幇助犯(間接幇助)ほうじょはん
幇助犯とは、正犯を幇助した者、すなわち実行行為以外の方法で正犯の実行を容易にした者をいい、条文では従犯と呼ばれます。従犯の刑は、正犯の刑を必ず減軽します。
空き巣に入るつもりの知人に頼まれてドライバーを貸した人は、自分では他人の家に入っていません。それでも、道具を貸したことで知人の犯行はやりやすくなりました。刑法は、このように正犯の実行を手助けした者を従犯として処罰します。ただし、犯罪を自分のものとして実現した正犯と比べれば役割は小さいので、従犯の刑は正犯の刑より必ず軽くなります。

幇助犯は、正犯の実行を容易にしたときに成立し、刑は必ず減軽されます
62条1項は「正犯を幇助した者は、従犯とする」と定め、63条は「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」と定めます。減軽は裁判所の裁量ではなく、必ず行われます。有期拘禁刑を減軽するときは長期と短期をそれぞれ2分の1にし(68条3号)、減軽する場合には1月未満に下げることができます(14条2項)。窃盗罪の拘禁刑は1月以上10年以下ですから、窃盗の従犯の処断刑は15日以上5年以下の拘禁刑になります。窃盗の従犯の処断刑を1月以上5年以下とするのは誤りです。短期も2分の1になる点が落ちています。条文上の要件と効果は、次のとおりです。
- 幇助行為実行行為以外の行為で、正犯の実行を容易にすることです。道具や資金の提供のほか、励ましなどの方法でもかまいません
- 正犯の実行正犯が実行に出たことです。正犯の実行が終わった後の手助けは幇助になりません
- 因果性幇助行為が正犯の実行を物理的又は心理的に容易にしたことです
- 刑正犯の刑を減軽します(63条)。必要的な減軽です
- 従犯の教唆従犯を教唆した者には、従犯の刑を科します(62条2項)
- 処罰の制限拘留又は科料のみに処すべき罪の従犯は、特別の規定がなければ罰しません(64条)
幇助の方法に制限はなく、了解を与えて決意を強めることも幇助になります
判例は、従犯を、他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易にするものと捉えています。凶器や道具を渡すような物理的な方法に限られず、正犯の決意を強める心理的な方法も幇助になります。「不作為により正犯の実行行為を容易にさせた場合には、幇助犯は成立しない」という肢(R5 問25 4)は誤りです。最決平成25年4月15日は、高度に酩酊した後輩から同乗させて走行することの了解を求められた先輩二人が、了解を与え、運転を制止せずに同乗して黙認し続けた事案で、了解とこれに続く黙認が後輩の運転の意思をより強固なものにして犯行を容易にしたとして、危険運転致死傷罪の幇助犯の成立を認めました。二人以上の者が共同して幇助行為をした場合には、全員に幇助犯が成立します。共同して教唆・幇助行為に及んだ者には、教唆犯・従犯の共同正犯が成立し得ます。
正犯を間接に幇助した者も、幇助犯として処罰されます
教唆については、教唆者を教唆した者を処罰する61条2項があります。幇助にはこれに当たる規定がないため、従犯を幇助した者を処罰できるかが争われます。最決昭和44年7月17日は、知人又はその得意先が不特定多数の者に観覧させるであろうことを知りながらわいせつな映画フィルムを知人に貸し、知人がさらに得意先に貸して、得意先が映写した事案で、正犯の犯行を間接に幇助したものとして従犯の成立を認めました。間接幇助を処罰する明文の規定がないことを理由に、幇助犯の成立が否定されることはありません。道具を借りた者がさらに友人に貸し、友人が窃盗をした事例で、最初に貸した者に従犯を認める論拠を考えます。「幇助は正犯を容易にすることであるという定義からすると,幇助行為が直接的になされたか,間接的になされたかは必ずしも問われない」ことは、成立を肯定する論拠になります。従犯にも独立した犯罪性が認められること、従犯も修正された構成要件においては正犯に当たると考えられること、教唆犯に対する幇助行為が従犯として処罰されることも、肯定する論拠になります。これに対し、「従犯の幇助には,教唆者を教唆した者については正犯の刑を科すとする刑法第61条第2項のような規定がない」ことは、成立を否定する側の論拠であり、肯定する論拠にはなりません。

幇助は、正犯の実行が終わる前にされる必要があります
幇助は正犯の実行を容易にすることですから、正犯の犯罪が終わった後に手を貸しても、その犯罪の幇助にはなりません。強盗をした者が奪った現金をポケットにしまって現場を離れようとしていたところへ来て、警察官をやり過ごす手助けをした者は、強盗が既遂に達した後に関与しています。この者に強盗罪の従犯は成立せず、犯人をかくまった点について犯人隠避罪が問題になるにとどまります。犯罪の後に犯人や盗品に関わる行為は、犯人蔵匿等罪や盗品等に関する罪として、独立に処罰されます。
幇助犯の罪の個数は正犯の罪の個数に従い、1個の行為かどうかは幇助行為で判断します
最決昭和57年2月17日は、幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するから、成立する幇助罪の個数は正犯の罪の個数に従って決まるとしました。そのうえで、成立した数個の幇助罪が54条1項の「1個の行為」によるものかどうかは、幇助行為それ自体を基準に判断するとしました。正犯の二つの罪が併合罪であっても、幇助行為が1個であれば、二つの幇助罪は観念的競合になります。ナイフ1本を手渡したところ正犯が二人を殺害した場合、2個の殺人幇助罪は併合罪ではなく観念的競合になります。ドライバー1本を貸したところ正犯が二軒の住居に侵入した場合も、2個の住居侵入罪の従犯が成立し、両罪は観念的競合となります。
刑法 第62条第1項正犯を幇助した者は、従犯とする。
刑法 第62条第2項従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
刑法 第63条(従犯減軽)
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
試験ではこう問われる
- 従犯の刑は正犯の刑を減軽し、減軽は必要的である(63条)
- 幇助の方法に制限はなく、不作為で正犯の実行行為を容易にした場合も幇助犯が成立し得る(R5 問25 4 ×)
- 正犯が幇助者の行為を認識していなくても、実行を容易にすれば幇助犯が成立する(R5 問25 5 ○)
- 了解を与えて正犯の決意を強めることも幇助になる(最決平成25年4月15日)
- 正犯を間接に幇助した者にも、幇助犯が成立する(最決昭和44年7月17日、H26 問24 オ ×・出題当時)
- 幇助罪の個数は正犯の罪の個数に従い、1個の行為かどうかは幇助行為それ自体で判断する(最決昭和57年2月17日)

