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地役権の性質(付従性・随伴性・不可分性・承役地所有者の義務)ちえきけんのせいしつ

民法 第7章 用益物権 過去問で141肢

地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地(承役地)を自己の土地(要役地)の便益に供する物権です(280条)。要役地の所有権に従たる権利として、その所有権とともに移転し、要役地から切り離して譲渡することはできません(281条)。

自分の土地から駅へ出るのに、隣の人の土地を通らせてもらえると便利です。このとき、隣の土地を通る権利を物権として設定するのが地役権です。地役権は人のためではなく土地のための権利なので、土地の持ち主が替われば新しい持ち主に引き継がれ、権利だけを切り離して売ることはできません。土地どうしの便益を長く安定させるために、民法は地役権を要役地にくっついた権利として扱っているのです。

住宅地の場面。奥の家の土地(札「要役地」)から、手前の隣家の土地(札「承役地」)の端を通る細い通路が公道へ伸びている。通路の上を男性(札「地役権者」)が歩き、隣家の庭先で男性(札「承役地の所有者」)が見送っている。先生が測量士役(札「測量士

地役権は要役地の便益のための権利で、土地が隣接していなくても、無償でも、期間を定めなくても設定できます

280条は、地役権者は設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有すると定めています。便益を受ける土地を要役地、便益を提供する土地を承役地といいます。眺望のための地役権や引水のための地役権のように、離れた土地の間でも便益は成り立つので、要役地と承役地が隣接している必要はありません。対価の支払は地役権の要素ではなく、無償の地役権も設定できます。存続期間の定めも要りません。地役権は承役地の所有権を制限して要役地の利用価値を高める権利なので、地役権者による承役地の使用は、地役権の目的を達成するのに必要であり、かつ、承役地の所有者のために損害が最も少ない範囲に限られます。

地役権は要役地の所有権とともに移転し、要役地から切り離して譲渡することはできません

281条1項は、地役権は要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるとし、設定行為に別段の定めがあるときは除くと定めています。要役地に地上権の設定を受けた者も、要役地のための地役権を行使できます。「Aが所有する甲土地を承役地とし,Bが所有する乙土地を要役地とする通行地役権が設定され,その登記がされた後,Cが乙土地に地上権の設定を受けた場合には,Cは,当該通行地役権を行使することができない」という肢(R3 問10 エ)は誤りです。要役地の所有権を相続した者も、別段の定めがなければ地役権を承継します。地役権は要役地の便益のための手段にすぎないので、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることはできません(同条2項)。地役権は要役地の所有権とともに移転するので、要役地の譲受人は、要役地の所有権移転登記をすれば、地役権の移転登記がなくても地役権を承役地の所有者に対抗できます(大判大正13年3月17日)。「A所有の甲土地にB所有の乙土地のための地役権が設定され、その後、BがCに乙土地を売却し、その旨の登記がされた場合には、Cは、Aに対し、甲土地の地役権を主張することができる」という肢(R6 問10 ア)は正しいです。

板書の図解。左に甲土地(札「要役地・A」)、右に乙土地(札「承役地・B」)、二つの土地の間に通路の矢印「地役権」。甲土地から下に矢印「売買・所有権移転登記」が伸び、新しい所有者(札「譲受人C」)につながる。地役権の矢印もCへ一緒に移っている

要役地が共有のときは、地役権がなるべく存続し共有者を一律に扱うように、不可分性の規定が置かれています

地役権は要役地全体のための権利なので、共有者ごとにばらばらに扱いません。土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について存する地役権を消滅させることができません(282条1項)。「A所有の甲土地に、B、C及びDが共有する乙土地のための地役権が設定されている場合には、Bは、乙土地の自己の持分につき、当該地役権を消滅させることができない」という肢(R6 問10 ウ)は正しいです。土地の分割又はその一部の譲渡の場合には、地役権はその各部のために存しますが、地役権がその性質により土地の一部のみに関するときは、この限りでありません(282条2項)。「A所有の甲土地にB所有の乙土地上の丙建物からの眺望を確保するための地役権が設定されている場合において、Bが乙土地のうち丙建物が存しない部分をCに譲渡したときは、当該地役権は、Cが取得した土地のためにも存続する」という肢(R6 問10 エ)は誤りです。土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も取得します(284条1項)。要役地が数人の共有に属する場合に、その一人のために消滅時効の完成猶予又は更新があるときは、他の共有者のためにも効力を生じます(292条)。

