処断刑の形成(加重減軽の順序・法律上の減軽・酌量減軽・累犯)しょだんけいのけいせい
処断刑とは、法定刑に法律上の加重・減軽と酌量減軽を加えて得られる刑の範囲で、裁判所はこの範囲内で言い渡す刑を決めます。同時に刑を加重し、又は減軽するときは、再犯加重、法律上の減軽、併合罪の加重、酌量減軽の順序によります(刑法72条)。
強盗致傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の拘禁刑」です。けれども、実際の裁判では拘禁刑3年に執行猶予が付くこともあります。条文に書かれた刑(法定刑)がそのまま使われるのではなく、未遂や従犯、情状などの事情に応じて、決まった順序と計算方法で刑の幅を動かすからです。動かした後の幅が処断刑で、裁判所はその中から言い渡す刑(宣告刑)を決めます。計算方法を条文で固定しているのは、裁判所ごとに刑の幅がばらつかないようにするためです。

法定刑から刑の種類を選び、加重減軽をして処断刑を作ります
刑を決める手順は、法定刑、処断刑、宣告刑の3段階です。法定刑に2個以上の刑名があるときは、まず適用する刑を定めて、その刑を減軽します(69条)。強盗致傷罪であれば、無期拘禁刑か有期拘禁刑かを先に選びます。そのうえで、同時に刑を加重し、又は減軽するときは、再犯加重、法律上の減軽、併合罪の加重、酌量減軽の順序によります(72条)。法律上の減軽は、心神耗弱や従犯のように法律が定める事由による減軽で、酌量減軽は、犯罪の情状に酌量すべきものがあるときに裁判所が行う減軽です(66条)。
- 1 再犯加重長期を2倍以下にする(57条)
- 2 法律上の減軽長期と短期を2分の1にする(68条3号)
- 3 併合罪の加重最も重い罪の長期の1.5倍を長期とする(47条)
- 4 酌量減軽長期と短期を2分の1にする(71条・68条)
有期拘禁刑を減軽するときは、長期と短期の両方を2分の1にします
減軽の方法は68条が定めています。有期拘禁刑を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減じます。減軽の結果、短期が1月未満になってもかまいません(14条2項)。窃盗の正犯を幇助した者の処断刑を、1月以上5年以下とするのは誤りです。窃盗罪の拘禁刑は1月以上10年以下で、従犯の刑は正犯の刑を減軽するので(63条)、処断刑は15日以上5年以下になります。短期も2分の1になるので、1月以上のままにはなりません。強盗致傷罪で有期拘禁刑を選択して酌量減軽した場合、処断刑は3年以上10年以下の拘禁刑となります。強盗致傷罪の有期刑は6年以上20年以下なので、酌量減軽をすると3年以上10年以下になります。
- 死刑無期又は10年以上の拘禁刑にする
- 無期拘禁刑7年以上の有期拘禁刑にする
- 有期拘禁刑長期と短期を2分の1にする
- 罰金多額と寡額を2分の1にする
- 拘留長期を2分の1にする
- 科料多額を2分の1にする

法律上の減軽は事由がいくつあっても1回ですが、酌量減軽は重ねてすることができます
68条は「法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるとき」の方法を定めています。心神耗弱と従犯が重なっても、法律上の減軽は1回だけです。これに対し、酌量減軽は、法律上刑を加重し、又は減軽する場合であってもすることができます(67条)。法律を知らなかったことによる減軽(38条3項ただし書)は法律上の減軽なので、そのうえに酌量減軽を重ねることができます。酌量減軽は執行猶予の可否にも影響します。前科のない者が強盗致傷罪で起訴された場合、酌量減軽をする事由があれば、拘禁刑3年、5年間執行猶予(保護観察なし)とすることができます。強盗致傷罪の短期は6年ですが、酌量減軽で3年まで下がるので、3年以下の拘禁刑の言渡しを受けたときという全部の執行猶予の要件を満たすことができます。
心神耗弱・従犯は必ず減軽し、未遂・自首・法律の不知は減軽できるにとどまります
法律上の減軽事由は、必ず減軽するもの(必要的減軽)と、減軽できるにとどまるもの(任意的減軽)に分かれ、さらに免除まで認められるかが条文ごとに違います。心神耗弱者の行為は「その刑を減軽する」(39条2項)ので、必要的減軽です。心神耗弱には、免除の定めもありません。中止犯は「その刑を減軽し、又は免除する」(43条ただし書)ので必要的です。過剰防衛と過剰避難は、情状により減軽し、又は免除することができます。法律を知らなかった場合は、情状により減軽することができるだけです。免除はできません。耳が聞こえない者の行為について刑を減軽・免除する規定は削除されていて、現在はありません。
- 必ず減軽する心神耗弱(39条2項)、従犯(63条)
- 必ず減軽又は免除する中止犯(43条ただし書)
- 減軽することができる未遂(43条本文)、自首・首服(42条)、法律を知らなかった場合(38条3項ただし書)、酌量減軽(66条)
- 減軽又は免除することができる過剰防衛(36条2項)、過剰避難(37条1項ただし書)
再犯の刑は長期の2倍以下になり、30年まで上げることができます
拘禁刑に処せられた者が、その執行を終わった日又は執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期拘禁刑に処するときは、再犯になります(56条1項)。再犯の刑は、その罪について定めた拘禁刑の長期の2倍以下です(57条)。長期に2分の1を加えるのは併合罪の加重であり、再犯は2倍以下です。有期拘禁刑を加重する場合は30年まで上げることができるので(14条2項)、上限は20年ではなく30年です。執行猶予の期間中に罪を犯した者は、刑の執行を終わっていないので再犯には当たりません。三犯以上の者も再犯の例によります(59条)。
刑法 第72条(加重減軽の順序)
同時に刑を加重し、又は減軽するときは、次の順序による。
一 再犯加重
二 法律上の減軽
三 併合罪の加重
四 酌量減軽
刑法 第67条(法律上の加減と酌量減軽)
法律上刑を加重し、又は減軽する場合であっても、酌量減軽をすることができる。
刑法 第57条(再犯加重)
再犯の刑は、その罪について定めた拘禁刑の長期の二倍以下とする。
試験ではこう問われる
- 加重減軽は、再犯加重、法律上の減軽、併合罪の加重、酌量減軽の順序による(72条)
- 有期拘禁刑を減軽するときは、長期と短期の両方を2分の1にする(68条3号)
- 法律上の減軽は事由がいくつあっても1回だが、酌量減軽は法律上の加重減軽に重ねてすることができる(67条)
- 心神耗弱・従犯は必要的減軽、中止犯は必要的減免、未遂・自首・法律の不知は任意的減軽、過剰防衛・過剰避難は任意的減免である
- 再犯の刑は長期の2倍以下で、30年まで上げることができる(57条、14条2項)

