供託の効果(債務の消滅)きょうたくのこうか
弁済供託をした時に債権は消滅し、質権や抵当権も消えますが、債権者が受諾せず供託を有効とする判決も確定しない間は供託者が取り戻せ、取り戻せば供託しなかったものとみなされます。債務が消える時点と、取戻しができなくなる事由、時効の起算点が肢で突かれます。
供託の効果は、民法494条1項後段により、弁済者が供託をした時に債権が消滅することです。債権の消滅に伴って質権や抵当権などの担保も消え、債務者は遅延損害金の負担からも解放されます。ただし民法496条により、債権者が供託を受諾せず、供託を有効と宣告した判決も確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができ、取り戻せば供託をしなかったものとみなされます。債務の消滅は取戻しの可能性を残した状態で生じ、受諾などで取戻権が消えて初めて確定します。肢で突かれるのは、消滅の時点、取戻しができなくなる事由、還付請求権と取戻請求権の時効の進み方です。
民法 第494条第1項弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
一 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
二 債権者が弁済を受領することができないとき。

債権は供託の時に消滅し、還付の時ではありません
供託の効果は供託をした時に生じます。「弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託したときは、その債権は、債権者がその供託物の還付を受けた時に消滅する」という肢は誤りです。債権者が還付を受けるかどうかにかかわらず、供託の時に債務者は債務を免れます。令和2年4月1日施行の債権法改正で、供託の時に債権が消滅することが民法494条1項に明文化されました。
質権や抵当権が消滅したときは取り戻せません
民法496条2項により、供託によって質権または抵当権が消滅した場合には取戻しができません。「弁済者は、供託によって質権が消滅した場合であっても、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託物を取り戻すことができる」という肢は誤りです。取戻しを認めると消えた担保を復活させることになり、後順位の担保権者などの利益を害するからです。供託法8条2項は、民法496条による取戻しのほか、供託が錯誤に出たことや供託原因が消滅したことを証明すれば取り戻せるとします。
取戻請求権の放棄は撤回できません
供託者が供託所に対して取戻請求権を放棄する意思表示をすると、取戻請求権は消滅し、債務の消滅が確定します。「弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない」という肢は正しい肢です。被供託者の受諾も同じ効果を持ち、受諾の後は撤回できません。執行供託では、差押えの申立てが取り下げられても第三債務者は取り戻せず、「供託原因が消滅したことを払渡請求事由として,供託金を取り戻すことができる」という肢は誤りです。
還付と取戻しの時効は別々に進みます
供託物払渡請求権の消滅時効は、還付請求権と取戻請求権で起算点が違います。受領拒絶の供託では、還付請求権の時効は紛争が解決して権利行使を現実に期待できる時から進み、取戻請求権の時効は供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進みます。「供託物取戻請求権の消滅時効の更新の効力が生じた場合には、同一の供託に係る供託物還付請求権の消滅時効は、その時から新たに進行する」という肢は誤りで、一方の更新は他方に及びません。供託官が被供託者に供託に関する事項の証明書を交付したときは、供託実務では還付請求権の時効は更新されるが取戻請求権の時効は更新されないと扱われています。「供託金還付請求権の消滅時効及び供託金取戻請求権の消滅時効は,いずれも中断する」という肢は誤りです。
受諾の書面でも還付請求権の時効は更新されません
被供託者が受諾の書面を提出しても、供託所が被供託者の権利を承認したことにはなりません。「弁済供託の被供託者から供託所に対し、供託を受諾する旨を記載した書面が提出された場合であっても、供託物還付請求権の消滅時効の更新の効力を生じない」という肢は正しい肢です。他方で供託実務では、供託者の請求で供託に関する書類の全部が閲覧に供されたときは、供託所が取戻請求権を承認したものとして時効が更新されると扱われています。「書類の全部が閲覧に供された場合であっても、供託物取戻請求権の消滅時効の更新の効力を生じない」という肢は誤りです。
民法 第496条(供託物の取戻し)
債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。
試験ではこう問われる
- 債権はいつ消滅するか(供託の時。還付の時ではない)
- 質権や抵当権が消滅した供託を取り戻せるか(取り戻せない)
- 取戻請求権の放棄を撤回できるか(できない。受諾も撤回できない)
- 取戻請求権の時効更新は還付請求権に及ぶか(及ばない。被供託者への証明書交付は還付請求権だけを更新する)
- 受諾書面の提出で還付請求権の時効は更新するか(しない。書類全部の閲覧は取戻請求権を更新する)
この用語が問われた肢
債権者が弁済を受領することができない場合において、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託したときは、その債権は、債権者がその供託物の還付を受けた時に消滅する。
弁済者は、供託によって質権が消滅した場合であっても、債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、供託物を取り戻すことができる。
弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない。
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