政党(政党助成・党議拘束・除名)せいとう
政党とは、政治上の信条や意見を共通にする者が任意に結成する政治結社で、国民の政治意思を国政に媒介する役割を担うものです。憲法に政党の明文はありませんが、判例は議会制民主主義を支える不可欠の要素として政党の存在を当然に予定しているとし、政党助成法・政治資金規正法・公職選挙法がそれぞれの目的に応じた定めを置いています。
比例代表の選挙では、投票用紙に候補者ではなく政党の名前を書きます。同じ考えの人が自由に集まった結社に、国民の意思を国会へ届ける役目を任せているからです。憲法に政党の条文はありませんが、議会制民主主義は政党なしには動かないので、判例は政党の存在を当然に予定されたものとみます。私的な結社でありながら公的な役割を担うため、国がどこまで関われるか、党内のもめごとを裁判所が裁けるかが問題になります。

憲法に明文はありませんが、政党の存在は当然に予定されています
政党とは、政治上の信条や意見を共通にする者が任意に結成する団体で、国民の政治意思を国政に媒介する役割を担うものをいいます。憲法に政党に関する特別の規定はありませんが、最大判昭和45年6月24日(八幡製鉄政治献金事件)は、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することができないとして、憲法は政党の存在を当然に予定しており、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素であって国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であると述べました。結社の自由(21条1項)に支えられた私的団体でありながら、公的な役割を果たすところに難しさがあります。「政党は、憲法には直接規定されていないが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないから、憲法は政党の存在を当然に予定している」という肢(R7 問2 イ)は正しいです。最大判昭和58年4月27日は参議院の拘束名簿式比例代表制について、最大判平成16年1月14日は非拘束名簿式比例代表制について、憲法43条1項・47条が選挙制度の仕組みを国会の裁量に委ねていることを前提に、政党を媒体とする名簿式比例代表制の採用はその裁量の範囲に属するとしました。政党について定める法律は、それぞれの法律の目的に応じた規定を置いているにすぎません。政党を正面から定義する一般法はなく、政党助成法と公職選挙法で政党の要件が異なることもあります。政党が国の政治的意思形成過程に重要な役割を果たすようになった政党国家の現象は、政党が広く国民と議会を媒介する組織として発達した段階に生じました。制限選挙のもとで議員個人の結合にとどまっていた段階では、政党はなお議会の内部の会派にすぎませんでした。選挙権が広がって有権者が増え、その票をまとめる組織として政党が国民と議会を媒介するようになった段階で、政党が国の意思形成を事実上主導する現象が生じたからです。
- 政党助成法国が政党交付金を交付する。所属国会議員5人以上、または国会議員1人以上かつ直近の国政選挙での得票率2パーセント以上が要件
- 政治資金規正法収支の報告と寄附の量的・質的制限を定め、資金の透明性を確保する
- 公職選挙法比例代表で名簿届出政党等を選挙の単位とし、小選挙区では候補者届出政党に独自の選挙運動を認める
- 国会法比例代表選出議員が他の名簿届出政党等に所属したときの退職を定める
資金の透明性を法律で規律することは許されますが、設立の許可制は許されません
政党の結成と活動は結社の自由(21条1項)で保障されます。「憲法第21条第 1 項は、結社の自由を保障しており、政党の結成についても同項による保障の範囲に含まれる」という肢(R7 問2 ウ)は正しいです。もっとも、政党は公的な性格を帯びるため、資金の出所や使途が不透明だと特定の資金提供者が政治を歪めるおそれがあります。そこで、政党の活動資金の適切性・透明性が確保されるよう法律で規律しても、憲法に抵触することにはなりません。政治資金規正法が定める収支の公開や寄附の量的・質的制限は、政党の綱領や内部の意思決定そのものに国が立ち入るものではなく、腐敗の防止という目的と合理的に関連しているからです。これに対し、公的助成を行うことを理由に、役員・党員等の名簿や活動計画書を提出させたうえで政党の設立を許可する制度を設けることは許されません。名簿や活動計画書の提出を条件とする許可制は、結社の自由に対する事前の抑制にあたり、政党を国家の監督下に置くことになるからです。政党は政府を批判して政権交代を担う存在ですから、時の政府が設立の可否を握れば議会制民主主義の基盤そのものが崩れます。党員名簿の提出を強いることは、党員の思想・良心の自由(19条)にも触れます。現行の政党助成法も、交付を受けようとする政党に役員の氏名などの届出を求めるにとどまり、設立を許可にかからせてはいません。助成を受けるための要件を定めることと、政党の設立自体を許可にかからせることとは、区別して考えます。

