供託の受諾きょうたくのじゅだく
弁済供託の被供託者が供託所に対して供託を受け入れる旨を書面で意思表示することで、民法496条1項により供託者の取戻しができなくなります。受諾の方式、撤回の可否、誰が受諾できるか、留保付きの受諾で肢が作られます。
供託の受諾は、弁済供託の被供託者が供託所に対して供託を受け入れる旨の意思表示をすることです。民法496条1項により、債権者が供託を受諾すると供託者は供託物を取り戻せなくなり、供託が確定的に有効になります。供託規則47条は、受諾する旨を記載した書面を供託所に提出できると定め、供託官はその書面を譲渡通知書等つづり込帳に編てつして取戻しを止めます。肢で突かれるのは、受諾の方式と添付書類、撤回の可否、被供託者以外に受諾できる者がいるか、留保を付けた受諾ができるかです。
民法 第496条第1項債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。

受諾は書面でし、印鑑証明書は要りません
受諾は供託所に対して書面でする意思表示で、口頭の申出では供託所の記録に残らず、取戻しを止める効力がありません。受諾書には記名押印すれば足り、印鑑証明書を添付する必要はありません。「供託を受諾する旨を記載した書面には,印鑑証明書を添付することを要しない」という肢は正しい肢です。「被供託者が供託所に対し書面により供託を受諾する旨の意思表示をする場合には、当該書面に記名押印すれば足り、当該書面に押された印鑑に係る印鑑証明書を添付することを要しない」という肢も正しい肢です。受諾は供託物を受け取る行為ではなく、受け取る権利を確定させる行為なので、払渡しほど厳格な本人確認を求めていません。
受諾した後は撤回できません
受諾は供託所に対する一方的な意思表示で、到達すれば供託者の取戻請求権が消滅します。いったん消滅した取戻請求権を被供託者の都合で復活させることはできないので、受諾の撤回は認められません。「受諾をした後は,これを撤回することができない」という肢は正しい肢です。「被供託者は,供託物の還付請求をするまでの間は,供託所に対してした供託受諾の意思表示を撤回することができる」という肢は誤りです。受諾しても還付請求権の消滅時効が更新されるわけではなく、供託所が債務を承認したことにはなりません。
還付請求権の譲渡通知は受諾の意思表示になります
被供託者が供託物還付請求権を譲渡して供託所に書面で通知をすると、受諾する旨が明示されていなくても、供託実務では供託を受諾したものとして扱われます。還付請求権を譲渡する以上、供託を有効なものとして認めているとみるのが自然だからです。「被供託者が供託所に対し,書面によって供託物還付請求権の譲渡の通知をした場合であっても,その通知に供託を受諾する旨が積極的に明示されていない限り,供託者は,供託物の取戻しをすることができる」という肢は誤りです。「被供託者が供託物還付請求権を譲渡し、供託所に対し書面によりその旨の通知をした場合であっても、当該書面に供託を受諾する旨が積極的に明示されていない限り、供託者は、供託物の取戻請求をすることができる」という肢も誤りです。譲渡通知の後は供託者の取戻しができなくなります。
代位債権者は受諾でき、仮差押債権者は受諾できません
被供託者の債権者が民法423条の債権者代位権で還付請求をできる立場にあるときは、代位権の行使として被供託者に代わって受諾することもできます。「被供託者の債権者が債権者代位権を行使することにより供託物の還付請求をすることができる場合には,当該債権者は,債権者代位権の行使として,被供託者に代わって,受諾をすることができる」という肢は正しい肢です。一方で還付請求権を仮差押えしただけの債権者は、取立権を持たないので受諾できません。「供託物払渡請求権の仮差押債権者は、当該供託物払渡請求権に係る供託を受諾することができる」という肢は誤りです。還付請求権を差し押さえて取立権を得た債権者は受諾できるので、仮差押えと差押えで結論が分かれます。
留保付きで受諾でき、不確知の受諾に債権者の証明は要りません
債権額に争いがある供託でも、債権者は債権の一部弁済として受領する旨の留保を付けて受諾できます。「金額に争いのある債権について,債務者が債務の全額に相当するものとして弁済供託をした場合には,債権者は,債権の一部弁済として受領する旨の留保を付して供託を受諾することはできない」という肢は誤りです。被供託者をAまたはBとする債権者不確知の供託で、Aが自己の債権額に相当する部分について受諾するときは、自分が債権者であることを証明する必要はありません。「債権者を確知することができないことを理由として、被供託者をA又はBとする弁済供託がされた場合において、Aが供託所に対し、自己の債権額に相当する部分につき、当該供託を受諾する旨の意思表示をするときは、Aは、自らが債権者であることを証明しなければならない」という肢は誤りです。証明が要るのは受諾ではなく還付請求の場面です。
供託規則 第47条(受諾書等の提出)
弁済供託の債権者は、供託所に対し供託を受諾する旨を記載した書面又は供託を有効と宣告した確定判決の謄本若しくは当該確定判決の内容を記載した書面であつて裁判所書記官が当該書面の内容が当該確定判決の内容と同一であることを証明したものを提出することができる。
試験ではこう問われる
- 受諾書に印鑑証明書を要求する肢や、口頭の受諾で取戻しを封じる肢
- 受諾を還付請求まで撤回できるとする肢
- 還付請求権の譲渡通知に受諾の明示がなければ取戻しができるとする肢
- 債権者代位権を行使する債権者と仮差押債権者の受諾の可否を入れ替える肢
- 留保付きの受諾を否定する肢や、債権者不確知の受諾に債権者であることの証明を要求する肢
この用語が問われた肢
被供託者が供託所に対し書面により供託を受諾する旨の意思表示をする場合には、当該書面に記名押印すれば足り、当該書面に押された印鑑に係る印鑑証明書を添付することを要しない。
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