  • 持分についての消滅(282条1項)共有者の一人は、自分の持分についてだけ地役権を消滅させることができません
  • 分割・一部譲渡(282条2項)地役権は各部のために又は各部について存続します
  • 一人の時効取得(284条1項)他の共有者も地役権を取得します
  • 取得時効の更新(284条2項)地役権を行使する各共有者に対してしなければ効力を生じません
  • 取得時効の完成猶予(284条3項)一人に事由があっても、時効は各共有者のために進行します
  • 消滅時効の完成猶予・更新(292条)一人のためにあれば、他の共有者のためにも効力を生じます

承役地の所有者が工作物を設ける義務を負ったときは、その特定承継人も義務を負います

286条は、設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担すると定めています。地役権の内容と一体になった義務なので、承役地を買った人にも引き継がれます。承役地の所有者は、いつでも、地役権に必要な土地の部分の所有権を放棄して地役権者に移転し、この義務を免れることができます(287条)。地役権の行使を妨げない範囲で工作物を使うこともでき、その場合は利益を受ける割合に応じて設置と保存の費用を分担します(288条)。「Aが所有する甲土地を承役地とし,Bが所有する乙土地を要役地とする通行地役権が設定されている場合において,Bが地役権の行使のために甲土地に通路を設置したときは,Aは,その通路を使用することができない」という肢(R3 問10 ウ)は誤りです。

地役権に基づいて妨害排除・妨害予防は請求できますが、承役地の明渡しは請求できません

地役権も物権なので、地役権に基づく物権的請求権が認められます。承役地の所有者が通路に大型トラックを止めて通行を妨げれば、地役権者は撤去を請求できます。判例も、通路に車両を恒常的に駐車させて通行を妨げる者に対し、地役権に基づく妨害排除ないし妨害予防請求権に基づいて駐車の禁止を求めることができるとしています(最判平成17年3月29日)。しかし、地役権は承役地を目的の範囲で使用する権利にすぎず、承役地を占有する権能を含まないので、承役地の返還(明渡し)は請求できません。「Aが所有する甲土地にBのために通行地役権が設定されている場合において、Cが甲土地を権原なく占有してBの通行を妨害しているときは、Bは、Cに対し、地役権に基づいて甲土地の明渡しを請求することができる」という肢(R7 問7 オ)は誤りです。

通路の上に大型トラック(札「承役地の所有者のトラック」)が止められ、男性(札「地役権者」)が通れずに立ち止まっている場面。先生が弁護士役(札「弁護士」)で地役権者の横に立ち、書面を持っている。書面の題「トラックの撤去を求める通知」。先生の吹
民法 第280条

(地役権の内容)
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

民法 第281条第1項

地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。

民法 第281条第2項

地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。

民法 第292条

要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の完成猶予又は更新があるときは、その完成猶予又は更新は、他の共有者のためにも、その効力を生ずる。

試験ではこう問われる

  1. 地役権は要役地の所有権とともに移転し、要役地の譲受人は所有権の移転の登記をすれば承役地の所有者に地役権を主張できる(281条1項。大判大正13年3月17日。R6 問10 ア ○)
  2. 地役権は要役地について存する他の権利の目的となり、要役地の地上権者も通行地役権を行使できる(281条1項。R3 問10 エ ×)。要役地に抵当権の登記があるときは、地役権の登記の抹消に抵当権者の承諾を証する情報が要る(R4 午後 問22 オ ○)
  3. 要役地の共有者の一人は、その持分につき地役権を消滅させることができない(282条1項。R6 問10 ウ ○)
  4. 要役地の一部を譲渡しても地役権は各部のために存するが、性質により土地の一部のみに関する地役権は譲渡された部分のためには存続しない(282条2項ただし書。R6 問10 エ ×)
  5. 承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲で、地役権者が設けた通路を使用できる(288条1項。R3 問10 ウ ×)
  6. 地役権に基づき妨害排除は請求できるが、承役地の明渡しは請求できない(R7 問7 オ ×)
  7. 承役地の地役権の登記では地役権者の氏名・住所を登記せず、地役権者が複数でも持分を申請情報の内容としない(不動産登記法80条2項。R4 午後 問13 ア ×)。要役地に所有権の登記が無いときは設定の登記ができない(同条3項。R4 午後 問22 ウ ○)

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