還付請求かんぷせいきゅう
被供託者が供託物を受け取る権利を行使する払渡請求で、供託法8条1項により還付を受ける権利を証明して請求します。誰が還付請求できるか、一部受領の留保が付けられるか、管轄違いの供託でも還付できるかが肢で突かれます。
還付請求は、供託物を受け取る権利を持つ被供託者が供託所に対してする払渡請求です。民法498条1項が弁済供託の債権者に還付請求権を与え、供託法8条1項が還付を請求する者に権利の証明を求めます。供託は供託者と供託所の間の手続ですが、還付によって被供託者が利益を受けるので、被供託者は第三者のためにする契約の受益者に近い立場に立ちます。肢で突かれるのは、誰が還付請求できるか、一部として受け取る留保が付けられるか、管轄を間違えた供託でも還付できるか、債権はいつ消えるかです。
供託法 第8条第1項供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ法務大臣ノ定ムル所ニ依リ其権利ヲ証明スルコトヲ要ス

弁済供託の債権は供託の時に消え、還付の時ではありません
民法494条1項は、弁済者が供託をした時にその債権は消滅すると定めます。被供託者が還付を受けた時ではなく、供託が成立した時点で債務者は免責されます。「債権者が弁済を受領することができない場合において、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託したときは、その債権は、債権者がその供託物の還付を受けた時に消滅する」という肢は誤りです。だから有効な供託がされた後は、被供託者は債務者に請求できず、供託所に対して還付請求をするしかありません。供託者が取り戻すと供託をしなかったものとみなされ、債権が復活します。
一部として受け取る留保を付けて還付請求ができます
債権額に争いがあって債務者が自分の主張する額を供託したときでも、被供託者は損害賠償金や債権の一部として受領する旨の留保を付けて還付請求ができます。留保を付けずに受け取ると供託額で債権が消えたと扱われるおそれがあるので、留保が被供託者の残額請求を守ります。「不法行為に基づく損害賠償債務について、債務者及び債権者の間で損害賠償の額に争いがあるために受領拒絶を原因とする弁済供託がされた場合において、被供託者が還付請求をするときは、損害賠償金の一部として受領する旨の留保を付すことはできない」という肢は誤りです。留保は供託物払渡請求書の払渡請求の事由欄に記載します。
管轄違いの供託所に供託されていても還付を請求できます
弁済供託を管轄外の供託所にすると本来は無効ですが、被供託者が還付を請求すれば供託を受諾したことになり、供託実務では有効な供託として扱われます。「弁済供託が供託をすべき供託所以外の供託所に供託されている場合であっても、被供託者は、当該供託に係る供託金の還付を請求することができる」という肢は正しい肢です。管轄違いを理由に還付を拒むと、債務者が供託し直す手間が増えるだけで誰の利益にもならないからです。一方で供託者の側から見れば、管轄違いの供託は錯誤を理由に取り戻す対象にもなります。
債権者不確知の供託では被供託者以外の第三者は還付を受けられません
被供託者をAまたはBとする債権者不確知の供託では、還付請求ができるのはAかBのどちらかです。第三者Cが自分に実体上の権利があることを確定判決で証明しても、被供託者として指定されていない以上、供託所に対して還付を請求することはできません。「被供託者をA又はBとして債権者不確知を原因とする弁済供託がされている場合には,第三者Cが,被告をA及びBとする訴えを提起し,当該供託に係る債権の実体上の権利をCが有することを確認する旨の確定判決を添付して供託金払渡請求をしたとしても,Cは,供託物の還付を受けることはできない」という肢は正しい肢です。Cが受け取るには、AかBから還付請求権の譲渡を受けるなどの手順を踏みます。
執行供託の差押債権者は直接還付請求ができません
執行供託では、供託の時点で誰が払渡しを受けるかが決まっていないので、差押債権者が供託所に直接還付請求をすることはできません。執行裁判所が配当等を実施し、支払委託によって払い渡されます。「金銭債権が差し押さえられた場合において,第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託したときは,差押債権者は,その取立権に基づき供託所に直接還付請求をすることができる」という肢は誤りです。裁判上の保証供託の担保権利者は反対に、配当手続によらず供託所に直接還付を請求します。「民事訴訟における被告が訴訟費用の担保として供託された供託金の払渡しを受けようとする場合には、裁判所の配当手続によらず、供託所に対して還付を請求する方法によらなければならない」という肢は正しい肢です。
民法 第498条第1項弁済の目的物又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。
試験ではこう問われる
- 弁済供託の債権が消滅する時期を還付の時にすり替える肢
- 一部として受領する留保を付けた還付請求を否定する肢
- 管轄外の供託所にされた供託の還付を否定する肢
- 債権者不確知の供託で被供託者以外の第三者が確定判決で還付を受けられるとする肢
- 執行供託の差押債権者と保証供託の担保権利者の還付の可否を入れ替える肢
この用語が問われた肢
債権者が弁済を受領することができない場合において、弁済者が債権者のために弁済の目的物を供託したときは、その債権は、債権者がその供託物の還付を受けた時に消滅する。
不法行為に基づく損害賠償債務について、債務者及び債権者の間で損害賠償の額に争いがあるために受領拒絶を原因とする弁済供託がされた場合において、被供託者が還付請求をするときは、損害賠償金の一部として受領する旨の留保を付すことはできない。
弁済供託が供託をすべき供託所以外の供託所に供託されている場合であっても、被供託者は、当該供託に係る供託金の還付を請求することができる。
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