかどうかは関係がありません。177条の第三者との関係は物権変動の語で扱います。

民法 第94条第1項

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

民法 第94条第2項

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

民法 第101条第1項

代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。

試験ではこう問われる

  1. 当事者が仮装売買の無効を知って追認しても、新たな行為とみなされるだけで初めから有効にはならない(119条。R8 問5 ア ×)
  2. 仮装譲受人から善意で譲り受けた者は、所有権の移転の登記がなくても保護される(最判昭和44年5月27日。R8 問5 イ ○)
  3. 悪意の第三者から善意で譲り受けた転得者も94条2項の第三者として保護される(最判昭和45年7月24日。R5 問5 オ ×)
  4. 仮装譲受人の相続人は包括承継人であり、善意でも94条2項の第三者に当たらない
  5. 仮装譲受人から抵当権の設定を受けた者・目的物を差し押さえた一般債権者・転抵当権者は第三者に当たり、地上建物の賃借人(最判昭和57年6月8日)と借地上建物の仮装譲渡の土地賃貸人(最判昭和38年11月28日)は当たらない
  6. 善意は利害関係を持った時で判断し、第三者に無過失は要らない(大判昭和12年8月10日)
  7. 善意の第三者と仮装譲渡人からの譲受人とは対抗関係に立ち、登記の先後で優劣が決まる(177条)

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