政党交付金には議員数や得票率の要件があり、交付に条件を付けたり使途を制限したりすることはできません
政党助成法は、議会制民主政治における政党の機能の重要性にかんがみ、国が政党に政党交付金を交付し、政党の届出と使途の報告などの措置を講じて、民主政治の健全な発展に寄与することを目的とします。交付金の総額は人口に250円を乗じた額を基準とし、交付を受けられる政党は、所属する国会議員が5人以上であるか、国会議員が1人以上いてかつ直近の国政選挙で得票率2パーセント以上であることが要件です。助成の対象となる政党に一定の議員数又は得票率を求めるため、既成政党が優遇されているという批判があります。交付にあたっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならないと定められています(政党助成法4条2項)。公金を渡すことが政党の政策や内部運営への国の介入の手段にならないよう、結社としての自律性を最大限に尊重する趣旨です。政党が議会制民主主義を支える不可欠の要素であることを理由に、結社としての活動の自由の制約をやむを得ないとする考え方は、この規定の根拠にはなりません。その論理からは、公費を投入する以上は条件や使途の制限も許されるという結論のほうが導かれるからです。公職選挙法も政党を選挙の担い手として扱い、衆議院と参議院の比例代表選挙で名簿を届け出ることができるのは、所属国会議員の数、直近の国政選挙の得票率、その選挙の候補者数のいずれかの要件を満たす政治団体に限られます(公職選挙法86条の2・86条の3)。最大判平成11年11月10日は、この政党要件を含む比例代表制について、選挙制度の仕組みは国会の広い裁量に委ねられており、政党を選挙で重要な役割を果たすものとして扱うことには合理性があるとして合憲としました。政党の規模の大小で選挙への参加機会が均等でないことは信条又は社会的身分による差別に当たる疑いがある、という見解は、この制度への批判です。

政党の内部処分には、原則として司法審査が及びません
最判昭和63年12月20日(共産党袴田事件)は、政党を、国民の政治的意思を国政に媒介する最も有力な存在であって議会制民主主義を支えるうえできわめて重要なものと位置づけ、政党には高度の自主性と自律性を与えて自主的に組織運営をなし得る自由を保障しなければならないとしました。政党は、党員に対して政治的忠誠を要求し、一定の統制を施すなどの自治権能を有します。党員に対する統制の根拠は、党規約などの政党が自律的に定めた規範にあります。議員の免責特権(51条)は院外での法的責任を免除するもので、所属政党が議院での発言や表決を理由に党員である議員を処分することまで妨げるものではありません。「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について院外で責任を問われないため、議員が行ったこれらの行為を理由として、その所属政党が当該議員に対して除名その他の処分をすることは許されない」という肢(R7 問2 ア)は誤りです。政党が党員に対してした処分の当否は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権が及びません。「政党がその所属党員に対してした処分について、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる場合には、裁判所は、適正な手続に則って当該処分がされたか否かのみを審査してその当否を判断すべきである」という肢(R7 問2 エ)は誤りです。政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきだからです。ただし、除名が党員の一般市民としての権利利益に影響する場合には、審査の余地が生まれます。「政党が党員に対してした除名処分は,当該政党の自治的措置に委ねられるものであるから,その有効性について裁判所が審理判断することは許されない」という肢(R2 問3 ア)は誤りです。その場合でも審査は、政党が自律的に定めた規範が公序良俗に反しない限りその規範に照らし、規範がなければ条理に基づいて、適正な手続がとられたかの範囲にとどまります。処分の内容が当を得ているかどうかに、裁判所は立ち入りません。同じ考え方は選挙の場面にも及びます。最判平成7年5月25日(日本新党繰上補充事件)は、名簿届出政党から除名された名簿登載者について、選挙会は除名が有効かどうかを審査せず、除名届が適法にされているかという形式的な事項だけを確かめて繰上補充の当選人を決めるとしました。除名の有効性を行政機関が審査すれば、政党の組織内の自律的運営に介入することになるからです。

政党間の批判に対する反論文掲載請求権は認められません
政党間の批判であっても、名誉毀損に当たらない場合に、批判された政党が同じ新聞紙上に反論文を掲載する権利をもつわけではありません。最判昭和62年4月24日(サンケイ新聞事件)は、記事に取り上げられたというだけの理由で反論文を無修正かつ無料で掲載させる反論権の制度は、新聞に紙面と費用の負担を強いて批判的な記事の掲載をためらわせ、表現の自由(21条)に重大な影響を及ぼすとして、具体的な成文法の根拠がない以上、反論文掲載請求権をたやすく認めることはできないとしました。名誉毀損の不法行為が成立する場合の救済は別の問題です。政党への献金については最大判昭和45年6月24日(八幡製鉄政治献金事件)が、会社は自然人たる国民と同様に国や政党の特定の政策を支持し推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとし、政治資金の寄附も定款所定の目的の範囲内の行為とみることができるとしました。強制加入団体がする政治献金とは、扱いが異なります。議員の地位と政党の関係は自由委任の原則で扱います。
最判昭和63年12月20日(共産党袴田事件)政党は、政治上の信条、意見等を共通にする者が任意に結成する政治結社であって、内部的には、通常、自律的規範を有し、その成員である党員に対して政治的忠誠を要求したり、一定の統制を施すなどの自治権能を有するものである。
試験ではこう問われる
- 憲法は政党の存在を当然に予定している(最大判昭和45年6月24日・八幡製鉄政治献金事件。R7 問2 イ ○)
- 政党の結成は21条1項の結社の自由の保障に含まれ、設立を許可にかからせる制度は許されない(R7 問2 ウ ○)
- 議員の免責特権があっても、所属政党が議院での演説・討論・表決を理由に議員を処分することは妨げられない(R7 問2 ア ×)
- 政党の内部処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権が及ばない(最判昭和63年12月20日・共産党袴田事件。R7 問2 エ ×)
- 処分が党員の一般市民としての権利利益を侵害する場合は司法審査が及ぶが、自律的規範に照らして適正な手続にのっとったかの範囲にとどまる(共産党袴田事件。R2 問3 ア ×)
- 政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、又は使途を制限してはならない(政党助成法4条2項)
- 名誉毀損が成立しない限り、批判された政党に反論文掲載請求権は認められない(最判昭和62年4月24日・サンケイ新聞事件)

