現場助勢罪・凶器準備集合罪げんじょうじょせいざいきょうきじゅんびしゅうごうざい
現場助勢罪とは、傷害罪又は傷害致死罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者を、自ら人を傷害しなくても処罰する罪です(206条)。凶器準備集合罪とは、二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合に、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者を処罰する罪です(208条の2)。
けんかの現場では、殴り合う本人のほかに、周りで「やれやれ」とはやし立てる人がいて、それが騒ぎを大きくします。また、相手を襲うために武器を持って集まれば、まだ誰も殴っていなくても、周囲の人は強い不安を感じます。刑法は、けがをさせた本人を処罰するだけでなく、こうした周辺の行為も、傷害の危険を高め、社会の平穏を乱すものとして、傷害の罪の章の中で独立に処罰しています。

現場助勢罪は傷害罪・傷害致死罪が行われた場合にだけ成立し、幇助に当たるときは成立しません
206条は「前二条の犯罪が行われるに当たり」と定めており、前二条とは204条の傷害罪と205条の傷害致死罪です。そのため、現場で行われた行為が暴行罪にとどまるときは、現場助勢罪は成立しません。殴り合いのけんかに通り掛かり「もっとやれ」と言ってはやし立てても、当事者の暴行が暴行罪にとどまる場合には、現場助勢罪は成立しません。また、判例は、現場助勢罪を、幇助に当たらない程度の扇動的な行為を処罰するものと捉え、特定の正犯を幇助したといえる場合には傷害罪の幇助犯が成立するとしています(大判昭和2年3月28日)。法定刑は一年以下の拘禁刑(拘禁刑は令和7年6月から。それ以前は懲役・禁錮)又は十万円以下の罰金若しくは科料です。
凶器準備集合罪は、共同して害を加える目的で、凶器を準備して又は準備があることを知って集合した者に成立します
208条の2第1項は集合した者を、第2項は人を集合させた者を処罰します。害を加える対象は、他人の生命、身体又は財産です。他人の家屋を共同して損壊する目的でハンマーや斧を準備して集合した事例でも、凶器準備集合罪が成立します。凶器には、銃や刀のように性質上の凶器のほか、用法によっては人を殺傷することができる物も含まれます。最決昭和45年12月3日は、長さ1メートル前後の角棒について、用法によっては人の生命、身体又は財産に害を加えるに足り、これを準備して集合すれば社会通念上人に危険感を抱かせるに足りるとして、凶器に当たるとしました。これに対し、相手の車両に衝突させる意図でエンジンを切った状態で路上に駐車させていたダンプカーは、人を殺傷する用具として利用される外観を呈しておらず、社会通念に照らして直ちに他人に危険感を抱かせるに足りるものではないので、凶器に当たりません(最判昭和47年3月14日)。この場合、ダンプカーの準備があることを知って合流した者に凶器準備集合罪は成立しません。「集合」には、凶器を準備して一定の場所に集まる場合のほか、既に集まっている者がその場で凶器を準備して共同加害の目的を有するに至った場合も含まれます。公園で雑談していた者らが、その場にあった角材を手に取った後に共同加害の目的を有するに至った事例でも、凶器準備集合罪が成立します。相手の襲撃に備えて迎え撃つ目的で集合した場合は、客観的に襲撃が切迫している状況がなくても成立します。

- 目的他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的
- 集合した者(208条の2第1項)凶器を準備して、又はその準備があることを知って集合する。二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金
- 集合させた者(208条の2第2項)凶器を準備して、又はその準備があることを知って人を集合させる。三年以下の拘禁刑
- 凶器に当たる長さ1メートル前後の角棒、ハンマー、斧
- 凶器に当たらないエンジンを切って駐車させたダンプカー
集合の状態が続く限り凶器準備集合罪は成立し続け、その後の暴行・傷害とは併合罪になります
最決昭和45年12月3日は、凶器準備集合罪は個人の生命、身体又は財産だけでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであるから、集合の状態が継続する限り、同罪は継続して成立しているとしました。したがって、仲間が加害行為を開始した後に凶器を所持して現場に到着し、共同して害を加える目的でその場に居続けた者にも、凶器準備集合罪が成立します。目的とした加害行為に進んだ場合、凶器準備集合罪は暴行罪や傷害罪に吸収されず、両罪は併合罪になります(最決昭和48年2月8日)。凶器準備集合罪は社会の平穏も守る罪であり、個人の身体を守る暴行罪・傷害罪とは守る利益が異なるうえ、集合が加害行為の手段として通常用いられる関係にあるともいえないからです。日本刀数本を準備して集合し、その直後に相手の顔面を殴打した場合には、凶器準備集合罪と暴行罪が成立し、併合罪になります。鉄パイプを準備して集合し、その後に鉄パイプで殴打して傷害を負わせた場合も、凶器準備集合罪と傷害罪は牽連犯ではなく併合罪になります。
刑法 第206条(現場助勢)
前二条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法 第208条の2第1項二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
刑法 第208条の2第2項前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、三年以下の拘禁刑に処する。
試験ではこう問われる
- 現場助勢罪は傷害罪・傷害致死罪が行われた場合にだけ成立する。当事者の行為が暴行罪にとどまるときは成立しない
- 現場で精神的に鼓舞する行為が傷害罪の幇助に当たる場合、現場助勢罪は成立せず、傷害罪の幇助犯が成立する(大判昭和2年3月28日)
- 凶器準備集合罪は、財産に対し共同して害を加える目的でも成立する
- 長さ1メートル前後の角棒は凶器に当たる。エンジンを切って駐車させたダンプカーは凶器に当たらない(最判昭和47年3月14日)
- 集合の状態が続く限り成立し続けるので、加害行為の開始後に加わった者にも成立する(最決昭和45年12月3日)
- 凶器準備集合罪と、その後の暴行罪・傷害罪は併合罪になる(最決昭和48年2月8日)

