取戻請求とりもどしせいきゅう
供託者が供託物を取り戻す払渡請求で、供託法8条2項により民法496条の取戻し、錯誤、供託原因の消滅のいずれかを証明して請求します。取戻しができなくなる事由、添付書類の要否、取戻請求権の放棄が肢で突かれます。
取戻請求は、供託者が供託物を自分に戻すよう供託所に求める払渡請求です。供託法8条2項は、民法496条の規定によること、供託が錯誤に出たこと、供託の原因が消滅したことのいずれかを証明しなければ取り戻せないと定めます。弁済供託の取戻しは債権者が受諾せず有効判決も確定しない間に限られ、取り戻すと供託をしなかったものとみなされて債権が復活します。肢で突かれるのは、どの事由で取り戻せるか、取戻しを封じる事実は何か、添付書類に何が要るか、取戻請求権を放棄できるかです。
供託法 第8条第2項供託者ハ民法第四百九十六条ノ規定ニ依レルコト、供託カ錯誤ニ出テシコト又ハ其原因カ消滅シタルコトヲ証明スルニ非サレハ供託物ヲ取戻スコトヲ得ス

取戻しの事由は民法496条、錯誤、原因消滅の三つです
民法496条の取戻しは、債権者が供託を受諾せず、供託を有効と宣告した判決も確定していない間に弁済供託を取り戻す場面です。供託によって質権や抵当権が消滅した場合は、同条2項により受諾や判決がなくても取り戻せません。錯誤は、供託の要件を欠くなど本来すべきでない供託をしてしまった場面で、供託が錯誤に出たことを証する書面を添えます。供託原因の消滅は、裁判上の保証供託で担保取消決定が確定した場面や、仮差押解放金の供託で仮差押命令が取り消された場面が代表例です。「保全命令に係る担保供託について,担保の事由が消滅し,その供託物の取戻請求をするときは,供託者は,供託物払渡請求書に担保取消決定正本及びその確定証明書又はこれに代えて供託原因の消滅を証する裁判所の証明書を添付しなければならない」という肢は正しい肢です。
不受諾を理由とする取戻しには権利を証する書面が要りません
被供託者が受諾していないことを理由に弁済供託を取り戻すときは、供託書の供託者と払渡請求書の請求者の住所氏名が一致していれば足ります。供託規則25条1項ただし書により副本ファイルの記録で権利が明らかなので、取戻しをする権利を有することを証する書面は要りません。受諾がないことは供託所の記録を見れば分かるので、不受諾を証する書面も添付しません。「被供託者が供託を受諾しないことを理由として,供託者が供託金の取戻しを請求する場合においては,供託書上の供託者の住所及び氏名と供託物払渡請求書上の払渡請求者の住所及び氏名とが同一であっても,供託物払渡請求書に取戻しをする権利を有することを証する書面を添付しなければならない」という肢は誤りです。「弁済供託の被供託者が供託を受諾しないことを理由として供託者が供託物の取戻しを請求するときは、供託物払渡請求書に被供託者が供託を受諾しなかったことを証する書面を添付しなければならない」という肢も誤りです。
口頭の受諾では取戻しを封じられず、書面の受諾で封じられます
供託規則47条は、弁済供託の債権者が供託所に対して供託を受諾する旨を記載した書面を提出できると定めます。被供託者が口頭で受諾を申し出ているだけでは供託所の記録に残らず、供託者は取り戻すことができます。「被供託者が供託所に対し,口頭で供託を受諾する旨を申し出ているにすぎない場合には,供託者は,供託物の取戻しをすることができる」という肢は正しい肢です。数人の被供託者のうち一人が受諾したときは、受諾した部分だけが取り戻せなくなり、残りの部分は取り戻せます。「共有建物の賃貸借における賃料について受領拒否を原因とする弁済供託がされている場合において,数人の被供託者のうち一人が受諾をしたときは,供託者は,当該受諾に係る部分以外の供託金についても,取戻請求をすることができない」という肢は誤りです。
取戻請求権を放棄すると撤回できません
供託者は供託所に対して取戻請求権を放棄する旨の意思表示をすることができ、放棄によって取戻請求権は消滅します。放棄は供託所に対する一方的な意思表示なので、いったん到達すれば撤回できません。「弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない」という肢は正しい肢です。放棄があると供託は確定的に有効になり、被供託者の還付請求権だけが残ります。
取戻請求権が差し押さえられると保管替えや差替えができません
営業保証供託の供託者が主たる事務所を移転したときの保管替えや、供託物を別の金銭や有価証券に入れ替える差替えは、取戻しを前提とする手続です。取戻請求権に差押えがされているときは供託者が自由に処分できないので、保管替えも差替えもできません。「営業保証供託に係る供託金の差替えは,供託金の取戻請求権が差し押さえられているときは,することができない」という肢は正しい肢です。「営業保証供託として供託した供託金の差替えは、当該供託金取戻請求権が差し押さえられている場合であっても、することができる」という肢は誤りです。
民法 第496条第1項債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。
試験ではこう問われる
- 取戻しの三つの事由に当たらない事実で取戻しを認める肢
- 不受諾を理由とする取戻しに権利を証する書面や不受諾の証明書面を要求する肢
- 口頭の受諾で取戻しができなくなるとする肢や、一人の受諾で全部を封じる肢
- 取戻請求権の放棄を撤回できるとする肢
- 取戻請求権が差し押さえられているときの保管替えや差替えを認める肢
この用語が問われた肢
保全命令に係る担保供託について,担保の事由が消滅し,その供託物の取戻請求をするときは,供託者は,供託物払渡請求書に担保取消決定正本及びその確定証明書又はこれに代えて供託原因の消滅を証する裁判所の証明書を添付しなければならない。
弁済供託の被供託者が供託を受諾しないことを理由として供託者が供託物の取戻しを請求するときは、供託物払渡請求書に被供託者が供託を受諾しなかったことを証する書面を添付しなければならない。
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