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地役権の時効取得と消滅時効(283条・289条〜293条)ちえきけんのじこうしゅとくとしょうめつじこう

民法 第7章 用益物権 過去問で6肢

地役権の時効取得とは、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができる地役権を、163条の要件を満たす行使によって取得することです(283条)。地役権の消滅時効は20年で(166条2項)、起算点は行使が継続的かどうかで分かれます(291条)。

隣の人が好意で通路を通らせてくれていたのに、20年たったら通る権利を時効で取られてしまうとしたら、誰も隣人に親切にできなくなります。そこで民法は、地役権の時効取得を、継続的に行使され、外から見て分かるものに限りました。判例はさらに、通行地役権なら、通る側が自分で通路を開設したことまで求めています。黙認しているだけの承役地の所有者を守るための絞り込みです。

裏山のふもとの場面。手前の家の土地(札「要役地の所有者」)の男性が、隣の空き地にスコップで砂利を敷き、通路を作っている。隣の家の窓から男性(札「承役地の所有者」)が眺めている。先生が土地家屋調査士役(札「調査士」)で通路の入口に立つ。先生の

地役権は継続的に行使され、かつ外形上認識できるものに限って時効取得できます

283条は、地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができると定めています。地中の送水管のように外から見えない形で引水していても、引水地役権は時効取得できません。「Aが、B所有の甲土地の地中に通された送水管を使用して、外形上認識し得ない形でA所有の乙土地への引水を継続して行っていた場合には、Aは、乙土地のための甲土地の引水地役権を時効によって取得することができない」という肢(R6 問10 オ)は正しいです。時効取得の期間は、所有権以外の財産権の取得時効(163条)として、善意無過失なら10年、そうでなければ20年です。要件を絞ったのは、自分の土地を他人が使うのを黙認する寛容な所有者が、知らないうちに地役権を時効取得されて害されないようにするためです。時効取得の要件として通行の対価の支払は求められていません。要役地の共有者の一人が時効取得すれば他の共有者も取得すること(284条1項)は、地役権の性質の語で扱います。

通行地役権の時効取得には、要役地の所有者自身が承役地の上に通路を開設したことが必要です

判例は、283条による通行地役権の時効取得について、継続の要件として、承役地となる他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によってなされることを要するとしています(最判昭和30年12月26日)。承役地の所有者が自分で開いた通路を隣人が通っているだけなら、所有者の好意による黙認にとどまるからです。承役地の所有者が開設した通路では足りず、要役地の所有者が自ら通路を開設して継続的に通行の用に供することが必要です。要役地の賃借人が通路を開設した場合は、要役地の所有者が開設したことになりません。

板書の図解。上段に「承役地の所有者が開設した通路」→「×時効取得できない」、中段に「要役地の賃借人が開設した通路」→「×」、下段に「要役地の所有者が開設した通路」→「○」。三つの通路の絵が並ぶ。先生が教師役(札「先生」)で下段を指している。

地役権の消滅時効は20年で、継続的に行使される地役権は行使を妨げる事実が生じた時から起算します

地役権は所有権以外の財産権なので、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは時効によって消滅します(166条2項)。起算点について291条は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算すると定めています。通路を開設して通行する地役権は継続的に行使される地役権なので、通らなくなった時ではなく、通路が壊されるなど行使を妨げる事実が生じた時から起算します。地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅します(293条)。幅3メートルの通路の地役権で2メートル分しか使っていなければ、残りの1メートル分だけが消滅時効の対象になります。承役地の占有者が取得時効に必要な要件を備える占有をしたときも、地役権は消滅します(289条)が、地役権者が権利を行使すればその消滅時効は中断します(290条)。

  • 時効取得の要件(283条)継続的に行使され、かつ、外形上認識できる地役権に限ります
  • 通行地役権の継続要役地の所有者自身による通路の開設が必要です(最判昭和30年12月26日)
  • 消滅時効の期間(166条2項)権利を行使できる時から20年です
  • 起算点(291条)継続的でない地役権は最後の行使の時、継続的な地役権は行使を妨げる事実が生じた時です
  • 一部の不行使(293条)行使しない部分だけが消滅します
  • 承役地の時効取得(289条・290条)承役地の占有者が取得時効の要件を備えると地役権は消滅しますが、地役権の行使で中断します
板書の図解。時間の矢印の上に、左から「通路の開設」「最後に通行した日」「通路が壊された日(行使を妨げる事実)」。「通路が壊された日」から右へ「20年」の矢印。先生が教師役(札「先生」)で「通路が壊された日」を指している。先生の吹き出し「継続
民法 第283条

(地役権の時効取得)
地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。

民法 第291条

(地役権の消滅時効)
第百六十六条第二項に規定する消滅時効の期間は、継続的でなく行使される地役権については最後の行使の時から起算し、継続的に行使される地役権についてはその行使を妨げる事実が生じた時から起算する。

民法 第293条

地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみが時効によって消滅する。

最判昭和30年12月26日

通行地役権の時効取得については、いわゆる「継続」の要件として、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要する

試験ではこう問われる

  1. 地役権は継続的に行使され、かつ、外形上認識できるものに限り時効取得でき、地中の送水管による外形上認識し得ない引水では引水地役権を時効取得できない(283条。R6 問10 オ ○)
  2. 通行地役権の時効取得には、要役地の所有者自身による承役地上の通路の開設が要り、承役地の所有者や要役地の賃借人が開設した通路では足りない(最判昭和30年12月26日)
  3. 通行の対価の支払は、地役権の時効取得の要件ではない
  4. 継続的に行使される地役権の消滅時効は、最後に通行した時ではなく、行使を妨げる事実が生じた時から起算する(291条)
  5. 地役権者が権利の一部を行使しないときは、その部分だけが時効によって消滅する(293条)

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